第1話 花輪の敵
2012年、1月20日
大阪府、大阪市。大阪市の中でも、田舎の方にある10階建てのマンションに、
1番年上の、野々神 智、弟の疾登、妹の花輪、3人が住んでいた。
部屋は4つと、ごく普通のマンションだ。
リビングがあり、あとは1人1つずつ部屋がある。
3人は、リビングで、輪になって昔のアルバムを見ていた。
しかし、3人も子供がいるというのに、アルバムが2冊しかなかった。
それには深いわけがあったのだ。
「お兄。またいじめられた」
また花輪が泥だらけになって泣きながら帰ってきた。
「またあいつにいじめられたのか?」
「うん」
「まだやってるのか、あれだけ怒ったのに」
「あいつ」とは、花輪をほぼ毎日いじめる水川彩野。つい2日前に、また花輪をいじめたらどうなるか分かってるのか、と疾登と一緒に脅してきたんだがまだ反省してなかったのか。
「よし、一発殴ってやろうかなぁ」
智が1歩を踏み出した、その時
「それはダメ!」
花輪は優しいから人を殴るということは許せないらしい。たとえ自分をいじめた人間だったとしても。
「分かった。でも、もう一回怒ってくるからな」
「ありがとう。お兄」
花輪がにっこり笑った。いつもこの笑顔に癒される。
「よし、水川彩野の家に行くぞ!」
花輪は大きく頷いた。智はテレビゲームに夢中になっている疾登に言った。
「疾登も行くぞ」
疾登は画面に目を向けながら「ちょっと待って」と言った。
「じゃあ置いていくぞ」
智は冷たく言い放った。
「ごめん、ごめん。すぐ行く。」
疾登は、ゲームをセーブした。
3人は揃って目的地へと向かった。
水川彩野の家に着き、智はインターホンを鳴らした。だが、返事がない。もう一度鳴らすと「はい」という声が聞こえた。しばらくするとドアが開き、水川彩野の母親が出てきた。智の顔を見た途端、鬱陶しそうな顔をして言った。
「なんですか?また彩野がいじめたと言うのです?それは間違いですわ。今日は彩野ったらかわいそうに泣きながら帰ってきたのよ!」
智にはその言葉が理解できなかった。
「いや、いじめられたのはうちの妹で」
「ちがうわ!彩野はあなたの妹に叩かれたっていうのよ!」
そんなはずはない。花輪がそんなことするはずがない。明らかに、あの母親か彩野が嘘をついてるに違いない。しかし、一応花輪に確認を取った。
「花輪。叩いたのか?本当のことを言ってくれ」
「叩いてないよ。本当だよ」
智はホッとした。すると、この会話を聞いていたのかついに母親の怒りが爆発した。
「もういいわ!帰ってちょうだい!もう、あなたたちの顔を見るとイライラするわ!本当不愉快だわ!」
そう言い放った母親は乱暴にドアを閉めた。いくらなんでもあれは言いすぎだろう、と心の中で愚痴を言った。
「花輪。もう、あいつらのことは相手にするな」
「分かった。じゃあこれからお兄と疾兄で一緒に学校行っていい?
「いいよ。な、疾登」
「うん」
「やったー!」
花輪はにっこり笑った。
「じゃあ帰ろう」
三人は仲良く手をつないで帰った。
最初は「つまらねーな」と思う方も大勢いるとおもいます。
でも、後になるにつれて面白くなっていくストーリーになってますので、最後まで楽しんでいただけると嬉しいです(*^_^*)