第九話 「恋叶海岸」
第九話 「恋叶海岸」
「祭！！」透が祭の肩に置いた両手に力をこめた。
「痛いよ。透、なんなのよ！！」そう祭が言って透の両手を振りほどいた・・。
そして祭は海をまた見ている・・。そんな祭をじっとまた見つめる透
「・・・さっきから何？言いたいことがあればはっきり言ってよ」
祭が透の方を見た・・。
「あのさ、祭・・俺の事どう思ってる？」「えっ・・・」
風がふいていて、二人の髪と洋服を揺らす・・。
「あ、えっと・・・ああ、そうだ、あのね。こないだ夏海がヒロに会ってさ」
祭が慌てて話題を変えた。「・・・・・・・・・」透が黙る。
「・・・・。」祭が下を向く。「俺、祭が好きだ！」透が真剣な顔をして祭に言った。
「・・・・・・・ごめん。祭、透をそんな風に見たことないから。」
祭が海を見ながら透に言った。
「・・・・そっか・・・」透が少しだけ寂しそうな表情をする。
「・・・でも・・・ありがとう」祭がそれだけ言ってニコリと笑った・・・。
「ああ、うん。」透が言った。
「それで、夏海がヒロに会ったって本当か？」透が祭に聞いた。
「うん。でもなんかヒロ、逃げていったみたい」祭が笑いながら言った。
「そりゃ、そうだよな・・相手は夏海だと思ってるんだもんな。本当は
お前が夏海に変装してヒロと付き合うふりをしてヒロをひっぱたいたのになｗ」
透が笑いながら言った。
「透、このことは誰にも言ってないよね？絶対言っちゃだめだからね！」
祭が透の口元に自分の人差し指を出した。「わかってるよ。俺だってその場にいたし。
でも夏海にバレたら大変なことになるぞ？」
「わかってる。でも大丈夫でしょ。お姉ちゃんだってもうヒロに未練はないはずだし。
今、ほかに好きな人いるみたいだから・・・。お姉ちゃん男を見る目がないのよね」
祭は潮風で揺れる髪を片手で抑えながら言った。
「風が強くなったからもう自宅に帰ろうぜ」
「うん」透と祭は二人並んで海岸を後にした
つづく
