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宇宙人(エイリアン)ってパンツ履いてんのかよ!? その2

 もしあの夢が現実で、あのあときゃとるなんとかされて道路に放り出されたんだとしたら、説明がつく。

「そのきゃとるなんとかをされると、どうなるんだ?」

 尋ねると、田所は頬張ろうとしていた大きな唐揚げをご飯の上に置き、瞳を輝かせる。

「珍しいね! カオルの方から聞いてくるなんて」

「いや、それが……」

 田所なら、多少ぶっとんだ話でも信じてくれるだろうか。それとも、馬鹿にするなと怒るだろうか? 証拠もないし、後者かもしれない。

 言い淀んでいると、教室の扉が勢い良く開き、クラス中の視線がそこへ集中した。俺や田所も食事の手を止め、扉を開けた人物を見やる。すると、なんとそれはーーーー

「マジかよ!?」

 思わず、大きな声を上げてしまう。

 しかし、教室はすぐにそれ以上の喧騒で上書きされ、大騒ぎになった。

「すげぇ!」「モデルさんみたい!」「めちゃくちゃ美少女じゃんか!」「付き合いてぇ」「無理だよお前じゃ」

 透き通ったオレンジの瞳に、腰まである長い緑の髪をなびかせて現れたのは、なんと今朝俺が助け出したあの美少女だった!

 そのシルクのような白い肌やモデル、それもグラビアアイドルのような体型にクラス中の男子たちの無遠慮な視線が注がれる。すでにこの学校の制服を身に纏っている(しかも超ミニスカートだ)その美少女はクラス担任に連れられ教壇の上に立つと、チョークを握り、黒板に名前を書き始めた。

 どうなってるんだ? やっぱり今朝のあれは夢じゃなかったってのか!? でも、何度見返しても髪の毛はスライムみたいに溶けてはいない。緑色なのと、瞳がオレンジなのはそのままだけど、アニメキャラにもそうそういないようなその配色を突っ込む奴はいなかった。

「カオル、知り合い?」

 俺のリアクションを見てか、田所が羨ましそうに尋ねてくる。

「いや、知り合いっていうか……」

「転校生の水原(みずはら)恵美(えみ)です! エミりんって呼んでね」

 言いながら、可愛げにウインクするエミ。普通の女の子がやったらぶりっ子だなんだと気持ち悪がられそうなものだが、エミがやるとこれ以上ないくらい様になっていた。歓声が上がり、ゴールが決まったサッカーの試合会場のような盛り上がりを見せる教室。

 俺はというと、軽くパニック状態だった。

「すごい美少女だね。作り物みたい」

 ご飯の上にキープしていた唐揚げを再び頬張ろうとする田所に、俺は真剣な顔でつぶやく。

「本当に、作り物かもな」

「え?」

「ちょっと来てくれ」

「あ、ちょっと! 唐揚げが……」

 田所の手をひき、俺たちは教室を飛び出す。田所の箸から大きな唐揚げが落ちてしまったが、そんなことには構ってられない。

「どうしたの? 今日のカオル、ちょっとおかしいよ?」

「ここじゃダメだ! わけはあとで話すから、とにかくついてきてくれ」

 転校生を一目見ようと人だかりができ始めている廊下を駆け抜け、俺たちは二階の校舎の隅っこにある男子トイレに向かった。

「よし、誰もいないな。ここなら大丈夫だろう」

 鍵がかかっていない個室も一つ一つ開けて中を確認して、念のためすりガラスの窓を閉めて切り出す。

「田所、信じられないかもしれないけど、聞いてくれ」

「う、うん」

 田所は俺の目を見るなり、真顔で深くうなずいてくれた。


「ーーーーと、いうわけなんだ」

 今朝、俺の目の前に落ちてきた円盤型のUFO、中から現れたエミと名乗る美少女、そして突然襲ってきた睡魔。俺はキスされたこと以外のすべてを田所にぶちまけた。田所は怒ることも笑うことも、疑うこともせず、静かに相槌を打って聞き入った。

「……信じられない、よな?」

 話し終え、田所の顔色をチラリとうかがう。

「信じるよ。カオルは、オカルトマニアの僕のこと、馬鹿にしたことなんてなかったじゃないか」

「本当か!? 信じてくれるのか? 良かったぁ」

 とりあえず、これで一人心強い味方ができた。胸を撫で下ろしていると、締め切ったすりガラスの窓が、コンコン、と叩かれた。

「え?」

 ガラガラガラ、とすりガラスの窓が開けられ、上からひょっこり顔を出す逆さまの美少女。

「お、お前は!?」

「カオル! 奇跡の美少女、エミりんだ・ぞ♡」

「嘘だろ? ここ、二階だぞ!?」

「嘘じゃないよ」

「たどこ……田所!? お、おい、しっかりしろ!」

 嫌に静かな田所の方へ振り向くと、なんと壁にもたれかかって気絶していた。

「ふーん、田所くんって言うんだ」

 エミは逆さまのまま窓枠を両手でガシッとつかむと、でんぐり返しの要領でくるっと一回転して男子トイレに降り立つ。超ミニのスカート丈でそんなことをするもんだから、一瞬赤と白の縞パンが見え、視線が釘付けになる。

「どうかした?」

「いや、どうもしない、けど……」

 やばい、完全に逃げ遅れた。

 さっきは遠目だったらから気が付かなかったけど、よく見るとこの子の前髪から出てる二つのアホ毛、先端がチョウチンアンコウのそれみたくふくらんでる…… やっぱり間違いない、このエミとかいう女の子はーーーー

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