第19話 昼食
ちょっと、残酷な描写が書かれています。
気を付けてください。(前半を少し編集しました)
智が倒れた後・・・
「おい!兄貴に何すんだよ!!」
疾登が高峰に殴りかかったが、高峰は見事にかわした。
「甘いですね」
そう呟いた後、高峰は疾登に凄い勢いで顔面を殴った。疾登は、その場に倒れた。
花輪は、智の元を1度離れ、疾登に駆け寄った。
「疾兄!しっかりして!」
「あの、くそ女!」
疾登は小さく呟いた。
「何ですか?」
高峰は疾登に冷たい視線を向けた。
「そんな事より、英明を捜してください!」
彼を捜している彼女は、高峰の袖を引っ張った。
「何度も言わせるな。私は捜さない。あなたの責任でしょ?何故私が捜さなくてはいけないんですか?」
「だから、ツアーの責任者として、行方不明の旅行客を捜すのは当たり前でしょ?」
女性は、鋭い目で、少し言葉に力を込めて言った。
「鬱陶しいな!いい加減にしろ!」
高峰が怒鳴っても、女性はビクともしなかった。
「鬱陶しいとは何ですか!客を何だと思ってるんですか!!」
すると、高峰は衝撃的な行動を取った。上着の裏ポケットから、銃を取り出し、女性の心臓部分を撃った。女性は、ドサッと倒れ、ビクともしなくなった。女性の周りには、鮮明な血が残っていた。
周りから大きな悲鳴が上がった。
「全てお前が悪い」
疾登と花輪は、口を開けたまま金縛りになっていた。
突然、高峰がポケットから携帯を取り出し、誰かとの連絡を始めた。
「屋敷の中にいる‘英明’という男を捜して殺せ。それと、外にいる死んだ女を運んでおけ」
それだけ言って、通話を切った。
そこで、疾登の金縛りが解け、口を開いた。
「殺せって、本当かよ・・・」
「そうです。私は本気です。では、皆さん、これから昼食の時間とします。先ほど言ったことは訂正します。旅館に戻って、昼食を食べてください。それと、あの‘英明’という男をかばって屋敷の中に入ったら、どうなるか分かってるでしょうねぇ」
高峰は不敵な笑みを浮かべて何処かへ行ってしまった。
「花輪、大丈夫か?」
疾登は、ずっと俯いたままの花輪に優しく声をかけた。
「・・・うん」
花輪は力無く頷いた。
「旅館、戻ろっか。俺、兄貴運ぶから」
疾登は、智を抱き上げ、花輪と一緒に旅館に戻った。
智が目を覚ますと、真っ白い天井が目に入った。
ここは・・・何処だ?
そうか。高峰に殴られてそのまま意識を失ったんだ・・・
突然、扉が開いた。
「あ!お兄。大丈夫?」
花輪が優しく声をかけてくれた。
「俺は大丈夫だよ。ここは・・・」
「旅館の休憩室だよ」
「そっか。あれ、疾登は?」
花輪が智の隣のベットに視線を向けた。智も目を向けると、そこには疾登が顔に絆創膏を貼って眠っていた。
「疾登、何かあったのか?」
花輪に問うと、花輪はため息をつきながら言った。
「お兄が倒れた後、疾兄がブチぎれて、高峰に殴りかかったの。そうしたら、見事にかわされて、こんな事になっちゃった」
「そうだったのか。でも、あの高峰も頭狂ってんじゃねーのか?普通に旅行客に殴りかかってきたし」
「本当だよ。あのくそ女!!」
急に疾登が起き上がった。智と花輪はビックリして飛び上がった。
「なんだ、起きてたのか。傷、大丈夫か?」
「こんなの平気だよ。しっかし、女にしては力強かったな。誰かさんに似てる・・・あ!やっべ」
疾登は口を押さえながら、恐る恐る花輪を見た。智も花輪に視線を向けた。やはり、花輪の耳に届いていたのか、疾登に歩み寄って思いっきり疾登の鼻をつまみながら言った。
「私を、あんな高峰と一緒にしないでよねー」
「ごべん!ぼういばないがだ」
「こめん。もう言わないから、だって」
この前と同じように、智は疾登の言葉を通訳した。
「分かった。許してあげる」
花輪が手を放すと、疾登の鼻が赤くなっていた。智はおもしろくなってクスッと笑った。
「兄貴は笑うなっ!」
疾登が鼻をさすりながら言った。
「あ、ごめん、ごめん。つい」
花輪が保冷剤を包んだタオルを持ってきた。
「喧嘩の後は、仲直りしなくちゃね。ごめんね」
そう言って、ポンと疾登の膝の上にタオルを置いた。
「・・・俺こそ、ごめん。ありがとう」
疾登は鼻にタオルを当てた。
そこで、智は疑問に思ったことを2人に聞いた。
「あのさ、さっきの彼氏捜してた女の人は?」
2人は、俯いてしまった。
「どうしたんだ?」
恐る恐る聞くと、花輪が口を開いた。
「それが・・・彼氏を捜そうと屋敷に入っていったの。そうしたら、高峰に・・・」
花輪は、その先は言いたくない様子だった。代わりに疾登が答えた。
「高峰に・・・銃で撃たれた」
「え・・・」
智は言葉を失った。高峰が銃を持っていたなんて・・・ふと、智の脳裏に彼女が銃で撃たれている映像が浮かんだ。智は急いでそれをかき消した。
3人は、深いため息を吐いた。
その時、急にドアがノックされた。3人は高峰だと思い、智は花輪の前に立って後ずさった。
「失礼します。昼食を届けに参りました」
その声は、高峰の声ではなかった。3人は溜まっていた息をどっと吐いた。
「どうぞ」
智は扉を開けた。そこには白いエプロンを着た60代くらいのおばちゃんが立っていた。
「お弁当です。温かいうちに食べてください」
「ありがとうございます」
智は弁当を受け取ると、おばちゃんは部屋を出て行った。智は花輪に渡した。
「ありがとう。あのおばさん、優しそうだったね」
「ああ、こんな所にもあんな人いたんだな」
智は疾登に渡そうと思ったが、少し意地悪してわざと渡さなかった。
それに気付いたのか、疾登が智の袖を掴んで頬を膨らまして言った。
「兄貴、なんで俺にはくれないんだよぉ。お腹すいてるんだよ」
智は、疾登ならもっと面白いリアクションをしてくれると思っていたが、それほど面白くなかった。
「なんだ、もっと面白いリアクションしてくれよ。期待外れだった」
疾登は口を尖らせて言った。
「ごめん、面白くなくて」
何だ。意外と可愛いところあるじゃないか。
「俺も遊んだりしてごめん。ほら、弁当」
智が弁当を差し出すと、疾登が嬉しそうに飛びついた。
「やったー!いただきます!」
疾登はすぐに机に走って言って、椅子に腰かける前に、白ごはんを口に入れた。
「うっ、何だこれ。何か味変だぞ?」
疾登は弁当を机の上に置いて口を手で押さえながら言った。
「そうかな?私は美味しいと思うけど・・・」
花輪は、もう3分の1は食べ終わっていた。
「じゃあ、俺も食べてみようかな」
智は唐揚げを口に入れた。しかし、味は少しおかしかったが、吐き出すほどではなかった。
「大丈夫だよ。疾登。気にするな」
「そうかなぁ・・・」
疾登は、まだ納得がいかない様子だったが、その後は何も言わずに黙々と食べ続けた。
だが、疾登の発言は正解だったのだ。この弁当には、ある物が含まれていたのだ・・・
前半をちょっと編集しました。ちょっと、文が長くなってしまいました。
これからは、高峰の口調が少し荒くなるかもしれません。
また、お化け屋敷とは違うgameが出てきます!(次話で出せるかなぁ)
次回もお楽しみに!