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縁熊エマのやる気と三四玲の憂鬱

「暗号解読の挑戦状! 解読した者にのみ渡されるお宝! これなんて推理漫画? こんな面白い行事やられてんのに、日和ってる奴いる? いねえよなぁ!!?」




 やたら大袈裟に、どこかのヤンキー漫画が言っていたような台詞でクラスメートを煽るのは縁熊エマ。腰まで伸びたサラサラの髪にくりくりの目、程よく色づいたぷるぷるの唇という絵に描いたような美少女。そんな彼女は、五月というまだ入学して比較的日が浅いこのクラスで既にクラスメートからの人気と人望をかき集めていた。


 美少女としての見た目をふんだんに発揮できる綺麗な所作と美しい佇まい、にも関わらず現れる突飛な行動と、たまに挟まれるどこかで聞いたことのある台詞。トドメに、「少しでも非日常的で面白そうなもの、特に『推理』とか『謎解き』とかいうものが大好きでそういうことに関わる出来事があれば率先してそれに首を突っ込んでいく」という行動方針。そんなちょっと不思議な個性キャラクターのある彼女は、学校という閉鎖的な空間の中に同じ年頃の男女を閉じ込めた環境の中でなぜか同性・異性を惹きつける人気者となっていた。




 ただ、同じ中学出身である俺――「三四玲」という名前を「それってゾディアック事件の340暗号と何か関係あるの!?」とキラキラした目で尋ねられた俺はちょっとコイツに苦手意識を持っている。




 クラスみんなの人気者である美少女に何かと絡まれるなんて、俺みたいな地味系男子には苦痛でしかないのだ。溜め息をつき、ありもしない学帽の鍔に手をやりながら「やれやれだぜ」なんて思っていたら縁熊はそんな俺を「ちょっと、そこの男子!」と指をさす。普段は「さんしー」なんてゆるキャラみたいなあだ名で呼んでるくせにいきなりなぜ「男子」なんだ? と聞きたくなる俺を差し置いて、縁熊は堂々と宣言する。


「まずは数学教師、数谷先生の『挑戦状』を受け取りに行くわよ!」


「は、え、でもなんで俺が……」


「同じ中学のよしみでしょ!? それに、さんしーだって結構推理もの読んでるしひょっとしたら何か気づくことがあるかもしれないじゃん。だら、まずは数谷先生からの挑戦状を受け取りに行くわよ!」


 GO! GO! と腕を振り上げれば縁熊の大きめの胸がユッサユッサと揺れる。その絶景に思わず男子たちが鼻の下を伸ばすが同時にその行動を向けられている俺へ小さな憎悪の視線を感じる。




(……これって、コイツに従わないと他の男子たちからヘイトを溜めるんじゃ……)




 俺は嘆息しながらも、縁熊の提案に従うことしかできないのだった。


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