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恋の啓蒙

 啓蒙は済んだ。

 隣を見てみるとそこには人に恋をする素晴らしさを知ったあどけない少女の顔があった。

 この世界が滅びようともこの顔だけは陰らせることが許されないとわたしは思う。

 とても綺麗な寝顔。この人にだけは、彩音にだけは真実を悟られてはいけない。

 この恋は運命的で偶有なるものでできた産物だと思ってもらわなくてはいけない。もしもこの恋が他人の手により作られた人工物だと知られれば、

 ――おそらく彩音はもう一生、人を愛することなんてできなくなる。

 わたしは部屋を見渡す。

 すべての元凶たる美玖と遥はいま部屋にはいない。おそらく上司か何かに定期報告をしているのだろう。

『大垣彩音にきっかけを与えた。だから明日は大丈夫』と。

 そう考えると、なんだかすごく寂しい気持ちになる。この世で最も美しいと思っていた人を想う気持ちというものが、すごくすごく軽薄なものになっているような、――バカにされているような。

 今まで誰かに抱いていた気持ちすべてがまがい物かのように断じられた絶望感。

 嫌だな。うん、嫌だな。でも仕方ないよね。

「彩音」わたしは彼女の顔をそっとなでる。「恋ってのは人を狂わせるんだね」


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