間話 ツーリング
時は遡り、これはリリッカーのたわいもない日常の一幕。
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「じゃじゃーん! ついにうちもバイクの免許取りました!」
「お前バイク嫌いやと思ってたわ」
「にいにのくせにうちのことなんもわかってないなー。これでやっっっと! みんなと念願のツーリングにうちも行けるで!」
「一緒にツーリングしたかったなら、言えば後ろ乗っけたったのに」
「え? 皐月、今なんて言った? バイクって後ろ乗れるん!? 横になんか変なんつけんでいいん!?」
「大型やからな」
「教習所で何習ってん」
「まーまー、響も言葉もそんな冷たく言わんといたりーや。これでつむぎも自分で運転できるからいいやんか!」
「嫌や」
「「え?」」
「うち、運転めんどくさい。後ろ乗っけて」
「あ? 運転できるんやから自分で乗れや、免許取った祝いに俺のお古やったるわ」
「にいにのお古なんか嫌や! 後ろ。後ろがいい! 乗っけて!」
「いくつやねん。ただこねるなや」
「ん」
響がつむぎに無愛想にヘルメットを投げ渡し、自身のバイクに跨りエンジンをかけた。
それを目にした言葉、皐月、来羅は、激しく視線を交差し合い、つむぎと響にバレないように口をすぼめた。
「ええん!? さすが響やわ、にいにと違って優しいわ〜。ありがとっ」
「ちゃんと掴まっとけよ」
「うん!」
つむぎは響の後ろに跨り、腰に手を回した。
響は恥ずかしそうにそそくさと急いでヘルメットを被る。つむぎの乗車を彼女の温もりで確認した響は、バイクを走りださせた。
その光景を後ろから見ていた三人は再度顔を見合わせて、何か企むようにニヤニヤと顔を綻ばせバイクの後に続いた。
「どうしたん? 大丈夫、響?」
「大丈夫や、危ないから手放すなよ」
「つむぎが重くて驚いたんやろ」
「コラ! にいに!」
インカムから聞こえた兄のヤジにつむぎは大きく身を捩り、拳をブンブンと振り回した。重心がブレたバイクは危なっかしくゆらゆらと走行する。
「おい、つむぎ! 後ろ乗ってんのに暴れるな!」
真っ暗な夜道を四つの赤いテールランプが楽しそうに伸びていく。
どこまでも、いつまでも。
五人の旅路は続く。
――あの頃は、皆がそう思っていた。




