第25話 game2 カード探し(5)
あとがきにちょっとお知らせがあります。
まあ、大したことではありませんが(笑)
残り10分。智と疾登は、花輪に気を遣いながら、なるべく急いで走っていた。
「もう、本当にカードあるのかよ・・・」
疾登が息を切らしながら聞いてきた。
「知らねーよ。あるんじゃないの」
智は適当に返事しておいた。その時、花輪が突然立ち止まって、前方を指さして大きな声を上げた。
「あ!お兄、疾兄!あれ、カードじゃない?」
智と疾登も立ち止まって、花輪が指さしている方を見ると、あの不気味な黒色がプリントされているカードが草に落ちていた。
「お!本当だ!よく見つけたな花輪」
智は花輪の肩をポンと叩いた。
「まあね」
「花輪も、結構役に立つんだな」
「何ですって?」
――もう、何で疾登は、いつもこう1言多いのだろうか。
「ご、ごめんって。つい・・・」
「ついって何よ!」
2人が争っている間に、智はカードを拾いに行った。
カードの裏を見ると、『後』とあった。6枚目から探してきたカードをポケットから出して、足元に並べてみた。
「おい!もういい加減、仲直りしたらどうだ」
智はまだ言い合いをしている2人に怒鳴った。
「分かったよ」
疾登はため息交じりに返事をして、花輪に謝った。
「ごめん、花輪」
「いいよ。もう、言い合いするのも疲れるしね」
そう言って、花輪は疾登に微笑んだ。
「ちょっと、2人ともこっちに来て」
智はタイミングを見て、2人を呼んだ。
2人は智の元に来て、智の足元にあるカードを見た。
「えーっと、『向』、『ろ』、『を』、『け』、『後』・・・」
疾登が呟いたとき、花輪があっ、と声を上げた。
「どうした?」
智が聞くと、花輪はカードを並び替え始めた。
智が、並び終わったカードの暗号を読んだ。
「後ろを向け・・・」
「え、何で?」
疾登が後ろを向こうとしたが、智がそれを阻止した。
「ちょっと待て疾登。3人でいっせーので後ろ向こう。何か、嫌な予感がするんだ」
疾登は小さく頷いた。3人はお互いの目を見合った。
智は大きく息を吸い込み、掛け声を出した。
「せーの!」
3人が同時に後ろを向くと、そこには最初に見た、黒いロボットが立っていた。
「きゃっ!」
花輪が小さく悲鳴を上げた。智は大丈夫だ、と言って、花輪を優しく抱きしめた。
すると、疾登が突然、震えだした。
「どうした、疾登」
智が聞くと、疾登はゆっくりロボットの腕の部分を指さした。
「あ、あれ・・・」
指している方を見ると、ロボットの腕には拳銃が握られていた。
「嘘だろ・・・」
智が声を漏らしたとき、突然銃が発砲された。その瞬間、智の右足の太股に激痛が走った。
「いってぇ・・・」
智は太股を押さえてしゃがみ込んだ。見ると、血がドクドクと流れ出ていた。
「お兄!」
「兄貴!大丈夫か!」
花輪が、すぐに持っていたハンカチを傷口に当てた。
「サトル、ハヤト、カリン、コレデオワリダ」
ロボットが喋った。低く、感情のこもっていない声だった。
ロボットがまた、銃を向けた。するとなぜか、智に向けたのではなく、花輪に銃が向けられた。智が花輪をかばおうとしたその時、いち早く疾登が花輪の前に立ちはだかった。疾登は目を瞑り、俯いた。
その時、遠くの方から発砲した音が聞こえた。それと同時に、ロボットが豪快に崩れ落ちた。その後、ロボットは完全に動かなくなった。
――どうなってるんだ・・・
智が疑問を抱いたとき、疾登が口を開いた。
「兄貴、あの人って・・・」
疾登がある場所から目を放さず言った。疾登の視線を辿っていくと、そこには拳銃を両手で持って構えている赤森の姿があった。彼は気が抜けたのか、その場に崩れ落ちた。
智はすぐに赤森の傍に行きたかったが、右足の痛みで立ち上がることができない。
「お兄、私の使って」
智が困っていることに気が付いたのか、花輪が肩を貸してくれた。
「ありがとう」
智は花輪に礼を言って、体を支えてもらった。疾登も、花輪の反対側に回って、智に肩を貸した。
赤森の元に辿りつくと、智は2人の肩に回している腕を退けて、足の痛みに堪えながら、赤森の目の高さまでしゃがんで声をかけた。
「赤森さん、大丈夫ですか?」
赤森はゆっくり顔を上げて言った。
「ああ、大丈夫だ」
智は良かった、と呟き、頭を下げながら言った。
「先ほどは、ありがとうございました」
赤森は首を振った。
「いいよ、そんなこと。実は俺、元警察官だったんだ」
だからか。あの銃の腕前は素人ではない、と感じていた。
「そうだったんですか。本当に、ありがとうございました」
智はもう1度頭を下げた。疾登と花輪も礼を言って、智と同様、頭を下げた。
「まあ、さっきの恩返しだと思って、ね」
智は微笑んだ。
「ところで、その銃は何処で手に入れたんですか?」
疾登が銃を指さして聞いた。
「ああ。これはたまたま小屋で見つけたんだ」
「そうだったんですか」
疾登は納得したように頷いた。
そこで智は、はっとなり、腕時計を見ると、もう5分を切っていた。
「もう、5分しかない。急ごう」
立てろうとしたが、足に激痛が走り、またしゃがみ込んだ。
「兄貴、ほら」
智を見て、疾登はすぐに肩を貸してくれた。花輪も声をかけてくれた。
「2人とも、ありがとう。赤森さんも一緒に行きましょう」
智が微笑んで言うと、赤森は片手を挙げて言った。
「あ、俺は同じグループの人待たせてるから。気使ってくれてありがとうございます」
「いえ」
智は小さく首を振った。
「じゃあ、また後で」
「はい」
赤森はニコッと笑って、走って森の奥に消えて行った。
赤森の背中をしばらく見送って、3人は急いで歩を進めた。
この前はGWだったので、更新スピードが速かったのですが、
これからは学校や部活がありますのでちょっと更新が遅くなってしまうかもしれません・・・。
でも、なるべく1週間は空かないように頑張りますよ(笑)