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帰還した魔王は地球を侵略ス!!  作者: ナイム
異界侵攻

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第4話 侵略前の地球観光

「……だぁ~~~‼疲れたぁ…」



 書類地獄と格闘を始めて3日が過ぎてようやく緊急性の高い物の処理を完了した俺は声を上げ背もたれに体を預けた。

 なにせ目の前に会った書類の山は最初に比べて3つは減っているんだから、俺がどれだけ頑張ったかわかると思う。しかも書類の種類によっては他の部署に詳細の確認や修正が必要だったりするのだが、それが急ぎの書類だから俺自ら部署に行って早急に対処してもらって処理して…責任者の居ない部署ではそいつを捕まえてくるところからだし…本当に大変だった‼


 それが終わったのだから少しくらいだらけても許されるはず。特にルージュも忙しくて近くにいないから休むのなら今しかないしな。


「さて…今のうちに逃げるか!」


 と言う事でルージュがいつ帰って来るか分からないので、執務室から逃げることにして俺は全力で立ち上がると服装を魔王モードから日常モードに変えた。

 まぁようするに仕事服から私服に変えただけで普通にジーパンとパーカーなんだけどな。


 なぜ服装を変えたのかと聞かれれば単純だ…月面飽きた!なによりこの付近にいたら見つかるからな観光がてら地球に行くことにした。


「見つからないうちに行くか………はい、到着‼」


 どうやって移動したのかって?単純に魔法で東京の人のいないビルの屋上に転移しただけだよ。これでも魔王なので魔法は得意だから星間移動レベルの転移も簡単に出来る。

 ただ今はのんびりしてると連れ戻されるかもしれないから急いで移動を開始した。


「おぉ~!もう何年ぶりになるのか覚えてないけど、東京は相変わらず騒々しいな。もしかして今日は週末なのか?」


 気が付いたら異世界に居て数十だか数百の年月を過ごして元の地球の記憶は俺自身かなりおぼろげだったわけだけど、こうして改めて直に感じると徐々にだが記憶は戻って来るんだな。

 でも久々に来るのに楽しそうだから東京を選んだけど曜日とかもう覚えていないからタイミングを間違えたようで、想像以上の人ごみに少し酔い始めていた。


「…せっかくここまで来たんだし、少しは遊んでから帰らないと無駄になるし頑張るか~」


 最初に比べるとやる気が失せ始めてるけど久々に来たのに何もしないのは嫌なので頑張って観光を始めた。

 ただ観光と言ったが俺が向こうの世界に行ってから時間的には15年ほどしか時間が経っていない。正直言って何か新しい建物が少しは増えているけど、観光できるような建物はほとんどないので適当に美術館やショッピングをすることにした。


 まず最初に向かったのは東京の有名な電波塔だ。

 なにせ元々この世界に居た時にも来たことはあったけど徒歩で登る体力はなかったから。今の魔王となった俺なら登れると思ったから挑戦したかったんだよ!と言う事で入り口で少し注意を受けたけど問題ないので聞き流した。

 そしていざ登ってみると徐々に周囲の風景が変わっていく感じはエレベータで登るのとは違った面白さがある事が分かった。でも一つだけ人間だった時に来た方が良かったかな?と思ったのは疲労も何も感じなかったから、登り切っても達成感が少なかった事だけはちょっと残念だったかな。


 そのあとも昔は行けなかった所やできなかった事をしながら東京を回った。

 初めてパチンコ店にも入ってみたが5秒で退店した。想像以上にあの騒がしい音が辛い、ゲームセンターの音は気にならないんだがパチンコの音はダメだった。

 なので気を取り直してゲーセンで遊ぶことにした!なんか思い出したら行きたくなったから。


 ついでに言っておくと地球の金は今後絶対に必要に成る事が確定していたので、数年前から脱税だのしている金持ち達からそれぞれ毎日数万円ずつこっそり抜いておいたのだ。

 もちろん回収した分では足らない事も考えて地球でも販売可能な形に加工した貴金属品もあるから、いざとなれば少し不審に思われるかもしれないが売ればいい。


 それよりも今はゲーセン巡りだ!本当に久々だから楽しみで仕方ない。


「おぉ~!ユーフォ―キャッチャーだ‼懐かしい…」


 本当に数百年ぶりのゲーセンの光景に俺は思わず涙を流しそうになったが、どう考えてもゲーセンで泣く奴はやばい奴にしか見えないので堪えた。ただ向こうの世界でも機械の再現自体はできているし、なんなら向こうでも現地人異世界人問わず人気施設の一つとなっている。

 それでもやっぱり直に地球の実際に言った事のある本物を見ると感極まるものがあったのだ。


「っと、何時までも入り口に居ても時間の無駄だな。せっかくだから楽しまないとな‼」


 いろいろ複雑な思いはあったけど今は何よりも久しぶりの本物のゲーセンを楽しむために行動開始だ。

 結論だけ言えばゲーセンの定番と言うか…何と言うか…ろくに景品も取れずに原価以上の出費をする事になった。


「ふぅ……久しぶりだと難しいな」


 などと黄昏てみたがユーフォ―キャッチャーに5万は言い訳出来ないよな。やっぱり辞め時と言う物が分からなくなるのは危険だと理解したので、次は別のコーナーに行くことにした。

 次に向かったのは賑やかな音楽が鳴り続けて他の客がプレイ中なのかバンバン!と何かを叩く音のする音ゲーの多数並ぶ場所だ。耳に入ってくる音楽のいくつかは聞いたことがないから最近出てきたものだとわかるけど、ほかにもはっきりと聞こえる聞き覚えのある歌にはやはり懐かしくなってしまうな。


 何故今回この音ゲーをやりに来たんかと言うと、音ゲーと言うジャンルだけはどうしても俺達でも再現できなかった分野だったからだ。

 簡単な話として聞いたことのある歌を歌詞まで含めて何もかも記憶していることは不可能だという話だ。人間をやめた今なら可能だとは思うけれど、その前の普通の人間だった時の俺達には土台無理な話だった。

 なので特にプレイしないで歩き回るだけでも十分に楽しめているのだけど、せっかく来たから2・3回はプレイしてみたい気もするので手ごろにやりやすいのを探して歩き回っていた。



 しばらく歩くとまたしても懐かしい太鼓の形の機体を見つけて迷わずに選択した。

 いや、ここまで懐かしいものが形も変わらずに残っているのを見つけたら、やらないというのは逆に失礼な気がしてしまうのは仕方ないことだろ。

 ただ始めて4曲目くらいで止めた。だって反応速度で全部簡単にフルコンボを出せるゲームはだめだと思うんだよ。


 なにより頑張って作ってくれた制作者の人達に失礼だと思った。

 ということでゲーセンもそこそこ楽しんだので別の場所に向かう事にした。


 そこは地球ではなんて事のないファストフード店でメニューにはハンバーガーやポテトが並んでいる、極々一般的なハンバーガーショップだ。

 しかしハンバーガーやフライドポテトも向こうの世界での再現が難しかった。

 まずは香辛料が貴重品で味付けの再現には莫大な金が必要で下手な高級料理のような値段になってしまったのだ。


 他にも中世程度の文化水準の世界だったのでジャガイモを食べる習慣自体がほとんどなく、ようやく見つけた時も数か所の村で細々と生産されていた程度だった。しかも地球の芋とは違って専用に品種改良もされていないので味や触感でどうしても数段下だった。

 だからこそ地球に帰ってきたら絶対に食べたいと思っていたんだ。


「えっと、メニューの上から順にバーガーとデザートを全種類とポテトのLサイズを10個、お持ち帰りでお願いします!」


「う、承りました!」


 本当に数百年ぶりくらいなので一切手加減なしに注文したので店員の女の人は少し戸惑っている様子だった。

 でも、本当に食べたくて仕方ないので自重する気は欠片もない。


 しばらく待っていると奥で店員達が忙しく動き回って調理してくれているのが見えて、さすがに罪悪感がちょっとだけ沸いてきたが目の前に注文した品が並ぶとどうでもよくなった。

 さすがに今回も涙を流したり変に感動して不審者に見られないように自重して、冷静に頑張って料金を払って受け取って人通りの少ない通りに行った。


「よし、監視カメラにも映ってない場所だな。戻ろう」


 万が一も考えて周囲を見回して人や監視カメラの死角であることを確認して月へと戻ることにした。

 そして自分の部屋に戻ってからはバレてないことを確認して………


「「………」」


「おかえりなさいませ魔王様」


「あ、うん、ただいま…」


「で?」


「……すみませんでした」


 もはや俺よりも魔王感を漂わせるルージュに恥も何もなく土下座して謝った。ここで下手に反抗すれば殺される!と本能が訴えてきているから。

 なにより過去の経験上、ルージュは上司であろうと容赦なく処刑…ではなく仕置きを実行するのだ。というか実際にやられたことがある。


 二度と御免なのでプライドもなにも捨てて謝罪するのだ。


「…はぁ…買ってきた物を私にもくれるのなら許しましょう」


「ならポテトとバーガーなんだけどいいかな?」


「いいですよ。私も久しぶりに食べたいですし、ただ食べたら仕事しっかりしてもらいますからね?」


「はい、ちゃんと仕事します…」


 やっぱり仕事からは逃げられなかったけどお仕置きは回避できたからひとまず安心。

 そして約束通り買ってきた物を広げて窓から見える地球を眺めながら楽しむ。


「やっぱり美味しいですね~」


「だな~最近は技術的にも作れるようになったけど、最初のころは辛かったな…」


「本当ですね…」


 なんて少し昔の事を思い出しながらしみじみと食べ続ける。

 少し俺やルージュの目から涙がこぼれたような気もするが、きっと気のせいだろう…




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