エピソード① 「お隣さんは・・・」
人生半世紀も生きていると、自分も含め周りでもいろんなことが起こりますよね。
何か理解不能なことが起こるたびに、私の母は、「あんた、本を書きなさい。」「話のネタになるね。」「脚本書けるわ」などど半分本気で言ってくる。
ということで、これは母に言われた通りに、私が実際に体験したことや感じたことを書き連ねていこうという試みです。
私の実家は町の小さなケーキ屋さん。父がケーキを作り、母が店頭で販売するという家族経営のお店だ。
3歳の時にこの地に移り住んできて、ほどなくして幼稚園に通うようになる。母は保育園には入れたくなかったらしく、市の幼稚園に抽選合格で通うことになった。幼稚園の抽選で当たった喜びを伝える母を、よく意味も分からずに眺めていたのを覚えている。よくわからないながらも、親が喜ぶ姿が嬉しくて一緒になって喜んだ。
のちに分かることだが、同じ商店街の同級生のラーメン屋さんのMちゃんは、保育園に通っていて、母はそのことを可哀そうと表現していた。長い時間預けられるから親と過ごす時間が少なくて可哀そうということらしい。まあ、昭和の時代の古い考え方といえるだろう。当時は保育園に通わせるような共働きの家は今よりも少なかったからなのかもしれない。
さて、私の幼児期の紹介はこれくらいにして、今回書きたいことは、人生初の衝撃について。それまでの私の概念(たった7,8年の概念だが)を覆すことが起きたのだ。
それは小学2年生頃だろうか。私は当時流行りのサスペンスドラマを見ることが好きだった。火サスや土曜ワイド劇場などよく見ていたものである。最後に崖っぷちで犯人が犯行を吐露するお決まりのあれだ。
その中にはちょっとしたお色気なものもあったりして、少し小学生には早いシーンも含まれていた。が、あまり気にせずに普通に見ていた記憶がある。信じていた人に裏切られたり、憎んだり、憎まれたり、挙句の果てには大抵人が殺されたりと自分の日常にはない刺激があるお話に面白みを感じていたのだろう。ごく平凡な生活の中のちょっとした刺激・・・。自分が平和の中にいるから楽しめるというものだ。
そんな中、小学2年生の私に突如として非日常が現れることになる。
うちの実家はいわゆる長屋。横に連なった建物に、それぞれ商店が入っている。住まいはその2階。ある日、我が家のお隣に自転車屋さんが開店することになった。その家族構成は、若いお母さん(20歳くらい)と、私より6歳年下の男の子。引っ越してきたときは本当に小さかったのだと思う。その二人だけ。シングルマザーというやつだ。それだけで新鮮だった。
お店がオープンすると、自転車屋さんというよりは、バイク屋さんに近く、大きなバイクを金髪のあんちゃんたちが店先でいじっている光景がはじまった。いわゆる改造車でエンジンの音も規格よりもはるかに大きく、排気ガスもひどい。ケーキ屋の隣がこんな環境では、商売に影響がでるかもしれない。営業妨害だ。と両親が話し始める。明らかにお隣との関係性は良好とはいえない。
そのうち、母からとんでもないお隣さんの家庭事情を聞かされることになる。
ある日、いつも若いあんちゃんの溜まり場になっている店先に、一人のおじさんが現れた。やや前髪が後退していたのですごいおじさんに見えたが、もしかしたら40歳手前だったのかもしれない。見た目をどうこう言うのは好きではないが、まあ実年齢よりも年がいっているように見える、お世辞にもイケオジとはいえない、ちょっと怖い雰囲気のおじさんだった。
すると母が、
「今日は、来てるんだね、こっちに。」
と噂話をするトーンでいう。
「あのおじさん、だれ?」
何も知らない私は無邪気に聞いた。
「隣のうちの旦那さん。結婚はしてないけどね。」
シングルマザーと聞いていたので、単に旦那さんがいたんだぁと、ちょっとだけ驚いた。
なんで結婚していないのか不思議に思い、さらに母に尋ねる。
母の回答は、私の想像の斜め上をいっていた。小学生の私にはとても考えられない内容だ。
お隣のおじさんは、もう一つ自転車屋を営んでいて、私の町から車で15分ほどのところに本店を構えている。つまり、お隣は2号店。おじさんの本当の奥さんは1号店の方にいる。なるほど、いわゆる不倫関係で、妾として2号店を持たせて囲っているということか。サスペンスドラマをよく見ていた私は、そこまでは容易に理解した。まさか、身近で不倫が本当にあるとは、それだけで非日常的な出来事だ。
が、この話には、まだ先がある。
1号店の本妻は、2号店の妾の実の姉だというのだ。これは、小学生の私をフリーズさせた。
え???
頭の中が混乱した。
姉妹で一人の旦那さん・・・・
小学生の頭では感情が理解できない。私にも姉がいる。自分に置き換えて考えると、姉の旦那さんになる人と私が結婚するようなもの・・・??
それって、姉妹仲は大丈夫なのか?
母によると、本妻には息子がいて、その子が本店を継ぐことになっているとか。姉妹だが、いや姉妹だから、余計に仲は悪いらしい。実際、その本妻を一度も見たことがない。
このことは、すでに我が商店街では相当な噂になっているらしかった。
それから、私のお隣観察が始まった。
お隣の奥さんは、金髪の若いお兄ちゃんたちととっても仲がいい。もしかしたら、いろんな意味で仲が良かったのかもしれないが、それは一先ず置いておこう。
1か月に何回かやってくるお隣の旦那さん(仮)は、どうみても、ど~~~~みても、姉妹で取り合うようなイイ男には見えない。いつもイライラしている感じだし、とにかくヤンキーがそのままおっさんになった感じが近寄りがたかった。これまで接したことのない人種とでもいうべきか。
何がいいんんだ??このおっさんの。子供心に疑問だったが、答えは出ないまま終わった。
それからどれくらいの時間がたっただろうか。私が大学生になったころ、お隣に女の子が誕生した。お兄ちゃんはもう中学生だったから、だいぶ年の離れた妹になる。まあ、それだけお隣の奥さんは越してきたころ若かったということなんだが。あのおっさん、頑張ったんだな。なんて大学生の私は思っていたのだが・・・このお隣さん、ほんっとうに話題に事欠かない、驚くことをやってくれる。
さて、想像してほしい。この女の子のお父さんのことを・・・・
感のいい方はお察しの通り、あのおっさんではない。
では、誰か。まあ、想像できると思うが、店先でバイクをいじっていたお兄さんたちの一人なわけだ。
ここまでは、ほとんどの方が察してくれていたのではないだろうか。
少年たちは大人になるから、引っ越してきてから十年ちょっと、いろんなお兄さんたちが出入りするわけで・・・若いお隣の奥さんとしては、よりどりみどりだったのかな?なんて下種なことを考えたりしてしまうのだが、さあ、ここからが本題で、私は本当に声を上げて驚き、残念になってしまう真実が母の口から語られるのだ。
お隣の下の子が3歳くらいになったころだろうか、母が外を見ていると、幼稚園のバスが迎えに来ていたらしい。その娘を愛おしそうにお見送りし、出発するバスに手を振る若い男性の姿があった。
そのことを教えてくれた母の言葉が以下になる。
「さっき、〇〇ちゃんをおっかけて見送ってたの、あれが父親じゃないかね?本当の父親じゃないと、あんなに可愛がらないでしょ。ほら、あんたの同級生の・・」
「ん????」と私の頭の中がクエスチョンでいっぱいになった。
今、何といった?「同・級・生」とな?
私と隣の奥さんとの年齢差は一回り以上・・・そんな年下の?と驚く前に、同級生だと!?
誰だ、誰だ??と私は記憶力をフル稼働させた。隣に出入りしていた同級生となると・・・あいつだ!!
一致する人物が一人だけいた。小中学時代の同級生K君。特に仲が良かったわけではないが、高校生の頃からたまに隣の店先でバイクをいじっているのを見掛けたことがある。
中学時代のK君は、身長は小さい方だったが端正な顔立ちで、学年一かわいいとされる女の子と付き合っていた。今思い出しても、お似合いのかわいらしいカップルだった。そ、それが一回り以上離れたシングルマザーとそういうことになっているとは・・・考えてみればお隣の息子とは6歳違い。息子の方が年が近いじゃないか!!
現在の私なら、もういろいろ社会経験も積んだいい大人なので、まあそんな事もあるか。と思えるが、このころの純粋な世間知らずな私には、天井がひっくり返るほどの驚きだったし、なんだかショックだった。私が大学生ということは、彼も同じ年なわけで・・・彼はずいぶん若くして父親になり、しかも6
才しか違わない大きな息子も加わり、一回り以上年上の女性と家庭を持とうとしている・・・しばらくの間籍を入れずにいたのは、もしかしたらその息子のためなのか、あるいはあのおっさんとの関係が切れていなかったからなのか・・・もう私には全く関与できない訳のわからないことである。
その後、ちょっと大人になった彼は家を建て、そこでお隣の奥さんと娘と3人で暮らすようになった。娘はもう小学生くらいになっていただろうか。6才下の義理の息子はというと、私の実家のお隣で彼女との同棲生活をスタートさせたとかなんとか・・・本店の方で何があったかは知らないが、本店に出入りして跡を継ぐ準備をしているらしいかった。
余談だが、あのおっさん、なんかやらかして一度逮捕されかけたが、次逮捕されるとブタ箱いり確定なので、その罪をお隣の息子が被って逮捕さえれたらしい。
もう、わからん!!自分の息子に被せる親がどこにいる??理解できないし理解したいとも思えない。
ま、そんな負い目からなのか、本妻の息子がちょっと障害があって無理だったのかは定かではないが、跡取りの座は獲得したらしい。
みんな、それぞれの人生を歩んでいて、ちゃんと幸せになったみたいだから私が理解できないだけで、結果はオーライとしておこう。
外野がどうのこうのいうことではないが、人生何が起こるかわからないもんだなとしみじみ思わせてくれた一家である。
さて、最初のエピソードいかがでしたでしょうか?
ドラマみたいなこと、ドラマより想像を超えてくることって、実は案外近くで起こってたりしますよね。
身近にある人生模様をこれからも思うままにつづっていけたらなと思います。




