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僕たちの約束  作者: 翔香
第2章 不気味なツアー
29/55

第29話 休憩

今回は、いつもより長いです。

 まずは、さっき高峰と会った場所に行った。



――確か、あそこに旅館のフロアの地図があったような気がするのだが。

 行ってみると、智が記憶していた通り地図があった。



「食堂、食堂・・・」



 呟きながら、指で地図を辿っていった。



「あった」



 食堂は、1階の受付の近くにあった。ここからそう遠くはなかった。



「よし、行くぞ」



 智は2人に声をかけた。

 3人は急いで食堂まで向かった。











 食堂は、意外とシンプルな造りだった。長机が6つあり、椅子が1つの机に5つ並べてある。壁には時計が掛かっておるり、前にはホワイトボートがあるだけ。机には、もう夕食が並べられていた。

 夕食は、白ごはん、味噌汁、サラダ、ハンバーグの4種類だ。

 時計を見ると、ちょうど6時になっており、全員集まっていた。皆、高峰を恐れているのだろう。

 3人は入り口に近い席に静かに座った。



「皆さん揃いましたね。では、今から夕食の時間にします。それから、この後の予定をお話しします。夕食は6時30分に食べてくださいね」



 高峰はそれだけ言い残して奥へ消えていった。



「じゃあ、食べるか」



 智は2人の顔を見ながら言った。



「また、睡眠薬とか入ってるんじゃねーの?」



 疾登が小さい声で囁いた。



「もう、ここまで来たらいろんなこと疑うようになっちゃうよ・・・」



 花輪もボソッと呟いた。智はそんな2人を明るくさせようと、笑顔を見せて言った。



「まあ、今はそんなこと考えるな。ほら、食べよ」



 智は先にいただきます、と両手を合わせて箸を持った。



「そうだな。考えすぎだよな。いただきます」



「そうよね。ご飯食べる時くらい、何も考えない方がいいよね。いただきます」



 2人はそう言うが、まだ戸惑っている様子だった。









「美味しかったね。味もおかしくなかったし」



「そうだな。この旅館、ご飯だけはちゃんとしてるな」



 花輪と疾登は小声で言った。



「皆さん、味わって食べていただけましたか?誰かさんがご飯だけはちゃんとしてるな、と言ったのが聞こえましたが、まあ、それはさておき、皆さん。今からこの後の予定について話します」



「やっべ。聞こえてたのかよ」



 疾登は小さく呟いた。



「大丈夫だ。何もされないよ」



 智は小声で言った。



「では、この後7時から女性限定でゲームをしたいと思います」



 智たちの予感は的中していた。やはりこのままでは終わらなかった。危険でなければそれでいいのだが。しかも、女性限定というのが心配だ。



「まあ、少し工夫を加えたビンゴです。このゲームにも、今までと同様に、敗者には罰ゲームがあります」



「罰ゲーム・・・」



 智は小さな声で復唱した。



「ルールの詳しい事は後で説明します。では、7時に旅館の玄関に集まってください。それまでは、部屋で待機しておいてください」



 高峰はそれだけ言い残してそそくさと食堂を出て行った。

 食堂の扉が閉まると、緊張の糸がプツリと切れ、溜まっていた息をドッと吐いた。



「やっぱり、ゲームか・・・」



 疾登は頭を抱えて言った。



「私、もうこんなのしたくないよ。誰かが傷つくところなんて見たくない。私も罰を受けるかもしれ――」



「もう、それ以上考えるんじゃない」



 智はそれ以上聞きたくなかった。智は疾登と同じように、頭を抱えて考え込んだ。

――これから行うゲームは女性限定と言っていた。ということは、俺と疾登は花輪を守ることが出来なくなるという事だ。花輪が助かることを祈るしかないのか。これでは花輪が危ない。



「どうすればいいんだ・・・」



 智は大きなため息を吐いた。



「兄貴、部屋戻るぞ」



 声がした方を見ると、疾登と花輪が食堂から出ていた。食堂には、もう智しか残っていなかった。



「ごめん。考え事してたんだ」



 智は笑ってごまかした。



「お兄、大丈夫?」



 花輪が智の顔を覗きこんだ。



「花輪の事が心配なんだよ」



「え・・・」



 智は視線を落として言った。



「ほら、次のゲーム、女性限定って言ってたろ?だから、花輪が1人になるから、どうすればいいかなって考えてた。お腹の中の赤ちゃんだって・・・」



 花輪は一拍置いて、ニコッと笑った。



「私は大丈夫だよ。心配しなくていいよ」



「俺も心配だよ。女の子を放っておくことはできないよな」



 疾登は智の肩に手を乗せた。



「そうだよ。でも、どうすれば花輪を守れるのか分からない・・・」



「ごめんね。お兄、疾兄」



「いいって」



「いいよ、いいよ」



 そうは言ったものの、良いアイデアが浮かばない。



「まあ、とりあえず部屋に戻ろう」



 疾登が、先に歩を進めた。

 智と花輪は疾登の後について行った。











「どうする?」



 部屋に入って、疾登が1番最初に声を出した。



「うーん。妨害とかしたら、また何かやられそうだよな・・・」



 智は頭を抱えた。



「いいよ。私は大丈夫だって。お兄と疾兄は見守ってくれるだけで十分だから」



「でもな」



 続きを言おうとしたが、花輪が遮った。



「もう、この話はやめよう、ね。何か楽しい事しようよ」



 花輪は優しく微笑んだ。



「本当に、大丈夫なのか?」



 疾登が再確認した。



「うん」



 花輪は頷いた。



 智は、これ以上言っても、いつまでも言い争いが続くだけだと思った。



「そっか、ならいいんだけど・・・」



「それよりさ、何かゲームしない?疾兄、何か持ってきてない?」



「え、ああ。えーっと」



 疾登は自分のバックを探り始めた。



「あった!トランプ」



「トランプいいね!」



 花輪は両手を叩いた。

 智は、次のゲームに備えてゆっくりしておきたいのだが、仕方なく引き受けた。



「ババ抜きする?」



 疾登がトランプを切りながら言った。



「私は賛成だけど、お兄は?」



「何でもいいよ」



「じゃあ、ババ抜きに決定な」



 そこで、疾登はトランプを切るのを止め、3つに分けて配り始めた。



 疾登が配り終えるまで、ボーっとしていると、また、頭が殴られたような強い衝撃が走った。



「いっ」



 智は、あまりの痛さに声を洩らした。智の異変に気が付いたのか、疾登と花輪が心配して、声をかけてくれた。



「お兄、どうしたの?」



「兄貴、大丈夫か?」



 その時、智の脳裏に、ある残像が映った。それは、血の付いた包丁だった。ほんの一瞬だったが、はっきり映し出された。まるで、現実であったかのように・・・



――今のは、何だ?

 智の頭に疑問が浮かんだ。



――これは何かの前兆か?

そう思うと、全身に鳥肌が立った。



「兄貴?」



「お兄?」



 智は、2人に残像の事を話そうと思ったが、今は、自分の内に秘めておくことにした。



「いや、何でもないよ。疲れてるのかな」



 智は笑って誤魔化した。2人は、まだ何か言いたそうな顔をしていたが、それ以上は何も言わなかった。気を使ってくれたのだろう。



 疾登がトランプを配り終え、3人それぞれ同じ数字のトランプを抜き出した。智は14枚、疾登は10枚、花輪は8枚となった。ちなみに、今の所智は、ババを持っていない。



「俺、何かトランプの数多くね?」



「俺の方が多いわ!」



 智は疾登に裏に向けたトランプを見せつけた。



「本当だ。なんか、ごめん。というか、花輪少ないな」



 疾登は話題を変えた。



「うん。びっくりだよ」



 花輪は嬉しそうにしている。



「ほら、始めるぞ」



 時計回りで、智、花輪、疾登の順番になった。

 最初に、智は花輪が持っているトランプの山から1枚取った。取ったカードは、クローバーの8だった。智は、ダイヤの8を持っていたので、花輪からとったカードと一緒にすてた。



「じゃあ、取るね」



 花輪は疾登のトランプを1枚取った。しかし、揃わなかったのか、残念そうな顔をして、疾登のカードを花輪の山に追加した。



「俺、取るよ」



 疾登は、智のカードを1枚取った。揃ったのか、疾登のトランプの山から1枚取り出して、雑に放った。

 それから順調に進み、智が2枚、疾登が3枚、花輪が1枚となった。今も、智はババを持っていない。



「じゃあ、花輪引くぞ」



 智は、花輪のトランプを引こうとした時、智は、はっとなった。



「花輪、俺が取ったら終わるな」



「そうだよ~」



 花輪はニコニコしながら言った。智はいつかは引かなくてはいけないんだ、と考え、花輪の最後の1枚を取った。



「やった~!終わった!」



 花輪が終わったという事は、ババは疾登が持っているという事になる。



「よし、じゃあ、兄貴取るよ」



 疾登は、智のハートの6を取って疾登が持っていたクローバーの6と一緒に捨てた。



「じゃあ、このどっちかがババか・・・」



 智は疾登のトランプをじっと見構えて、勘で智から見て左側のトランプを取った。



「やった!俺終了!」



 智が取ったトランプはババではなく、ダイヤの8で、智が最後に持っていたスペードの8で揃った。



「うーわ。兄貴に負けるって相当悔しいな」



「どういう意味だよ」



 智は疾登の頬を突っついて、少し強めに言った。



「ごめん、ごめん」



 疾登は軽く謝った。



「あ!もう、6時50分だよ。早めに行っておいた方がいいんじゃない?」



 花輪が少し緊張気味に言った。



「そうだな。そろそろ行こうか」



「分かった。あーもう、行きたくねーな」



 疾登が顔を手で覆った。



「皆一緒だよ。みんな必死にあがいてる」



 智はため息交じりに言った。



「そっか・・・そうだよな」



 疾登は俯いた。

「・・・よし、行こう!ここで弱音を吐いてても何も変わらないんだから」



 智は、2人を安心させようと、あえてテンションを高くして言った。



「そうだね」



「やるしかないな」



 3人は軽く心の準備をして部屋を出た。

智の頭痛の原因とは!?

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