今年も開催決定!『阿吽高校教師陣たちの挑戦状!』
「今年も開催決定!『阿吽高校教師たちの挑戦状!』君たちに、この暗号は解けるかな!?」
学内掲示板にこんな模造紙を張り出されると、生徒たちはにわかに盛り上がりわらわらとその内容を確認しに行く。
「阿吽高校教師陣たちの挑戦状」。それはこの阿吽高校に在籍していたとある教師が始めた、一応「学校行事」の体裁を保っているイベントだ。
内容は至ってシンプル。国・英・数・社・理の五教科を担当する教師がそれぞれ暗号を作り出し、それを読み解いた生徒のいるクラスに賞品が与えられる。
賞品のラインナップはその年の教師たちによる提案やサービス精神、お財布事情なども関わってくるが過去の前例だと「一日だけ職員室の冷蔵庫を貸し出すのでキンキンに冷えてやがるっ・・・!! 清涼飲料水を堪能できる」「好きな教科の小テストを一回免除してもらえる」など地味に豪華なものばかりなので児童たちはそこそこやる気を見せて頑張るのである。
一方の教師も、それなりの賞品を用意している以上決して手を抜くことはない。
早朝出勤、深夜残業は当たり前。昼休憩もあってないようなもので、部活顧問や児童たちの質問や悩み相談も乗ってやらねばならない。加えて相手にするのは「高校生」という多感で、面倒で、子どものくせに妙に大人ぶっているものだからやたら他人を見下したり色気づいたりしているような年代の連中ばかりだ。だから教師たちはそんなやりがいたっぷり、激務でブラックな仕事への憂さ晴ら……気晴らしにと必死になって暗号を作る。
だから、そこそこ難易度が高い暗号たちに児童たちは皆、必死に頭をフル回転させるのだが――今年はそれに、必要以上に気合を入れている生徒がいた。