第17話 game1 お化け屋敷
今回は、疾登のリアクションに注目です!
ちょっと、怖い場面が出てきますが、全て作り話なので、安心してください(笑)
バスに乗ってから30分が経った。まず始めに、昔、京都で有名だったらしいが、関山病院という所があるらしい。そこを舞台にしたお化け屋敷から回っていくという。
3人はバスから降りて、案内人からツアーの説明を受けた。案内人は、髪が長く茶髪で、目はくっきり二重で顔立ちも綺麗だ。モデルでもおかしくない抜群のスタイルだ。
「今回、案内人を務めさしていただく高峰尚子です。えーっと、まずは、この関山病院でのお化け屋敷に入ってもらいます。それでは、皆さん3人以下のペアを作ってください」
高峰は気だるそうに言った。
見た目だけで、中身は適当な女なんだなと思った。
「なんか、この案内人、雰囲気悪いな。だから旅行客が来ないんだよ」
と、智は呟いた。A、Bコース合わせて52人しか旅行客いないし・・・いや、普通か。
「お兄、3人までのペアって言ってたから、お兄と疾兄とペアになっていい?」
横から花輪に声をかけられた。
「俺はいいけど、花輪お腹の中の赤ちゃんが心配なんだけど・・・」
「大丈夫だよ。この子は私に似て丈夫だから。それより、疾兄。足引っ張らないでね」
疾登は顔を手で覆いながら言った。
「分かってるよ。もう、本当に嫌だなぁー」
このBコースはちょうど30人なので10組に分かれた。例のおじさんは、30代前半くらいのグループに入っていた。
皆は、高峰にお化け屋敷の前まで連れて行かれた。
「では、皆さん前にいるグループから順番に入っていってください。前のグループが入ってから3分以上経ってから中に入ってください。3分は私が計ります」
そう言って、高峰はポケットからストップウォッチを取り出した。
智たちは列の1番最後尾に並んだ。これは、疾登からの頼みだった。1番最後より5、6番目の方が安心すると言ったが、最後がいいと言い続けていたので仕方なく最後にした。
「それでは、1番前にいるグループの方は中に入ってください」
1番最初のグループはカップルが集まったグループだった。女性は男性の腕を掴んで「怖いよ」と言いながら中に入っていった。入って1分も経たないうちに、中から女性の悲鳴が聞こえてきた。その悲鳴を聞いた疾登は
「もう嫌だよ・・・帰りたいよ・・・」
さっきまでマリオカートをしていた時の顔とは正反対にどんよりしていた。花輪は情けないというようにため息をついた。
続いて、2番目のグループもカップルが集まっていた。1番目のグループと同じように悲鳴を上げていた。
3番目のグループはあの、おじさんがいるグループだった。全員が男性だったため、悲鳴が野太かった。
それから、順調に進み、残りは、智たちだけとなってしまった。
「では、最後のグループは入ってください」
疾登を見ると、手で顔を覆ってため息をついていた。ここから1歩も動かないぞという感じだ。
「行くぞ!疾登。もう、なにぐずぐずしてんだよ。ほら、早く」
「疾兄、置いていくよ」
疾登は置いていくという言葉に敏感に反応した。
「置いていくのだけは勘弁してくれ」
智は、疾登の気持ちを少しでも楽にしようと優しく声をかけた。
「どうせ作り物だよ。だから、安心しろ」
「そ、そうだよな」
疾登は気合を入れ、中に入ろうとした。その時、背後から不気味な高峰の声がした。
「このお化け屋敷には、当時の関山病院で亡くなった患者さんの霊が出るらしいですよ」
何でこのタイミングで言うんだ!せっかく疾登が中に入る気になったのに!
「ばかばかしい話だな。疾登、気にするな。こんなの作り話だ。もう、さっさと行った方が後々楽だろ」
「そうだよな。嘘に決まってるよな」
すると、また横から高峰の声が飛んできた。
「お気をつけて」
智は、高峰に腹が立った。智は小さく舌打ちをして、さっさと中に入った。花輪と疾登はその言葉が気になったらしいが、少し遅れて智の後についてきた。
中に入ったと同時に真っ白いお化けが出てきた。智は、「どうせ、中に人間が入ってるんだろ。よく引き受けたな、この仕事」と呟きながらお化けをスルーしたが、疾登と花輪は悲鳴を上げていた。
疾登は悲鳴を上げながら智の腕に掴まってきた。智は疾登の手を振りほどこうとしたが、また掴んでくると思い仕方なく疾登の手を取って先に進んだ。花輪は智の服の袖を掴んで震えていた。智は「動きずらいな」と思いながらなるべく歩調を速くして先に進んだ。
中に入ってから10分程経った今も、疾登はお化けが出るたびに悲鳴を上げている。花輪はさすがに慣れたのか悲鳴は上げているが、声の大きさが小さくなった。そんな2人とは逆に智はこれまで1度も悲鳴を上げずにただ、前だけを見ていた。
しばらく進んでも、一向に出口が見えてこなかった。あれからまた10分程歩いていくと、手術室が見えてきた。他に進む道がなかったので中に入った。すると、すぐ、血まみれになったお化けが出てきた。
「うぎゃぁ!!もういやだよ!早く帰りたい!」
疾登の声の方がびっくりするわ。智はツッコミを入れたくなったが、やめた。
それから手術室を彷徨っていると、20代後半くらいの男性が倒れていた。智は、これは人間だと確信して、その男の傍に行こうとした。だが、疾登が智の服の袖を掴んで言った。
「兄貴、それは人間じゃない。ただのお化けだ。だからほら、早くここ出ようよ」
しかし、そんな疾登は無視して、花輪と一緒に男性の傍に駆け寄って声をかけた。
「大丈夫ですか?聞こえますか?」
試しに体を揺すってみると、彼はゆっくり目を開けた。
「あ、すいません。ありがとうございます」
花輪は優しく男性に声をかけた。
「良かった。あの、お名前聞いてもいいですか?私は野々神花輪です」
智も続けて名前を告げた。
「僕は野々神智です。花輪の兄です。あと、あそこにいるのが野々神疾登です。僕の弟です」
智は突っ立っている疾登を指さして代わりに名前を教えた。
「僕は赤森浩太です。皆さん、兄弟なんですね」
「はい、そうなんです。それで、赤森さんはなぜこんな事に・・・」
赤森は俯きながら肩を震わせて声を出した。
「この手術室に入った途端に、女性の霊が出たんです。それで・・・」
「ちょっと待てください、すいません」
智は、赤森の言葉を遮って、急いで疾登の耳を塞いだ。理由は、これ以上霊の話を聞くと、また怖がって先に進まなくなってしまうからだ。
智は疾登の耳がちゃんと塞がっているかを確認して赤森に言った。
「すみません、弟が霊とか苦手なんで・・・続きお願いします」
「あ、はい。それで、その女性の霊を見た途端に足が急に痙攣して動かなくなってしまったんです。その後、意識が朦朧とし始めて、気が付いたらここに倒れていました」
信じられない。ここに本物の霊がいたなんて・・・そう考えると背筋に寒気が走った。智は背後が気になり振り返ったが、何もなかった。
突然、隣にいた疾登が後ろを向いて叫んだ。指を前方に向けて口をもごもごしている。
「あ・・・あれ、女の人が」
そう言った後、急に疾登の足が震えだした。意識も朦朧としだしたのか、その場に倒れ込んだ。
「おい!疾登、しっかりしろ!」
花輪も一生懸命、疾登に声をかけている。
「と、とにかくここを出よう。危険だ」
智は疾登を抱えながら花輪に頼んだ。
「花輪、赤森さんに肩を貸してやってくれ」
「う、うん。分かった」
花輪は赤森に1声かけて肩を貸した。
「すみません」
花輪は優しく微笑んで赤森に言った。
「大丈夫ですよ。仕方ありません。足、大丈夫ですか?」
「まだ、少し」
「そうですか・・・とにかく、先を進みましょう。ゆっくりでいいですからね」
赤森はもう1度花輪に礼を言って、よろよろになりながらも出口を目指した。時々、お腹の中の赤ちゃんが気になって、花輪に「大丈夫か?」と声をかけながら先に進んだ。
案外、手術室から出口はさほど距離がなかった。
智たちは、ようやく外に出ることが出来た。
毎回、文字数が異なってすみません。
頑張って、きりのいい所で終わらせていますので・・・