表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/12

お礼のデート?

突然そんなことを言われて驚いた俺は、体を引いて答える。


「な、何言ってるんですか」


そう言って目を泳がせる俺を見て、彼はふふっと笑った。


「冗談ですよ。僕はただ、あなたと友達になりたいんです」


「え?俺と友達にですか?」


「はい。なので、まずは今夜、食事にでも行きましょう」


彼の優しい笑顔のせいだろうか。さっきと変わらずデートに誘われている様に聞こえてしまう。


「それじゃあ僕、昼休憩終わっちゃうのでもう行きますね。19時頃、お店の前で待ってます」


余分にあげた分のお金を俺に渡し、彼は店から出ていった。これは行くべきだろうか。いや、僕が要望を聞いたのだから、行くべきだろう。そう決意して俺は業務に戻った。

そして約束の時間。俺が店の外へ出ると、彼は既に来ていた。


「すみません、待たせちゃいましたかね」


「さっき来たばかりなので大丈夫ですよ」


彼は笑顔でそう言う。初めて会った時は少し怖いと思っていたけど、意外とよく笑うようだ。


「じゃあ、行きましょうか」


「どこに行くんですか?」


「ラーメンなんですけど、大丈夫ですか?」


「はい、ラーメンは好きです」


「よかったです。それじゃあ、行きましょうか」


そして俺達はラーメン屋へ向かう。ラーメン屋に入ると、彼は俺を席で待たせて、慣れた手つきで水をついで持ってくる。


「ここ、水セルフなので」


「すみません、ありがとうございます」


「いえ、ラーメン、どれにします?」


彼からメニューを受け取り、ざっと見てみる。


「う~ん...いろいろあるんですね...」


悩んでいる俺を見て、彼は言う。


「僕のおすすめのラーメンがあるんです。」


彼はメニューをペラペラめくった後、指をさす。


「これ、とても美味しいんです。良かったら」


彼が指を指したのは特製豚骨ラーメンだった。


「これにします」


即決した俺を見て、彼はふふっと笑う。


「それじゃあ券、買ってきます」


「あっ、お金...」


彼は立ち上がり、財布を取り出そうとする俺の手を止めた。


「僕が払います。今日のこと、結構強引に決めちゃいましたし」


「いや、いいんですよ!これ、昼のお礼だし。むしろ俺が出すべきなんで、俺が出しますよ」


「僕が出したいんです。僕のわがまま、聞いてくれませんか?」


そう言って俺の目を見てくる。あまりにも真っ直ぐ見つめてくるので、俺は頷いてしまった。彼は券売機へ向かい、券を買って戻ってきた。


「あとは待つだけですね」


少し嬉しそうに彼はそう言う。


「あの、お名前なんていうんですか?」


友達になるのなら、まずは名前を聞くべきかと思いそう尋ねる。


「あっ、すみません!僕が友達になりたいなんて言ったのに自己紹介もしないで...僕、矢野衛二(やの えいじ)って言います」


「矢野さん...ですか」


「衛二でいいですよ、友達だし」


「あっ、そうですね、衛二さん。...あ、俺は土岐奏人です!呼び方はなんでも大丈夫ですよ」


「奏人くん、よろしくね」


手を差し出しながらそういうので私も手を差し出し握手をする。


「ここにはよく来るんですか?」


「はい、夜はよくここに来てます。ここのラーメン、すごく美味しいので。きっと奏人くんも気にいると思うよ」


「そうなんですね、ラーメン、楽しみです!」

そしてしばらく待つと、番号が呼ばれる。


「呼ばれましたね、行きましょう」


そしてラーメンをもって席に戻る。


「さぁ、食べてみてください」


衛二さんにそう言われて僕は箸を持つ。特製豚骨ラーメン。白いスープに麺が入り、チャーシューや卵が乗っかっている。とても美味しそうだ。俺は麺をひと口、ズーッと啜る。


「...美味い」


自然とそう出ていた。それを見て衛二さんも1口食べる。


「やっぱり美味しいな、ここのラーメンは」


「凄いですね、こんなとこにこんな美味いラーメン屋があったなんて...ずっとこの町に住んでるのに知らなかったです」


「僕もビックリしました。実は最近引っ越してきたばかりなんですけど、なんとなくラーメン食べたくてこの店入ったら、こんなに美味しいラーメンに巡り合えるなんて」


最近引っ越してきた。その事が気になって俺は聞く。


「最近引っ越してきたんですか?」


「はい、今年大学を卒業して就職したので、職場の近くに引っ越して来たんです」


「そうだったんですね...じゃあ家も職場もこの辺なんですね!」


「はい、奏人くんの家はこの辺なんですか?」


「あ、俺の家、きらくにの上なんです。」


「そーなんですね!なんか上にあるって思ったら、奏人くんの家だったんだね」


「そうなんです」


ラーメンを食べながらそんな会話をしていると、ふと昼の出来後を思い出す。きらくにの話をしたからだろう。俺は衛二さんに疑問に思っていたことを聞く。


「そういえばお昼のあれ、どうやってやったんですか?」


衛二さんはその質問でラーメンを食べる手が一瞬止まるが、1口食べ飲み込んだ後に言う。


「...いや、僕もよくわかんないです。意外と素直だったみたいです。あのYouTuberたち」


「そうですか...」


なんとなく気まずい空気が流れてしまい、俺は咄嗟に質問する。


「ランチセットA、いつも頼んでくれますよね!あぁいうシンプルなサンドイッチが好きなんですか?」


「あ、まぁ、それもありますけど...」


衛二さんは俺の目を見て、ニコニコしながら言う。


「奏人くんのおすすめなので」


そういえば初めて来た時、おすすめを聞かれてランチセットAをおすすめした。それにしても、そんな事サラッと言うなんて。俺が女だったら今頃惚れてしまっていただろう。


「そうですか...なんかありがとうございます」


「い~え」


そんな感じでしばらく話してラーメンを食べ終え、店を出た。


「今日はありがとうございました」


「いえ、こちらこそ奢ってもらっちゃってすみません」


「いいんですよ、また食事行きましょう、今度は別のところに行ってみたいですし」


「あぁ...そうですね」


別のところ。もしかしたら昼もきらくに以外の所に行ってしまうかもしれない。謎に不安になった俺はつい聞いてしまう。


「お昼も他のとこ行きたいとか思ったりするんですかね」


それを聞いた衛二さんはふふっと笑ってから答える。

「思わないですよ。お昼はきらくにでのんびりするのが好きですし。それに...」


そう言いかけて、俺の傍により、耳元で囁く。


「「奏人くんに会いたいので」」


その行動に痺れを切らした俺は、つい聞いてしまう。


「あの、衛二さんってよくタラシって言われません?」


それを聞いた衛二さんは、ふふっと笑う。


「そんな事、初めて言われました。僕、むしろ人に避けられるタイプなので」


確かにイケメンではあるものの、その鋭い目と目があったら誰でも距離をとってしまうと思う。本当はこんなによく笑う人なのに。


「あぁ...そうでしたか、なんかすみません。タラシなんて言っちゃって」


「いえ、いいんですよ。あ、そうだ!」


衛二さんはスマホを取り出す。


「連絡先、交換しません?」


「あぁ、そうですね!」


俺もスマホを取り出し、連絡先を交換する。


「これでいつでも連絡出来ますね。家まで送りましょうか?」


「あ、いえ!大丈夫です!では、また」


「はい、また。」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ