数谷先生の挑戦状<推理>
数谷先生から手渡されたプリントはご丁寧にも複数枚ほどコピーしてあって、「それを何人かで見ながら解けよ」という指示をされ俺と縁熊は数谷先生の挑戦状を無事に持ち帰ることになった。だがその暗号を見たクラスメートたちも「何だこれ?」と途方に暮れていた。
まずは数学が得意な一部のクラスメートたちは早速その数列(らしきもの?)を前に色々と憶測を口にする。
「……ダメだ。数字に規則らしい規則が見つからない……」
「5の倍数がやたら多いけど、3も比較的多いね……」
「っていうか、1と50ってかなり差のある数が含まれているのも謎だよ……」
全員があれこれ考えながら頭を抱える中、縁熊も同じように顎に手を当て「うーん……」と首を傾げている。男子生徒の数人はその、可愛らしい姿に目を奪われているようだが……あれこれ唸るクラスメートをよそに、俺もまた一応この暗号の中身について考えてみせる。
数谷先生はこの暗号を「これは挨拶代わりの暗号」「解き方がわかれば小学一年生でも読める」「他の先生たちには『簡単すぎる』ってブーイングを受けた」と口にしていた。「挨拶代わり」、というのはわかるが、「『小学生』でもわかる」のではなく「『小学一年生』でも読める」と断言できるのは一体どういうことだろう? それに、他の先生たちから「簡単すぎ」とブーイングされたぐらいだから大して難しいものではないはずだ。
それに縁熊が泣き落としで得たアドバイス、「『1』が最小で『50』が最大」……そこまで考えて、俺は咄嗟にスマホであるものを検索しそれをノートの断片へ殴り描きする。
「ちょっとさんしー、何やってるの?」
背中は後ろ手に、ひょこっよ顔を出してこちらを覗き込む縁熊に俺は今しがた自分が書いた表――五十音表を見せつける。
その五十音表と、自分が持つ数谷先生の「暗号」をしばらく見合わせた縁熊は「わかったー!」と声を張り上げた。