第27話 心配
この小説は「僕たちの約束」ですよ!!
間違えた、と思って戻らないでください。
急に背景の色を変えてごめんなさい(汗)
友達がやっているのを見て楽しそうだなと思いまして・・・
智は病院を出て、すぐ傍にあったベンチに腰かけた。
「はぁ」
智が大きなため息を吐いた、その時。
「お兄。ここにいたの」
「兄貴。急に逃げ出すからびっくりしたよ」
顔を上げると、疾登と花輪の姿があった。
「あ、ごめんな」
智は両手を合わせて謝った。
「足、大丈夫なの?」
花輪が心配そうに聞いた。
「ああ。大丈夫だよ」
「本当?」
花輪は心配そうな顔をしている。
智は頷いた。
「そっか。良かった」
「それより、タクシーひろわないと」
「本当に、大丈夫なのか?無理してない?」
疾登も心配してくれた。
「うん」
智は笑顔で返事をした。タクシーを呼ぼうと立ち上がろうとしたが、疾登がそれを止めた。
「兄貴は座ってていいから。俺が呼んでくるよ。花輪も待ってて」
「珍しいな。疾登がそんなに優しくしてくれるなんて」
「そうだよ。びっくりしちゃった」
疾登は少し照れながら言った。
「何だよ珍しいって。その1言余計だよ。じゃあ、呼んでくるな」
疾登は走って行った。
花輪は智の横に腰かけて言った。
「私、戻りたくない・・・」
智は花輪の頭を撫でた。
「大丈夫だよ、花輪。心配するな」
「でも・・・」
「悪い方に持っていくな」
智は少し強調して言った。
「・・・分かった。私、頑張るね」
智は、花輪を安心させるように優しく笑った。
そこで、疾登が息を切らして帰ってきた。
「タクシーつかまったよ」
疾登は膝に手を当てて、肩を上下に大きく揺らしている。
「ありがとう、疾登。お疲れ様」
「ありがとう。疾兄」
疾登は頷いた。
「じゃあお兄、行こうか。肩貸すよ」
花輪は自分の肩をポンポンと叩いて合図した。
「ごめんな。ありがとう」
疾登も呼吸が落ち着いたのか、黙って智に肩を貸した。
3人は少し早めに歩いて、タクシーまで向かった。
「なあ、兄貴」
タクシーに乗ってから、1番最初に疾登が口を開いた。
「ん?どうした」
疾登は運転手に聞かれないように、小さな声で言った。
「もうすぐ5時だけど、旅館に帰ったら、また何かするのかな・・・」
智は俯いて言った。
「分からない。でも、このまま何もしないで終わるってことはないと思う」
疾登はため息を吐いた。
「あー。もう、嫌だよ俺・・・」
「ごめんな。俺がこのツアー選んでなかったら、こんな事にはならなかったのに・・・」
疾登は否定した。
「違うよ。兄貴のせいじゃないよ」
「そうだよ。お兄のせいじゃない。でも、このツアーのホームページ見たときに、違和感感じなかったの?」
智は、ツアーのホームページを思い出しながら言った。
「うん。なかったけど、予約している人が少なかったからどうしたのかな、とは思ったけど」
「何だよ!何も書いてないって、詐欺じゃないか!」
「疾登、シー」
智はすぐに疾登の口を塞いだ。運転手に聞こえたらややこしい事になる。
「詐欺って、何かあったのです?」
案の定、運転手に聞こえてしまった。智は笑ってごまかした。
「違いますよ。もう、この弟思いついたこと何でも言ってしまう癖があるんですよ。アホですから。本当に、困った弟です」
そう言って、智は怪我をしていない方にの足で、疾登の足を少し強めに踏んだ。疾登は痛そうな顔をしていたが、無視した。
「そうですか。可愛い弟さんですね」
――何だ。意外と簡単に信用してくれた。
「いえ。そんなことは」
それからは、あまり会話をすることもなく10分程で旅館に着いた。