5話 白豚から豚に
「オラ、白豚ァ!腕が下がってんぞ、上げろ上げろ!」
訓練着姿のルカが罵倒を投げかける。
夏休みに入り、アイリスはダイエットに小説の持ち込みと忙しく過ごしていた。
「あの人元は王国騎士団長やってたから」
「ケガで引退したっつっても騎士団の癖は抜けないみたいだな」
「だからって主人に向かって罵倒など・・・」
「無駄口叩いてんじゃねぇぞ豚ァ!素振り百回追加!」
「ひぇ」
「頑張りましょう。お嬢様・・・」
始めは遠慮がちだった兵士達も今では良い練習仲間だ。
「お嬢様、朝食の後のご予定ですが」
「あんたの二重人格怖いわ・・・・」
「十一時に友人が訪ねてくるからよろしくね」
「いえ、そうではなく。この後は森の散策がありますから早く食べて下さい。すでに五分過ぎてます」
「・・・・」
アイリスとスカーレットは現在、絶望の中にいる。
出版社への持ち込みでボロクソに批判され、心がポッキリ折れたのだ。
「お菓子はありませんよお嬢様」
「くっ!」
「菓子に逃げた所でなんにもなりませんよ。とにかく書き続けるしかないんです。上手くなるまで。諦めたらそこで」
「確かにそうだわ。あのハゲ。人をジロジロ見て鼻で笑いやがって!」
白湯を一気に飲み干すアイリス。
「私は若い方でしたが、あの冷たい目で淡々と罵倒されましたわ。赤ちゃんが作ったお話の方がよっぽど名作だと」
ハンカチを目頭に当てて泣きだすスカーレット。
バサッ!と大量の裏紙の束をテーブルに置くと、それを指さし、「書いて下さい」との一言を二人の頭上から浴びせた。
「短い話で結構です。とにかくこの裏紙全部埋まるまで何話でも書き続けて下さい。白豚」
「「ひぇ」」
ルカの低く冷たい声に竦む二人。
何十作と書かされた上に運動まで付き合わされ、スカーレットはフラフラになりながら自宅へと帰って行った。
結局、夏休み中に出版社から良い返事は得られなかった。
夏休みが終わり、アイリスは両親に見送られていた。
「アイリス!春とは断然違う!見違えたぞ!」
父ハワードは三回目の丈直しを終えたアイリスの姿を見て喜び、自分の腕に収まるほど痩せた娘の姿に「良く頑張った!」と褒め称えた。
母は涙と鼻水でグシャグシャにして言葉になっていない言葉を上げる。
「あの誰にも相手にされなかったオーククイーンお嬢様が白豚令嬢に、そして今は豚に」
「人間じゃないんかい!」
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