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僕たちの約束  作者: 翔香
第1章 僕たちの約束
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第13話 おふざけ

名前の募集が終了しました。


名前は野村のむら一輝かずきになりました。


皆さん、ご協力ありがとうございました!

 あれから昼食を摂るために、前に智の友達が「美味しいラーメン屋がある」と家の近くのラーメン屋


を紹介してくれた。しかし、紹介してくれたことには感謝するが、時々嘘を言う友達なので、本当に美味しいのか心配なのだが・・・



「お兄、ちょっと古くない?」



 外見、築50年くらい経っていそうな雰囲気だった。店の壁は油で変色し、ツタが巻かれていた。



「兄貴、本当に美味しいのか?」



「まあ、こんな所ほど美味しいって言うじゃないか」



 智は何とか2人を説得し、中に入った。

 中に入ると、ガランとした殺風景で客が誰一人いなかった。店主でさえもいなかった。



「お兄、帰ろうよ。何か気味が悪いよ」



「まあまあ、ちょっと店の人呼んでみるよ」



 智は大きな声で呼んだ。



「すみません!誰かいますか!」



 しばらくすると、奥から80代くらいのおじいさんが出てきた。顔は皺だらけで、すごくやせ細っていた。



「誰じゃ?もう、借金は払い終わったぞ」



 意外と声のトーンが低かった。



「いや、借金取りじゃなくて、客です。ラーメン食べに来ました」



 智が答えると、満足そうに頷いて口を開いた。



「そうか、客か。めずらしいのぉ。さあさあ、ここに座って」



 おじいさんは、カウンターに3人を座らせた。



「ご注文は?」



 疾登はメニューを見て注文した。



「じゃあ、豚骨ラーメンと、チャーハン1つ」



 すると、おじいさんは申し訳ないという様な顔をして言った。



「あの、チャーハンはちょっとお米がないんで出来ません」



「え?出来ないの?じゃあ、ギョーザは?」



「それもちょっと・・・」



 疾登は残念という様な表情を見せた。



「じゃあ、豚骨ラーメンだけお願いします。兄貴と花輪は?」



 智は疾登からメニューを受け取り、花輪と一緒に見た。



「じゃあ、俺も豚骨ラーメンで」



「私は、塩ラーメン」



 おじいさんは小さい紙にメモを取って笑顔で言った。



「かしこまりました。しばらく待っていただけますか?」



「もちろんです」



 智は微笑んで答えた。

 おじいさんは、また店の奥に消えていった。



「なんか、面白い人だな」



「そうだね。優しそうだし」



「元気なおじいさんだな」



 注文してからいろいろ3人で話をしていたが、一向におじいさんが現れない。もう30分は経っているのだが・・・



「なあ、兄貴。ラーメン遅くないか?」



「そうだよな」



 すると、ちょうどおじいさんが3つのラーメンをお盆に乗せて持ってきた。手が震えているのか、皿と皿がぶつかってカタカタ鳴っている。



「お待たせしました」



 おじいさんはお盆をテーブルに置いてラーメンを3人に渡した。こぼしそうだったので、途中で智も手伝った。



「では、ごゆっくり」



 そう言い残しておじいさんは、また奥に消えていった。



「じゃあ、食べますか」



 花輪が2人に声をかけた。



「そうだな。食べよう」



 3人は同時に「いただきます」といってラーメンを口に運んだ、と同時に口を押えた。



「何だこれ・・・油っぽい」



「私のすっごい塩辛い」



「あの野郎・・・何でこんな店紹介したんだよ・・・」



 その後も踏ん張って食べたが、半分以上残ってしまった。



「う・・・何か気分悪くなってきた」



「私も・・・」



「おじさんには悪いけど、もう帰ろう」



 智は3人分のお金をテーブルの上に置いて外に出た。











 家に帰って3人は、ソファーに座った。



「あーはっきり言ってまずかったな。あのラーメン」



「うん。おじさんは雰囲気良かったんだけど・・・」



「ちょっと、連絡してみる」



 智はあのラーメンやを紹介した一輝に1言言ってやりたい気持ちでいっぱいだった。やっぱり、あんな奴信用するんじゃなかった。



 野村一輝。彼は、関西弁を使うちょっと個性的な人だ。智が中学生になった時、出席番号順に座って偶然、「野々神」と「野村」で席が近かったのだ。

 最初に一輝が声をかけてくれたが、智はまだ、両親が殺されたショックから立ち直れていなかったため、誰とも話をしたくないと思っていた。しかし、あまりにもしつこく話しかけてくるので、一応頷くだけはしておいた。一輝の相手をする日が重なるにつれて、「こいつ、面白いな」と思い始めていた。 それから、思い切って自分から一輝に話題を出してみると、「やっと自分から話しかけてくれたな。おおきに」と言って、とても喜んでくれた。それから部活も一緒に入り、学校ではずっと一緒にふざけていた。

 突然、一輝が「俺に全部話してくれや。な、俺も全部話すから」と言ってきた。智は、こいつなら全てを話してもいいかもしれない、と思い、智の両親が殺されたという話を一輝に話した。それを一輝は静かに頷いて同情するように聞いてくれた。そこで一輝もお父さんが事故で亡くなったという話を聞いて智は気が楽になった。「俺のほかにも苦しんでいる人がいるんだ」とその時思った。

 今は普通のサラリーマンをやっている。「オヤジがいない分、オカンは俺のために今まで頑張ってくれてたんやから、今度は俺がオカンを楽にさしてやらなあかんけんな」と言って、お母さんを大事にしているとても優しい人だ。



「おう、智か!どないしたん。自分から連絡するとか珍しいやんけ」



「おうじゃねーよ!あのラーメン屋、正直言って凄くまずかったんだけど!」



「え!ホンマに行ったんか!あれ、ふざけて言ったんやけどな。ホンマ智、ウケルわ~」



 受話器の向こうで、一輝の笑い声が聞こえた。



「何笑ってんだよ!もう、弟と妹まで連れて行ったんだぞ。俺が払った分のお金、返せよ」



「うーん。分かったわ。金は返す。その代り、今度、わしにホンマにうまい店紹介してや。な?えやろ?」



「じゃあ、今紹介する。お前の家の近くに和食の専門店あるだろ?あそこ超美味いから」



「ホンマか?」



「本当、本当」



「そうか、ほな行ってみるわ。じゃあ、また連絡するわ」



「おう。じゃあな」



 智は携帯をポケットに入れて思いっきり笑った。



「どうしたの?何がおもしろいの」



「あいつ、信用しやがった!本当は俺が言った店、まずいって評判になってるのに」



 智は笑いながら言った。



「兄貴、やるな」



「いや、やるなじゃないでしょ?その人可愛そうだよ」



 智は笑いがようやく収まったところで、花輪の肩に手を置いて言った。



「男の友情っていうのは、こういうバカげたことで深まっていくんだ」



 花輪はため息を吐いて呟いた。



「しょうもな」



「ん?何か言ったか?」



「いや、別に」



「そうか」



 それから3人はしばらく昼寝をした。


関西弁をあまり使ったことがないので、関西弁に苦戦しました(汗)


もし、間違っていたら、指摘お願いします。

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