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帰還した魔王は地球を侵略ス!!  作者: ナイム
異界侵攻

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第11話 しわ寄せは次々と


 昨日から始まった地球への魔法の種子の散布。

 そして混乱が起きる前に仲間の家族や恋人などの大切な人達も保護だが、こまごまとした問題は起こったが概ね順調に進んでいる…と言う報告書を朝食と共に受け取った。

 現在は保護の完了した人々の数を確認して途方に暮れているところだ。


「ちょっと考えなしに安請け合いしたか?」


「そうですね。正直、私もここまで多いとは思わなかったわね」


「だよな~これ、1人で最低3人くらい大切な人いないか?多い奴だと10人いてもおかしくなさそうだぞ?」


 つまみ上げるようにして見た書類には地球出身者の人数と保護対象の人数が書かれている。だが保護対象の人数が圧倒的に地球出身者よりも多いのだ。

 しかも単純に2倍とかではなく3~4倍と言ったほどに多く、よく確認せずに許可したためしわ寄せが現在進行形で来ていた。


「現在の保護率は38%ほどですが、予定していた保護区では不足しそうなので建設途中の区画を急いで仕上げるように命じておいたわ」


「それは本当に助かるな。ついでに、食料生産所の拡張も命じておいてくれ。他の生活必需品は今の生産率でも賄えそうだからな」


「わっかったわ。それと予想通り発生した離反者達が指名した保護対象者はどうするの?」


「あぁ~それもあったか…」


 工場への装置の設置に出ていた隠密部隊からの報告で離反者?と呼ぶべき者達が出てしまったのだ。予想通りではあったが、問題なのは離反者が保護申請していた者達まで保護してやるべきかどうかである。

 正直に言ってしまえば余裕はあるので保護しても問題はない。


 しかし裏切った者の知り合いまでを保護するのは心情的にはアウトだろう。


「ひとまず保留だな」


「意外ね。貴方なら同情もせずに切り捨てるかと思っていたわ」


「そうしてもいいけどな。今回の件は裏切りと言うには微妙だし、他のメンバーからも同情的な意見が多いからな。こんな中で厳しい判断は逆効果だろうから、まずは少し落ち着いたころで件の奴等に話を聞いて再発の可能性の有無がわかれば、そこで判断する」


 最後には切り捨てる事になるかもしれないが、今後を考えれば必要なことだと割り切れる。別に地球侵略と言う観点からだけで言うなら、ここまで厳しい判断は必要はないのだけれど向こうの世界の統治も考えると妥協はできないのだ。

 その事をルージュも理解できているから文句を言うことなく真剣な表情で頷いていた。


「では、次はこちらの原稿を覚えてください」


「え、この流れで原稿?」


「はい、別に真面目な話をしたからと言って仕事はなくらないですからね?」


「その無駄に丁寧な口調…マジじゃん」


 このルージュは異様に公私の区別をはっきりしているタイプで、他の誰かが居ればこうして真剣な口調や表情を心がける傾向にあった。そして他にも絶対に妥協を許さない仕事の時なども無意識に口調が仕事モードに切り替わるようになっていた。

 という事で、余計な事は言わずに目の前に出された原稿を確認する。


 そこにあったのは『保護対象への事情説明会』とタイトルが書かれていた。


「これ俺がやるの?」


「そうですよ。正確には録画でもいいのですが読み上げるのは世界の頂点である魔王陛下でなくてはいけないのです。主に体面的な問題で」


「あぁ~そういうことか」


「はい、なので昼までには暗記しておいてください。夕方には映像の収録をしますから」


「ちょっ!?そういうことはもっと早く言ってくれないかな‼」


 慌てて時間を確認すると、すでに時計には『10:35』と表示されている。

 つまり残された時間は1時間と25分で覚える原稿は400文字用紙で30枚以上、これ無理だよな?


「うん、無理!」


「無理ではなく、やってください」


「いやいや!無理だろ‼おれは天才でもなんでもないんだぞ⁉」


「知っています。でも、やってください」


「いや、でもさぁ~」


「………」


「あの、本当に無理なんです…けど」


「………」


「だから、その……」


「「………」」


「やります」


「はい!頑張ってください」


 よく漫画とか小説で無言の圧に耐えかねるシーンを見て俺は常々『ただ黙ってる相手に怖がりすぎだろw』と思っていたが、実際に体験してみると表現のしようのないほどの圧力と恐怖を感じるものだとルージュのおかげで再認識できたよ。

 と言った感じで1時間少々で原稿を暗記しないといけなくなった。


 俺は物語の主人公のようなチートな知力は持っていない。

 一応チートと呼ばれるような力はあるが、記憶力に関係のない力なので本当に自力で覚えないといけないのだ。しかもレベルだのステータスだの力はなかったので、知力が後天的に強化もされないんだから異世界もそこまで上手くは回らないものだ。

 なんて不満を抱きながらも必死に原稿を読んでできるだけ記憶していく。


 必死に記憶し続けても1時間弱では半分も覚える事はできなかった。


「まだ全然覚えられてないじゃない」


 そして時間になり迎えに来たルージュにあきれ果てられている。

 無性に納得できないのだが、そんなこと言ったら余計にめんどくさい事になるから何も言わない。でも態度には出てしまうのは仕方ないよね。


「何か文句がありそうだけど、聞かないわよ。仕方ないから夜までに撮影の時間を延ばすから、今度こそ覚えて気でくださいね?次はありませんよ」


 そう言い残して自分の執務室へと戻って行った。


「はぁ……なんで、あんな奴を相棒にしちゃったのかな~俺」


 今までにも何度も考えてきたが答えは単純で『有能だから』だ。


 国どころか世界1つを支配・管理する。

 そんな事のサポートは並大抵の者では熟す事すらままならない。

 実際に完全に世界征服してからルージュの負担軽減のため専属の秘書を付けたこともあったが、次の日には『使えないからクビ』と全員が解雇されてしまった。

 さすがに補佐はできなかったが優秀な人材だったので、首は撤回して他部署へと転属させるように手を回して置いたけどな。


 そんなこんなで新しい人材は雇用しても次々に辞めさせられ、人材育成を促進してもルージュには勝てなかった。という事で、変えたくても変えられないのが現実なんだけど…もっと優しい人がいいな~と思ってしまうのは仕方ないだろう。

 なんて思ってるとルージュが戻ってきた。


「あ、それと机の上の書類は今日中に処理してくださいね。そうじゃないと今後の動きに致命的な支障をきたしますから」


「え、ちょっ」


「お願いしますね?」


「…はい」


 有無を言わさない圧を放つルージュに勝てる気がしなくて仕方なく頷いた。

 なにせルージュの目は何処までも冷たく『自分のやったことの責任は取ってくださいね?』と言って来ているようで、言い知れぬ恐怖があった。


「はぁ……自業自得なのは確かだしな…」


 一番の言い返せなかった理由はこれだ。

 現在の苦しい状況は俺が予定を繰り上げした事が原因で、そのしわ寄せが一斉に襲い掛かっているだけだ。


「ははは……あぁ~」


 それが分かっているからって気分が上がるわけではないけどな。

 でも現実的な問題として、早く処理しないと本当に徹夜させれられる可能性が高いけど確実にやらされるだろう。

 あれは世界を統一したばかりの頃、まだ事務処理に慣れていなかった俺が仕事が進まずに書類などが溜まっていた。しばらくしてルージュが俺の執務室に数人の部下を連れてやってきて…


『これから部屋を封印します。仕事が終わるまで何があろうと解除する事はありませんので、ご理解ください』


『え、ちょっと!?』


『それと私の魔法でこの部屋では睡眠をとることができないようにしますから。存分に仕事に集中してください』


『あっ……』


 と、何かをいう前に部屋を封印されてしまって1週間以上閉じ込められた。

 しかも睡眠をとらなくても活動できるように魔法を掛けられてしまい眠れない、休憩を5分以上取ろうとすると封印内にルージュの声が響いて注意をされる。

 その注意を無視すると封印内の俺をピンポイントに狙った電撃が飛んできた。


 そんな封印をされた室内で1週間生活させられ、外に出た時の俺は動くことすらままならないほど精神的に疲弊していた。


『お疲れさまでした。今後も仕事を溜めすぎないようにお気をつけて…』


 動くことのできない俺を見下ろしながらルージュは冷たく言い放ち処理済みの書類を持って去って行った。

 なんてことが過去に何度かやられているので、しかも今回は完全に唐突に計画を前倒しした俺が悪いからな。仕事が遅れたら今まで以上に厳しくやられる…確実にやられると断言できる。


「自業自得もいいところだなぁ~」


 我ながら思い付きで動きすぎたかな?とは思うからな。

 後悔はしていないけどこうして自分が苦労するんだから、今後は少し気を付けようと決め、今は目の前の問題に集中する事にした。死ぬ気でやれば今日中に終わるはず!










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