6話 清水小春視点②
果たして彼は自分がバイト終わった後でも待っててくれるだろうか。小春は不安になりながら彼にクーポン券と共にメモを手渡した。
「お客様、こちらのクーポンをどうぞ!」
彼は困惑した顔をしたもののクーポン券の下にある紙の存在に気づいたのか頷いてくれた。
そこからの30分はまるで記憶が無いくらい早く進んだ。
ロッカーにて彼は待ってくれるだろう、そう思い髪の毛の乱れを直す間も無く出る準備をする。
裏口から出ると彼がスマホを触りながら立っている様子が見えた。小春は駆け寄ると
「お待たせしてすいません、悠太さん!大学で全然見かけないし連絡先交換して無かったなと後から気づいて」
と矢継ぎ早に自分の言いたいことを一方的に話した。
彼は困った顔をしながら少し渋りそうな顔に変わりしかし私と連絡先を交換してくれた。
私は普段から連絡先を男性と(バイトであっても)交換したがらないので家族を除けば悠太さんが唯一スマホに登録されている男性 という事になる。
「用件済んだなら行くよ」
「はい、また連絡しますね!」
彼は背中を見せつつ後ろ手で軽く手を振ってくれた。
私はスマホにしっかりと山本悠太と登録されているのを確認するとニコリと笑みを浮かべて駅へと向かう。
その一時間後家の自室に帰宅した小春は早速連絡してみようとスマホのアプリを立ち上げた。
いきなり通話ボタン押しても迷惑だろうからメッセージで良いかな?
【今日はいきなり連絡先交換してって言ってすいませんでした】
送ってから良かったのかな?と悩んでいると
「いや、そんな事無いよ あれからどこか痛めて無いか心配だったし」
と彼から返信が来た。
迷惑に思って無いどころか私の事まで心配してくれてるなんて!
小春はその返信画面が映ったスマホを抱きしめベッドの上で1人転がった。
【私は大丈夫でした。またこうして連絡してもいいですか?】
「別に良いけど、大学で会ったら声かけてくれてもいいし」
【わかりました!じゃあまた!】
犬が敬礼しているスタンプを送ると会話はそこで終わりになった。
スマホをポンとベッド脇の机に置くとまた大学で会えたら良いなと小春は目を閉じて眠った。
次は悠太視点に戻ってお送りします。
28日0時更新予定です。