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僕たちの約束  作者: 翔香
第2章 不気味なツアー
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第26話 game2 カード探し(6)

「兄貴、もうすぐだよ」



 目の前には、最初に高峰に説明を受けた建物が見えた。



「ああ」



 智は返事するのにも精一杯だった。右足の血が一向に治まらないのだ。そのせいで、意識が朦朧としてきた。



 ふと頭を上げると、もう建物の入り口の前に立っていた。自動ドアをくぐって、最初に入った105の標識がある部屋の前に立った。



「あ、2人とも。これ・・・」



 花輪が指を指している方を見ると、デジタル式の時計が掛かっていた。



「兄貴!あと1分だよ!」



「分かってる。早く・・・開けてくれ」



「あ、ごめん」



 疾登はそう言って、思いっきり力を入れてドアを押したが、ビクともしない。



「あれ?おかしいな」



 何回も挑戦するが、結果は同じだった。



「あ、これ何だろう・・・」



 花輪が時計の下のモニターを指さした。それを見て、智はある考えが浮かんだ。



「ここに・・・これを当てるんじゃないか?」



 智は右足を引きずりながら、モニターに近ずいて、最初に受付の人にもらった証明書を通した。すると、「ピピッ」という音が鳴って、疾登と花輪の名前がモニターに映し出された。



「ほら、2人も」



 そう言って、智は壁にもたれかかった。



「分かった」



 疾登と花輪は智と同じように、証明書をモニターに通した。すると、扉が自動的に開いた。

疾登と花輪は急いで、智の肩を支えて部屋の中に入った。それと同時に、今度は「ピー」という頭を刺激するような音が、部屋中に響き渡った。



「ギリギリでしたね。仲良し兄弟3人組さん」



 智が顔を上げると、不気味な笑みを見せて立っている、高峰がいた。



「あら?どうしたのですか。その足は」



「うるせぇ」



「何ですか?その口のきき方は」

 高峰は、少し機嫌が悪くなったようだ。



「ちょっと、今はゆっくりさせてあげてください。お願いします」



 花輪が高峰に頭を下げて言った。



「まあ、いいでしょう。しかし、出血が酷いですねぇ。このままじゃ危険ですよ」



 高峰は馬鹿にしたように言った。

 高峰の言う通り、今でも血が止まらない。視界がチカチカしてきた。



「このままじゃ兄貴が・・・病院に連れて行くことは出来ないでしょうか」



 疾登が懇願する。

 高峰は少し間を空けてから言った。



「しょうがないですねぇ。いいですよ。でも、治療したらすぐに戻ってくるように、と病院に言っておきますからね。勘違いしないでくださいね。あくまで、あなたのためではなく、私が楽しめなくなるからですよ」



 智はその言葉を聞いて安心した、と同時に、智の気が抜け、その場に倒れた。











 目を開けると、病院の風景が広がっていた。



「お!兄貴。どう?具合は」



 1番最初に、疾登が声をかけてくれた。智は、怪我した方の足を動かして言った。



「もう大丈夫」



「そっか。もー兄貴格好良すぎるよ。花輪をかばって、自分が撃たれるなんて」



「本当だよ、お兄。本当、恰好良かったよ」



 その花輪の言葉に、智は少し頬を赤めた。



「だから言ったろ?花輪は俺が守るって」



「あれ?俺は?俺も花輪のこと守ったんだけどな・・・」



 疾登が会話に割り込んできた。

 智は記憶を巻き戻して、ああ、と呟いた。



「あれね。ロボットの銃が花輪に向いた時ね」



 疾登はそうそう、と嬉しそうに言う。



「あれ恰好良かっただろ?な、花輪」



 花輪は疾登をいじりたいのか、わざとらしく首を傾けて言った。



「え~そうだっけぇ」



「マジか・・・憶えてないんだ」



 疾登は予想していたより、大きなショックを受けていた。



「もう、疾兄。嘘だよ。ちゃんと憶えてるよ。疾兄も恰好良かったよ」



 花輪は優しく疾登の肩に手を置いた。



「何だ。良かった!」



「疾登は単純だな」



 智は疾登の頭をポンポンと叩いた。



「でも、2人とも無理しすぎないようにしてね」



 智と疾登は同時に分かってる、と言った。 



 その時、病室の扉が開いた。見ると、そこには20代後半くらいの看護婦が入ってきた。小柄で、髪型は茶色のショートヘアーだ。



「野々神さん。旅行の高峰という方から先ほど連絡がありまして、すぐに帰って来いと・・・」



 そうだ。すっかり忘れていた。

 もう、あの旅館には戻りたくない。だが、約束を守らないとまた何をされるか分からない。



「分かりました。すぐに行きます」



 智が立とうとした時、



「まだ駄目です。足が完全に治ってからじゃないと危険です」



「分かってます。でも、約束したんです」



「しかし・・・」



 これだけ言っても、看護婦は戸惑っている様子だった。



「お願いします」



 智は深々と頭を下げた。疾登と花輪も頭を下げた。



「駄目です。何度も言いますが、安静にしていないと危険なんです」



 看護婦はきっぱりと言った。智は、これ以上言い合っていたら朝まで続くと思い、まだ足は痛むが、逃げるようにして病室を出て行った。



「お兄!何処行くの!」



「兄貴!」



 疾登と花輪は智の後を追った。看護婦も途中まで追いかけてきていたが、体力が持たなかったのか、しばらくして姿が見えなくなった。



――疾登、花輪。ごめん。こうするしか、無いんだ。



 智はそのまま病院の外へ出た。

 game2カード探し編、終了。

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