表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銘の者  作者: 笹暮崔
一章
5/31

5話 訓練開始

 

 時雨日々生(しぐれひびき)が、特課こと大阪府警特別対策課所属になって数日後のことだった。


 時雨は訓練を始めるため特課ビルに来いと、班長の流師善彦(ながしよしひこ)から連絡を受けた。


 時雨はエントランスに入ると管理人室に向かい、管理人と挨拶を交わした。


「お疲れ様です! 改めまして、特課第二班に配属されました、時雨日々生です。今日から訓練を始めます。これからよろしくお願いします!」


「お! 時雨君! 今日から訓練か、精が出るな! あんまり無理したらあかんで! 訓練場は地下3階にあるわ。行ってらっしゃい!」


「はい! ありがとうございます! 行ってきます!」


 時雨は昇降機に乗り、地下3階訓練場へと移動した。


 そこはスポーツの試合ができそうなほど広く、天井も高くなっていた。


(久しぶりにバレーボールしたいなあ)


 辺りを見渡すと、室内は無機質なグレーの壁に囲まれ、奥には人を模した訓練用の人形が用意されていた。


「お待たせしました」


 エレベーターから班長の流師が降りてきた。流師は相変わらず黒のスーツがよく似合っていた。


 流師の後ろには、黒のスーツを着た若い女性がいた。彼女の髪は顎の辺りで綺麗に切り揃えられ、表情は硬く、目はキリッとしていた。身長は女性の中では高く、170センチほどはありそうだ。とっつきにくそうな印象を彼女から受けた。


「流師さん、今日から訓練よろしくお願いします。そちらの方は?」


「顔合わせだけでもしてもらおうと思いまして、パトロール前に呼びました。彼女が私達二班の副班長です」


「特課第二班副班長の白南風喜己(しらはえきき)。よろしく」


 白南風は見た目の印象通りクールに話す女性だった。


「初めまして、時雨日々生です。精一杯頑張りますのでこれからよろしくお願いします」


「ヨシさん、顔合わせは済んだから私はパトロール行きますね」


 かなりドライな白南風の態度に時雨は少し困惑したが、これから親しくなればいいと自分に言い聞かせる。


「わかりました。ですが、白南風君。何回も言いますが、私のことは班長と呼びなさい。あと、夕方から雨の予報なので傘も忘れないように」


 白南風はコクリと頷く。


「時雨君、銘力の訓練はサボっちゃダメよ」


 二人の表情が一瞬曇ったのが、なぜか印象的だった。


「意外と優しい方ですね」


「はい。白南風君は少し冷たくみえますが優しい人です。今後、彼女と行動することもありますのでよろしくお願いします」


「班で常に行動するわけではないんですか?」


「事案の規模によって様々です。時雨君が単独で行動することは当分ないので安心してください」


「あの、僕が流師さんと二人で行動することも多いんでしょうか」


「何か不満でも?」


(この微笑み方は、圧力をかけられている……!)


「いえ! ありません!」


 流師の機嫌を損ねてはこれからの訓練でシゴかれかねない。時雨は流師に気持ちのいい返事をした。


「よろしい。それと、私のことは班長と呼んでください」


「はい! 流師班長!」


「流師班長ではなく、()()です!」


 流師は再び時雨に圧迫感のある微笑を向ける。


(なんのこだわりなんや……)


「はい、班長!」


 時雨がおとなしく折れると、流師から感じられた無言の圧はなくなった。


「よろしい。それでは早速訓練を始めます」


 こうして時雨の初訓練が始まるのであった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
いよいよ始まるんですね。時雨の次の人生が……! その先が楽しみです
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ