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帰還した魔王は地球を侵略ス!!  作者: ナイム
異界侵攻

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2/13

第1話 侵略拠点は月⁉

ゲートを意気揚々と進み出た先で俺達が最初に目にしたのは…何処までも澄み切った青い美しい地球の姿。


「いや~地球は青かったって言葉よく聞くけど、こう見ると本当だったんだなぁ」


「そうですね。まるで宝石のようです」


「これだけ大きな宝石あったらいくらに…って、なんでゲートの出口が月面なんだよ⁉」


 思わず目の前に広がった光景に現実逃避していたけど地球に繋がるゲートを作ったはずなんだが、どうなってんだ⁉と俺が後ろのルージュに振り返るとこれまたおなじみの呆れた表情で溜息を吐かれる。


「はぁ…ノワール様が『人間に見つかると人が集まってめんどくさそうだな。そうだ!月面なら誰もいないしちょうどいいじゃん!俺達なら空気無くても問題ないし!』と言って出現場所を決めたんでしょうに…」


「あ…」


 言われてようやく思い出した。あの時は人に見つからない場所にゲートを出そうと地球の情報を確認していて、そんな状況が何ヵ月も続いたもんで疲れてて最後に投げやりに決めたんだった。

 いや、でも俺にも言いたいことがある。


「あれは軽口とか冗談とかの部類だろ?まさか本気で月にゲートつなげると思わないし、なによりなんで()()()()()()()()()()()()()?」


 俺が一番なにに驚いたかと言われれば目の前の地球にではなく、ゲートの裏に広がる月面都市の方だった。確か最初の計画ではゲートで俺達が来てから基地や町を作る予定だったはずなのだが、すでに一つの都市レベルの建造物が完成していてしかもまだ建築中なのだ。

 外観は地球基準で近未来とかSFとか言われる宇宙基地なんだけどな。


「何でと言われましても、当初の予定で行動すると私達の住居が出来るのに時間がかかってしまうので先遣隊を送りだし、先んじて居住が可能な建物を建築させておいただけの事です。さすがに私も、ここまでの物が出来ているとは思いませんでしたが…」


「あ、そこはルージュにも予想外なのか」


「はい、おそらく先遣隊に参加した地球出身の者が悪ノリしたのでしょう」


「まぁ…そんなところだろうけど、これはやりすぎじゃないか?」


「確かにそうですね…これはちょっと、本気で地球からの隠ぺいを考えないといけませんね」


 そうルージュが重々しく言うが俺も心の底から隠蔽には賛成だ。なにせ今目の前に広がっている建造物は何処かのSF作品に出て来る宇宙船のような月面都市なのだ。建物全体に機会が組み込まれているのが光が所々で明滅しているし、これは地球の科学知識と向こうの世界の魔法技術の融合で完成した俗称だが『空想魔科学』と呼ばれる技術によって作られている。

 この『空想魔科学』と言う呼び名は気が付いたらそう呼ばれるようになっていたんだが、これは地球出身者達が”空想上に出てきそうな超技術”という安直な発想から呼び始めたものだ。


 しかし安易な名前でも実に的を射ていて、この技術体系が作られてからの俺達の発展は怖い程の速度だった。なにせ一年前はレンガ造りだった魔王城は翌年には魔タングステンと言う魔力とタングステンを混ぜた超合金で作られ、最新のシステムによって入城管理がなされて不審者は侵入できなくなっていた。

 他にも農業は室内の大規模農業プラントが作られ、中では気温はもちろん天候・地質・益虫etc.とにかく農業に有益な物を完全管理して最高品質の野菜を大量に安定生産する事ができるのだ。


 更にはそれと似たようなシステムで魚・食肉・養蜂などにも適用されていてすべての生活必需品が常に安定供給されるようになっている。

 なので俺としてもこんな感じの物をゆっくりと作っていくつもりだったのだが…


「これは何か新しい事も確実に試してるよな?」


「まず間違いなく…」


 俺とルージュの2人が確信してそう言えた理由としては単純にここまでやった奴らが手抜きをするはずがない!と言う確信からと言うのが一つ、そして一番の理由としては目の前の月面都市の中央にそびえ立つ見覚えの欠片もない巨大な電波塔のような建物だ。

 確かに最新設備を詰め込んだ魔王城にも通信や結界用の塔は存在するが、あそこまで近未来的なデザインの物は見た覚えがない。


「また面倒な事やってるんじゃないだろうな?」


「はぁ…ここで文句を言っていても仕方ありません。これ以上何かやられない為にも、早く行って()()()()()()()()()()


「あぁ…今回ばかりは庇うつもりは俺にもないぞ」


 いつもは俺も悪乗りするから庇ったりもするけど、さすがに今回は好き勝手やり過ぎだ。なにせ俺とルージュ以外の来た連中は後ろで動けないくらいに驚いて固まっているからな?この状況をどうしてくれるんだ。

 意気揚々と入って来て何も聞いてないこの状況では俺達だって対処のしようがないっていう話だよ。


 なので俺とルージュの2人に加えて、比較的まだ冷静だった数人を連れてまだ建築中の建物へと向かった。


 向かった場所では、現在進行形で工事が進んでいて様々な種族の者達が作業をしていた。

 その中を見回すと複数人が集まっている場所を見つけて俺とルージュは頷き合ってそこへと速足で向かう。


「やぁ~みんなずいぶんと楽しそうだね?」


「「「っ⁉」」」


「あ、魔王様…」


「ノワール…さん」


 思っていたよりも俺の到着が早かったのか何かの話し合いをしていた面々は揃って動揺していた。もっとも半数ほどは俺の後ろ、つまり今もニコニコ笑いながら立っているルージュの方に対して顔を青くさせていた。

 その気持ちには激しく同意できるが今回は俺も庇うつもりはないからな。


「さて、工作部隊の副隊長さん?」


「え、あ…はい」


「なんでこんなものを作ったのかと、あのアホは何処に居る?」


「いや、えっと…」


 さすがにルージュに尋問させると可哀想なので、俺が率先して確認しているのだ。

 その事が分かるからこそ工作部隊の幹部の者達は俺に縋る視線に無言で見つめて『早く答えないと、後ろの奴と変わるぞ?』と言う意思を伝えると副隊長の男は顔いっぱいに冷や汗を浮かべて話し出す。


「シロイ隊長は…総合タワーにシステムを仕上げに行ってます…」


「総合タワーって言うのは、あのバカデカイ物の事でいいのか?」


「は、はい」


「わかった。とにかくアイツから話を聞くまでは処分は保留にしておくが、今後は自分勝手に建築するんじゃないぞ。分かったか?」


「わかりました…」


 居場所も聞いて最後にくぎも刺したので副隊長がうなだれているのを横目に俺達は中央にあるタワーへと向かう。

 そこにあるのは本当に巨大で幅だけでどっかの競技用ドームほどの広さがあって、高さも空気のない月ならではの光の屈折がどうのとかで距離感が図り難い程にはっきりと見えるが、それでも異様に高いと認識できるレベルで高いのだ。

 そんなタワーのふもとから見上げていた俺達は周囲を探して入り口を探すと、すぐに『正面入り口はこちら!』とファンシーなデフォルメされた蝙蝠が方向を指す案内版が立っていた。


「なんだろ、すごくありがたいはずなんだが…なんかムカつくな」


「同意ですね。まったく迷惑な事をしている実感がないようですね…これは特別コース決定かしら?…」


「……」


 ルージュの最後の呟きはちゃんと聞こえていたが指摘しても藪蛇なので反応しない。ただ言えることは『あいつ死んだな…』という一つだけだ。

 その後も所々に用意されていた案内板に従って最上階へとエレベーターを使用して上がって来た。

 降りた俺達の目の前には月面都市を一望できる展望台で遠くには綺麗な地球の姿が見えて、まさしく幻想的な光景と言えた。


 そんな展望台の隅の方で設計図を広げている頭から羽を生やした男が一人立っていた。

 俺達はそいつを見つけると無言で近寄り肩に手を置いた。


「…?おぉ~~!これはこれは魔王様に宰相殿!何かありましたか?」


 こちらを振り向いた男は嬉しそうに笑顔で何かあったのかと聞いてくる。そんな彼は綺麗な茶色の髪を適当に短く切り煽ろえて、眼は琥珀のような色をしていてハッキリ言ってイケメンの部類に入るフクロウの鳥人族だ。名前は『グラウス』で彼は召喚者ではなく転生者らしいのだが、地球の時の名前などの記憶は憶えていないらしい。

 そんな彼は優秀な設計家なのだが今回はさすがにやり過ぎたな。


「はぁ…何かありましたか?じゃないんだよ!」


「え?」


 のんきに話しかけて来たグラウスに俺が苛立ちをぶつけるように怒鳴ると、彼は理解できないように唖然としていた。だがここは俺が集団の長として責任を持って怒らないと、そうしないと…後ろの悪魔にこいつが本当の意味で廃人にされかねないからな。


「え?…ではない。確かに地球のかんこ…ではなく侵略に当たって月に拠点を作る予定だったが、誰が都市を勝手に作って良いと言った?」


「あぁ…それは…何と言うか…」


「まずいと思うなら最初っからするんじゃない!」


 なんだから怒っていて子供を叱る親のような気持になって来た。なんでこんな事でこんな気持ちを味わないといけないんだろうか…そんな空しさも含めて目の前のグラウスに責任を取ってもらうとしよう。

 と言う事で今までにないくらいグダグダと説教をしてやったら、終わるころには何故かグラウスの目が死んでいた。


「なぜこいつはこんな表情に?」


「はぁ…気が付いてなかったのですか?」


「なにが??」


 何故か呆れたようにルージュに言われるが全く心当たりがない。

 そんな俺の様子に更にルージュは疲れたように溜息を漏らしながら説明してくれた。


「はぁ……久々に怒ってテンションが上がっていたのか知りませんが、魔力が少し漏れたんですよ。しかも声に乗せるもんだから、防御できる者以外は皆放心状態になったんですよ」


「え…あ⁉まじだヤバイ!」


 そう言われて俺が自分の体を確認すると確かに魔力が微弱ではあるけど漏れていた。俺は魔王と名のれるだけには魔力が多く意識していないと体から溢れてしまい、しかもその魔力が濃度が高いとかで周囲に悪影響をだしてしまうのだ。

 今回は比較的魔力に抵抗の強い部下達の前だからよかったけど、一般人の子供や老人だと最悪ショック死の可能性すらあるのだ。


 そのため普段は完全にコントロールしているんだが、感情的になるとどうしても操作が緩んでしまう。


「本格的に装備考えた方がいいかもな」


「以前からそう言っていたでしょうに…」


「はいはい、わかってますよ」


「はぁ…それでこの月面拠点はどうしますか?」


「うん?こんだけの規模の物を放棄するわけにもいかないし、このまま続行するしかないだろ。一応後で名前決めないとだろうけどな。この規模の街で名前が無いのは不便だ。他にも地球から観測されないように隠蔽と移住者も募ってみるか?向こうでの宇宙開拓のテストケースとして使えるかもしれないし…」


「それはいい考えですね。都市の名前については後程連れて来た者達にでも、候補を絞り次第投票で決めてしまいましょう」


「その方向で頼む…はぁ、こっちに来たらゆっくりできると思ったのにな…」


 予定外の展開に元々決めていたのんびり地球観光は延期になってしまった。

 その事を残念に思いながらやる事が増えてしまったので真剣に取り組むことにする。なにせ後ろのルージュがすでに仕事モードにスイッチが切り替わってきているので、今さら休みたいなどと口が裂けても言えない。

 …地球に観光行けるのはいつになるんだろうな。

 

 


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