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第七話

「……それで、今日はどのようなご要件で? お見合いは終わったのですか?」

 ひとしきり笑いあってから、マリエッテ様は自然に私を解放した。少し名残惜しく思いながらも私たちは分かれてソファーに座り、向かい合う。聞くまでもなくお見合いは終わったのだろう。そうでなければ主役であるはずのマリエって様が外出などできるはずもない。気にしているという社交辞令だ。

 

「ああ、あれ。お断りしたわ」

「そ、そうですか……」

 あまりにもあっさりしたもので、少々たじろいでしまった。もちろん、マリエッテ様のことだからお断りの口上は至極丁寧なものだったと思うけど、そこを離れたとたん、ここまでの落差があることに驚いた。悪いとは思わないけど、少し無理をしているような、自信のないような空気を感じた。

 

「参考までに、どのような条件が合わなかったのですか?」

「全部よ」

 大輪の花が開いた。ああ、いいなと思う。いつもの儚げな笑みもいいが、こういう明るい笑みもいい。つまりは全ていいのだけど、こういう笑みもできるのだと嬉しく思う一方、誰がこれを気付かせたのだと軽い嫉妬を覚えた。マリエッテ様の魅力を開発するのは私でありたかった。

 

「面白いわね」

「えっ?」

「顔がころころ変わる。サーラの言う通りね。もっと早くあの子に聞いておけばよかったわ」

 軽く握った拳を口元に当て、くすくすと肩を揺らす。あいつか。許すまじ。

 しかし、笑う姿もお可愛らしい。この瞬間を切り取って、永久保存したい。画家の知り合いを作らないと。

「本当、おもしろいわね。今でもころころ」

「う……」

 

 恥ずかしくて、まともにマリエッテ様の顔を見られない。少し上目遣いに、口がへの字になる。 

 そんな私に、マリエッテ様は微笑ましく、温かなまなざしを下さる。まだ完全に自信を持てないけど、七、八割の確率で嫌われていないと思う。ここには判定してくれそうなサーラもいないから解らないけど、嫌っている人にまでこんな優しい瞳を向けられるのなら、それはそれで完敗を認めるしかない。

 

 と、マリエッテ様が何かに気付いたようにこちらを見た。

「今日は、モジモジ君はいないのね?」

「あ……」

 そうよね。それは、全ての元凶の名前。マリエッテ様だって当然、お解りだ。モジモジ君がいなければ、こんなことにはなっていなかった。そして私は、彼とは決別したんだ。過去の謝罪とともに、そのことをしっかりとお伝えしなければならない。

 ぐっ、と奥歯を噛み締める。一度だけ、私たちの間を隔てるテーブルの木目に視線を下げ、表情を整えてからマリエッテ様に向かい合う。私にできる、全力の笑顔で答えるんだ。

 

「モジモジ君とは、お別れしました」

「そうなの」

 教会の中央に祀られている女神様のようなお顔だった。どうやら付き合ってくださるらしい。義姉としてかな。それでもお優しいのには変わりない。自分に被害を与えた相手の悔悟を受け入れようとされている。私は、感謝の念を込めて頭を下げた。もちろん、視線はすぐにマリエッテ様に戻す。

「はい。私は、これまで自分の弱さから多くの方にご迷惑をかけてしまいました。その償いをするためにも、私はこれ以上、彼とは一緒にいられないのです」

「そうね」

 

「マリエッテ様。どうか、償いをさせてください。あい……敬愛する貴女のために、愚かな私はようやく気付き、立ち上がる決心をしたのです」

 偉そうなことを言うが、自分で始めた馬鹿な騒ぎを自分で鎮たいという決意表明だ。受け入れられるかどうかは、また別の話。だけど迷惑をかけてきた人々の反応がどうあれ、少なくとも私はひとりも余さず頭を下げる気でいる。そうすることでやっとスタートラインに立てるのだ。そこからが償いの始まりなのだと私は思う。つい、本音がでそうになったのは危なかった。

 

 いつしかマリエッテ様は目を瞑っていた。私の言葉を噛み締め、吐き出すか飲み込むかを考えているのだろう。

 思うところはあるはずだ。なにせ、格下の連れ子が身分差もわきまえずに無礼を働き続けたのだ。その行動を深く恥じ、頭を下げたとはいえそれまでに抱いた悲しさや悔しさ、怒りや不安、羞恥、失望といった感情は簡単に消化できるものではないだろう。この体験はこれから先もずっと、もしかすると永遠に、泥のような塊となって心の底に残り続けるかもしれない。

 果たしてそれを許せるのか。許していいのかという話。


 祈るような気持ちで、しかしマリエッテ様から目を離さず、口を開くのを待つ。時間にすれば五分もなかったと思うけど、私にしたら軽くため息が吐き出されるまで、すごく長い時間だった。

「……貴方を支持するわ。よく決意したわね。貴方は私の誇りよ」

 マリエッテ様は身を乗り出し、握り込んだ私の右手を両手で包み込む。とても温かかった。心が、手が。マリエッテ様の優しさで包みこまれるようだった。ひと息の間、私は目を閉じてその温かさに浸り、息を吐き出すとともに目を見開き、現実へ戻る。

 

「過分な評価、恐れ入ります。ですが私が立ち上がれたのは、マリエッテ様だからです。マリエッテ様のおかげなんです」

 だから、ありがとうございます。深々と頭を下げる。これで私は、これからどんなことがあっても、どのような処分を受けたとしても、やっていける。

 だけど、マリエッテ様はゆっくりと首を振る。何もしていないと。

「私は、貴方の立ち上がる理由にはなれたかもしれないけれど、後ろから支えたり、前から引っ張ったりはしていないわ。立ち上がったのは、あくまで貴方自身」

「マリエッテ様……」

 

 私は、何度頭を下げればいいのだろう。どれほど感謝の気持ちを示せばいいのだろう。この、海よりも深い器を持つお方に、どれだけのありがとうを注げば満杯になるのだろうか。詳しい理由までは解らないけど、マリエッテ様の器に貯まった水は多分、少ない。できるのであれば、私が満たして差し上げたい。それが、気付けてしまった私しかできない役割ではないだろうか。

 もちろんこれは義務感からではない。その器が、あまりにも美しいから。色も、形も私の好みだから、私の好きな液体で満たしたいのだ。


 


「そうそう。今日ここに来た理由だけど」

 ソファーに座り直したマリエッテ様が、思い出したように手を打つ。私も居住まいを正して聞く体勢を整える。

「大事な貴方に会うためよ」

「ええっ?」

 せっかく整えた体勢を崩してしまう。嬉しい冗談ではあるけど、意味が解らない。私に会う理由なんてどこにあるのだろう。訝しむ私を気にもとめず、笑顔でマリエッテ様は種明かしをするように話を続ける。

 

「お見合いを断ったのを伝えたかったのもそう。お父様にお願いしたのよ。もう少し時間を下さい、って」

「はい」

「やりたいことが見つかったの」

「やりたいことですか。それは、何よりです」

 それは、まぁ喜ぶべきことだ。都合のいい話ではあるが、ご一緒させていただければいいなと思ってしまった。

 

 そしてそれは顔に出ていたのだろう。私の反応にマリエッテ様は目を大きく見開き、そしてため息をついた。眉を寄せ、残念な人を見る目で教えて下さる。

「少しの間、貴方と時間を共にしたい。それが、私のやりたいことよ」

「はい……えええ!?」

 耳を疑った。私とって、どういう?

 つい数秒前まで頭の中は普通に動作していたのに、急に動きがおかしくなって、考えがあっち行ったりこっち行ったりする。ぶつかったり転んだりととっ散らかり、まとまらなくなった。

 

「ね。こんな感じでいいのかしら?」

「へ?」

 目を白黒させる私に、マリエッテ様はくすくす笑う。本当に人が変わったように明るく、積極的だった。もしかしてサーラと入れ替わってないかと疑うほどに。

 しかし、こんな感じでいいの、とはどういうことだろう。混乱していると、マリエッテ様はまたとんでもない爆弾を投げつけてきた。

 

「学園時代、憧憬を抱いていた貴方の真似をしてみたわ。これから先は、貴方が教えてくれるのでしょう?」

「へ……?」

 ぽかんと、間抜けにも口を開けてしまう。だってそれはそう。憧れていた人から憧れていたと言われ、動揺しない人がいたら見てみたい。あ、サーラは除く。

「貴方のように振る舞いたいと思っていたの。貴方のように笑いたいとも思っていたわ……卑屈に周囲を見渡している私にはないものを持つ貴方に憧れていたのよ」

 

「マリエッテ様……」

 驚きで目が開いていく。ぽかんと開いた口に手のひらを被せるのが精一杯だった。マリエッテ様は頬を赤らめ、少し恥ずかしそうにしながらも続ける。

「ひまわりのように、いるだけで周りを明るく照らす貴方が義妹になると聞いて、私は嬉しかったのよ? なのに貴方はあんな……」

「そ、その節はまことに……」

 じとりとした視線を向けられ、平謝りする。そんなことって……サーラの言う通りにしていたら全てうまくいったんじゃ。あ、でもそれだと義姉妹ルートになっちゃうか。そうよそれが嫌だから悩んで、ああいう態度になって、こんな大変な事態になったのよ。

 

「ねえ、ティネ」

「は、はひ」

 マリエッタ様は真面目な顔になり、腰を浮かせて私に顔を近付ける。

「貴方は、私と義姉妹になるのが嫌なの? 私に落ち度があるのなら、どうか教えてちょうだい。今日はそのために来たのだから」

「あー……」

 どう説明したものだろう。っていうか今か。今なのか。ごくりと生唾を飲み込む。

 

「嫌、というわけではなくて、ですね……」

 どうしよう。本当に今なのかな。タイミングおかしくないかな。初めてだからよく解らなくて、前に踏み出す勇気が、ちょっと。

 マリエッテ様は私に顔を近付けたまま、目を離さない。黙って、眼力だけで続きを促している。美人が目の前だとどうもやりづらい。うるさいほどに心臓が跳ねている。

 

「その、義姉妹ではなく、別の形で家族になりたいと言いますか……」

「まぁ」

 マリエッテ様の目がひときわ大きく見開かれる。驚愕に揺れるマリエッテ様の瞳もまたきれいだな、なんて思った。うん。現実逃避だ。

「それってもしかして、プロポーズ?」

「えっ?」

「だって、義姉妹じゃなければ義母娘? 違うでしょ? だとすると、ひとつしかないじゃない」

「あ、いや、それは……」

 聡明すぎるでしょ。さすがはマリエッテ様。それとも私がアレすぎる?

 否定しない私に確信を持ったのだろうマリエッテ様は、白いお顔を真っ赤にして、ソファーにもたれかかった。左上の方に視線をやり、何かもごもご呟いている。部屋の温度がぐっと上がったように思えた。

「マリ――」

 名前を呼ぼうとした時、扉がノックされた。開けると、ティーセットを持ったサーラだった。


「そろそろ休憩してもいいんじゃないかと思ってね」

 天の助けとはこのこと。脱出路を見つけられないでいた私にとって、サーラは神の使いそのものだった。

 伯爵令嬢に紅茶を入れさせる子爵令嬢。言葉にすると身分差で顔面蒼白になるシチュエーションだ。こんなことができるのは学園に在籍している間だけだろう。贅沢な話だ。

 

 サーラの訪れはマリエッテ様にとっても助けになったようで、それまで取り乱しようはどこへやら。今ではすっかり落ち着きを見せ、普段の穏やかで淑やかな伯爵令嬢へと戻っていた。

 本当に、良いタイミングで来てくれた。マリエッテ様も慣れているわけではなさそうだったし、あのまま行けばあまり良い思い出には残らない結末となったかもしれない。

 

 もしかして覗いていた……なんてことはないか。私のことをよく解っているから、そろそろ迷子になる頃だと思って助け舟を出してくれたのだろう。入室時にそんなことを言ってたし。本当に助かった。おかげで深呼吸できた気分だ。

「ありがとう」

 友情から給仕してくれるサーラに感謝を込めて笑顔を投げかける。彼女は、少しだけ口元を緩めて返してくれた。

 

 一段落つくころを見計らい、サーラは部屋を出ていった。肝心なところはしっかり私自身でやれということだろう。どこを見ても彼女の助言は落ちていない。当然、それを求めてはいけないのは解っている。これは私自身の問題だ。ただ、ちょっとだけ気弱になって、友の残滓を探してしまっただけ。それがあれば少しは力づけられるだろうと。

 本当に、彼女は自分と他人をきっちり分けられる珍しい人物だ。人間、多少なりとも他者に影響を受けるし与えたくなるものだけど、彼女にはその方面の欲が少ない。今なんか絶好の機会なんだけど、その機会を捨ててまで私に決めさせようとするのは、他人に興味がないのではなく優しくも厳しい友情だと信じたい。


 さて、ここまでしてくれたんだ。これで何もできなければ私は一生何もできないままモジモジ君と添い遂げるしかない。

 それは絶対に嫌だしそこをギリギリ上回る生き様も嫌だから。

 目を閉じ、大きく深呼吸ひとつ。

「マリエッテ様」

 目を開ける。気持ちを込めて、しっかりと前を見つめる。かわいい笑顔、できてるかな。愛嬌と無謀が取り柄だから、これくらいは全力で行こう。

「私は、ひとりの女性として貴女を愛しています」


「……うん」

 軽く目尻を下げて、頷く。残念ながらその瞳の中には、私が望んだ色はどこにも見当たらなかった。少し寂しくなったけど、代わりに見つけた期待と希望で納得するべきだろう。上々の成果だと思うべきだし、それ以上は贅沢だ。

 とは言え、自然と視線が下がるのは許してほしい。今回だけは。

「ね、ティネ」

 見ると、マリエッテ様が立ち上がるところだった。こちらに回って来て、隣に座る。ふわりと漂う果物のような香りに頭の働きが鈍くなる。胸がどきどきしてきた。隣はまずいですよ。

 

「まずは、お友だちから始めましょう」

「え……」

「義姉妹が嫌なら、まずは友達になればいいと思うの」

 天才か……。私は、愕然として目を大きく見開いた。

 今はまだ、家族にはなれないという思いは尊重する。ならば、今は友人として互いに親しみ、ともに時を重ねていこう。そして将来、どうしても望みに応えられないとなればその時、改めて義姉妹となればいい。

 周囲に対しては、まだ姉妹として慣れていないから名前を呼びあうのだと説明すればいい。

「だから、頑張ってね。ティネ」

 ウィンクして立ち上がる。私は、呆然として見上げることしかできなかった。このお方は、どれだけの矢で私の心を射れば気が済むのだろう。もうハリネズミだというのに。

 少しサーラと話をしてくると言い残し、マリエッテ様は部屋から出ていった。




 夏休みも終わりに近付いた頃、私は退寮する準備を整えていた。

「たった一ヶ月だったけど、なんだかずっといたような気がするわ」

 感慨深く、部屋を見回す。長方形の部屋は、中央にあるカーテンで仕切られている。それぞれのスペースには窓がひとつずつあり、備品は机とベッドと本棚がひとつずつ。応接室のような派手な彫刻だったり材質がものすごく高価というわけではなく、いつでも壊れて良い量産品だ。あとは、衣類や装飾品、書類や本などを収納する木製のチェストをそれぞれが必要と思う分だけ用意する。私の場合は荷物も少ないのでまとめるのも簡単だった。そもそも短期間を想定していたのでそんなに荷物を持ってきていないのもある。

「ご機嫌だな」

 机に向かって読書をしていたサーラがこちらを向いた。長い髪を耳にかき上げ眩しそうに目を細めてこちらを見る。今日は珍しく起きるのが遅かったので編み込まれていない。なかなかに新鮮な姿だった。

「そりゃあね。早く帰って、マリエッテ様と友達付きあいを始めなきゃいけないもの」

「おいおい。私のことはいいのか?」

「寮に入ることが非日常みたいなものだったから、元に戻るだけよ。付き合い方は変わらないわ」

「それもそうか」

 寄宿舎に入らなければ、こんなに多くの時間を彼女と過ごすこともなかっただろう。想像していたことを確かめられたし、新しいことも知れた。それは確かに貴重な日々ではあったものの、それらは日常によってもたらされたものではない。あくまで例外的な副産物なのだ。

 だから、顔を突き合わせる機会は少なくなるけど、むしろそちらの方が普段どおりなので、彼女に対する友愛は少しも変わらない。

「ありがとうね、サーラ」

 この、聡明な友人がいたから問題は解決に向かっている。ひとりで対していたらひどい方向に突っ走っていたという自信がある。こんな感じで、してもらってばかりだけど、いつか、どんな形であっても恩を返すと強く心に誓った。



「寂しくなるな」

 そう言ったのは寮監のカイペルさんだ。サーラと違って、いったん寄宿舎を出てしまえば彼女とは会う機会はなくなってしまう。もちろん理由をつけて会いに行くことはできるけど、あくまでお互い暇つぶしの相手だったから、共通する趣味もなければそうそう、ね。

 あるいは学園に来た時に捕まえるか。あの茜色のきれいな長髪は他になく、凛としたたたずまいは絶対に見間違えることはないだろう。

「学園なんて殆ど行かないぞ」

「ですよね……」

 系統は同じでも働く場所が違う。学園に来るのは入寮している生徒に関して何か共有すべきことができた時くらいか。問題児でもいれば再三来るのだろうけど、今のところそんな話は聞いたことがない。


「君が退寮したとは報告しに行くけどね」

「いやぁ……すみません」

 含みのある笑みが向けられ、苦笑いで返す。先輩に軽く注意を受けているような感覚。まぁ、事実カイペルさんはこの学園出身らしいので、そういった意味でも気軽さがあった。だめだぞ、と言われてはぁーいと答えるような。それに、サーラからあらかじめ短期の入寮と聞いていたそうなので、予定通り。嫌味ではなく、軽い冗談なのだ。

「いやいや。それでもこんなに早いとは思っていなかったよ。ラーフェスメールのお嬢さんはなかなかの行動派だ」


「はは……」

 ずっと苦笑いしかできなかった。まぁ、それがなくても誤差の範囲だろう。お母様の許可があり次第、退寮するつもりだたから。

「結論が出たようでよかった。良い結果に繋がるかどうかは解らないが、その行動自体は、良い未来に繋がっているものだと私は思う」

「……ありがとうございます」

 皆が優しいと思った。いや、元々誰もが優しいんだ。下を向いていたから、その好意が理解できなかっただけ。足元しか見えてない時に、急に誰かの足が視界に入ったら、驚きもする。驚けば、なんのつもりかと言いたくなる。前を向いていれば、善意で近付いてくることに気付けるのに。


「将来の話だが」

 どこか遠いところを見て、カイペルさんは呟くように言った。

「もし、私に子供ができたら、君に任せるのもいいな」

「でしたら、ラーフェンスメール家をよろしくお願いします」

「功績があればいくらでも」

「それはそうですよね。残念」

 こうして、私たちは笑顔で別れた。この先に、良い未来が繋がっているといいな。

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