初めて購入したえっちな本のことって何年経っても覚えているものだよねっていうエッセイ
誰にでも、忘れられない読書体験というものがあると思う。
幼い頃に親から読み聞かせてもらった童話、夏休み最後の日に悪戦苦闘した読書感想文、友達と語り合った人気漫画……普段は忘れていても、きっかけがあればふと思い出すことのある、懐かしい遠い記憶というやつだ。
自分にもそれがあった。今も目を閉じればハッキリと表紙が思い出せる特別な本……そう、学生時代、初めて買ったエロ本である。
え、このなんかエモいこと語りそうな流れでなんでエロ本?
そう思った人もいるかもしれない。だが、忘れている人は思い出して欲しい。
初めて買ったエロ本というのは特別なのだ。今はネットでいくらでも見ることの出来るアダルトコンテンツだが、自分が青少年だった頃にはそもそもネット自体それほど普及していなかった。というか、高かった。そして知識もなかった。
親の目を盗んでこそこそパソコンを触るも、アダルトサイトを開いたら架空請求の支払いが目に飛び込んできてガチビビりする。そうなったらもはやエロどころではなく、本当に支払いのはがきが家に届くんじゃないかとビクビクしながらしばらくの間郵便受けをチェックする。そんな体験をした方も、割と多いのではないだろうか。
いや、なんの話をしてるんだろう。というか、年代がバレるなこれ。とにかく話を戻すが、ネットに関する知識が浅かった当時の自分は、オカズをネットの海に求めるのは危険だと判断したわけだ。
そこで求めたのは実物。つまりエロ本というわけである。当然の帰結だった。
だがひとつ問題があった。どうやって購入するかだ。
あまりにも単純かつどうしようもないことであるが、当時は未成年である。
エロゲーであればこの作品の登場人物は全員18歳以上なのでOKですで押し通せるだろうが、現実はそうはいかない。
ネットの架空請求にビビるくらいなのだ。リアルで店員さんに「君いくつ?」なんて言われたら余裕で死ねる。
だが欲しいものはやはり欲しい……ヤマアラシのジレンマだ。
人の欲望は尽きないとはよく言ったもので、青少年のリビドーは理性では到底抑えられるものではなかった。
なので部活帰り、友人とチャリを漕ぎながらアホな猥談を挟みつつ、聞いてみることにした。
「なぁ、エロ本バレずに買える店知らん?」
「あー、それなら花巻にいい店あるわ。ばあちゃんが店番してるから全然余裕だったって兄ちゃん言ってた」
持つべきものは友である。
即座に求めていた答えを返してくれた友に感謝しつつ、休みの日に早速その店にチャリで向かった。
かかった時間はざっと1~2時間くらいだっただろうか。今思えば凄まじくアホな時間の使い方をしたと思うが、当時の自分はそんなことは全く気にならなかった。
むしろこれからのことを思えば、ひどく爽やかな気分でさえあったと思う。
花巻といえば有名なのはやはり宮沢賢治だが、彼は生涯童貞を貫いた漢としても一部では有名な人物だ。
そんな彼も、やはりエロ本を嗜んだのだろうか。いや、宮沢賢治はイーハトーブという理想郷を心の中で描いていた。
となれば、やはり妄想がメインだろう。女遊びを繰り返し、借金まみれだった石川啄木とは違うはず。
そんなことを当時の自分が考えていたかはさっぱり覚えていないが、とにもかくにも自分は無事目的の店にたどり着き、そしてエロ本を購入することに成功した。
特に何事もなく本当に普通に買えたので、特に語ることはない。一緒に置いてあった少年漫画雑誌ふたつに挟んで誤魔化すという、我ながらこすっからい浅知恵となけなしの度胸を駆使し、なんとか苦難を乗り越えたのだ。完全勝利である。
ちなみにエロ漫画のようにえっちな大人のお姉さんの店員さんに見つかるとか、そういうのは一切なかった。
てか、あのシチュエーション現実に起こったら絶対ビビるよね。いかん、また話が逸れたな。
とにかくウッキウキで帰宅することになったわけだが、往復で4時間かかる道のりだったこともあり、帰路ではすっかり夕暮れになっていた。
色んな意味で早く帰らなければいけないという焦りもあり、全力でチャリを漕ぐ自分。
あと10分もすれば、家に着く。そこまでこぎ着けた時だ。
ゴンッ!
なにかに乗り上げた、と思った時にはもう遅かった。
自分はチャリごと、空を舞った。マジで空中で一回転し、天地が逆転して見えたことを、今でもよく覚えている。
ガシャン!という鈍い音とともにチャリは地面に叩きつけられ、自分もしたたかに背中を打った。
呼吸が出来ず苦しかったが、その前にまず自分は腹に手を当て、安堵した。
隠していたエロ本が無事だったからだ。ビニールごと腹にしまっていたので漕ぐのに邪魔だったし、かごに入れときゃいいだろと言われたらぐうの音も出ないのだが、そこはやはりエロ本を買ったことがバレたくないという羞恥心が働いたのだ。若さである。
幸い全身を擦りむいたくらいで大きな怪我はなかったものの、どうやら大きな石にチャリが乗り上げてしまったらしく、勢いよく漕いでたこともあってジャンプ台のように射出されてしまったようだ。
まさに一寸先は闇というやつである。いや、一応ライトで照らしてはずなんだけどね?
まぁ安いチャリだったのでそんな明るくなかったし仕方ないのだろう。
チャリのフレームは歪み、キコキコという嫌な音を立てていたし、全身が痛かったが、そんなことより自分はエロ本を一刻も早く読みたかったのでとにかくチャリを漕ぎまくり、なんとかかんとか帰宅することに成功した。
後のことはもう、語るまでもないだろう。
初めてのエロ本購入体験は未だにこうして語れるくらい、自分の脳裏に鮮明に焼き付いている。
勿論後生大事に取っていたのだが、十年以上前に実家が火事で全焼してしまい、購入したエロ本も炎の中に消えて灰となった。
そのことを惜しむ気持ちはあったが、その頃にはもうネットが全盛期を迎えており、紙の本に対する拘りは徐々に薄れていた。
月日の流れは記憶を風化させるということだろう。当時の本をふと購入したいなと思ったのもつい最近のことであり、ネットで調べたら普通に売っていたため古書店から購入し、懐かしさからついエッセイまで書いてしまったというわけである。
10年以上の月日が経ってなお、こうして当時の品物を購入出来るのだからやはりネットは偉大だ。
昨今ではネットの功罪に賛否が分かれる場面が多々あるが、こうして古い思い出の品とまた出会えるのだから、やはり自分はネットは良きものだと思っている。
ちなみに当時のエロ本を読んで「あ、これが自分の性癖を決めたな……」とちょっとショックを受けたりもしたので、初体験は慎重に行うことをお勧めします。
いや、本当に何の話なんだろうねこれ。てかここまで書いて思ったんだけど、この体験談って法律的にやっぱりアウトなのかな? 購入しただけならセーフ? 有識者の方は教えてください。アウトならエッセイ消すからマジでホント。
読んで面白かったと思えてもらましたら↓から★★★★★の評価を入れてもらえるとやる気上がってとても嬉しかったりしまする(・ω・)ノ