告白成功
結果が出るのは意外に早かった。あのディベートの翌日にわたしたちのライングループに美穂から連絡がきた。送られてきたのはピンクのハートをこれでもかと放出しているキャラクターのスタンプ。それだけで美穂が伝えんとしたことは分かった。わたしたちは絵文字やスタンプをフル活用して、美穂への祝福の感情を表した。美穂からもありがとうという言葉が返ってくる。そこから、美穂は告白の状況をデティール細かく話してくれた。キャンパス内の体育館裏にラインで呼び出し、『好きです。付き合ってください!』とシンプルに伝え、すると王寺は少し逡巡してから、『お願いします』と返したそうだ。今時の少女漫画ではもう描かれていないだろうベッタベタな告白だった。しかし、現実の恋愛の始まりなど元トップアイドルをもってしてもこんなものだ。今時の若者は恋愛に夢を見過ぎているから、奥手になってしまっているのかもしれない。もっと現実的に考えるべきなんだ。恋愛なんて最も現実を突き付けてくるイベントごとなのに。
ともあれ、付き合うことができて本当に良かった。今度会った時、もっと話を聞いてみたいな。
ハートマークが飛び交い、カオス化しているトーク画面を見てふと思った。
あれ、わたしってこんなにも恋愛に興味のある女だったっけ?
今までのわたしは他人の情事にとんと興味がなかった。中学時代では、初体験を済ませてクラスの女子たちから大人だともてはやされていた真由子の話も聞こうとしなかった。高校時代では、普通のセックスに飽きた美幸が興味本位で実践したアブノーマルセックスの話も聞き流していた。大学に入ってもその手の話はしていない。以前は自分でもびっくりするほどに恋愛というものに全くの興味がなかった。しかし、今となっては、友達の美穂の人生を狂わせた、そして歓喜させた恋愛というものにわたしは興味を抱いていた。