第2話 突然の出来事
「お兄!早く学校行こう!」
「うん。疾登、早くしろよー」
「ちょっと待って」
いつも疾登は朝が弱いので、支度が遅い。
「よし!準備できたぞ。智兄、花輪行くぞー!」
「お前が待たせたんだろ」
智はため息をついた。花輪も「そうだよ」とほっぺを膨らませる。
「ごめん、ごめん。そうだった」
三人はお父さんと、お母さんに「行ってきます」と言って家を出た。
この日から今まで平凡だった毎日が何者かによって不幸に変わることは知る由もなかった。
今日はたまたま三人の帰る時間が一緒だったので一緒に家まで帰った。学校での出来事を話しながら帰っていると家が見えてきた。だが、智の目に映った光景に、1度足を止めた。家の近くに近所の人がたくさん集まっていたのだ。人ごみをかき分けながら家の前に行くと、パトカーや報道陣がたくさんいた。三人は訳が分からず、その場に立ち行くしていると、
「この家の子かな?」
と刑事さんらしい人が話しかけてきた。智は「そうです」と答えた。
「ちょっと大事な話があるんだけど、お兄ちゃんだけ来てくれるかな?」
と真剣な顔で言われた。
「分かりました」
智は、疾登と花輪にちょっと待ってろ、と言った。
智は複雑な思いを抱えたまま、刑事さんに人目のつかないところに連れて行かれた。
「ちょっと、まだ小さい君には混乱してしまうかもしれないが・・・」
「どうしたんですか?」
刑事さんは少し間を置いて言った。
「実は、君のお父さんとお母さんが何者かによって殺されたんだ」
その言葉の意味が分からなかった。智は呆然と立ち尽くしていると、刑事さんは智の肩を揺すりながら言った。
「君のお父さんとお母さんは、もう居ないんだ。2度と、会えないんだ」
そこで、やっと状況を把握できた。途端に、何かがこみ上げる思いを感じた。
「そんな・・・嘘ですよね?刑事さん!嘘って・・・言ってくださいよ・・・」
智はその場に崩れ落ちた。それと同時に大粒の涙が零れ落ちた。
「君のお父さんとお母さんを殺した犯人は、まだ見つかってない。絶対に見つけてやるからな」
刑事さんは優しく話しかけてくれたが、智の頭の中は、お父さんとお母さんの顔が何度も浮かんでは消えて行った。
お父さんととお母さんを返せ!心の中で何度も叫んだ。だが、何度叫んでも戻ってくるはずない。
そう考えるとまた涙が溢れ出てきた。
「君。名前は何て言うんだ?」
「・・・野々神・・・智です」
「そうか。俺は佐名木浩輔だ。それで智くん、智くんの弟と妹に何て言おうか。まだ小さいしお父さんとお母さんが殺されたなんて言うのは残酷すぎる」
智は俯いたまま、何も言わなかった。
「とりあえず、今日は病気で倒れたと言っておこう。それからタイミングを見て、本当のことを話すんだ。出来るかい?」
本当に病気で倒れたなどと嘘をついてもいいのだろうか、と迷ったが、突然疾登と花輪に、お父さんとお母さんを殺されたと言われると混乱するだろうと思い、その考えを了承した。
「頼んだぞ。智くん」
そう言って佐名木さんはどこかへ行ってしまった。お父さんとお母さんを殺した人間が憎かった。
智は思いっきり地面を睨みつけてから、疾登と花輪のいるところに戻った。
なんか、暗くなっちゃいました・・・