僕のドラゴン軍団
僕のドラコン、初めての僕のドラコンを
兄様もデュシ様もとても褒めてくださった。
姉様にも褒めて欲しくて見回したけれど
姉様の姿はどこにもなく
「あれ?姉様?姉様はどこ?」
僕の問いに兄様は苦笑いで
「虹輝、レイシャは、しばらく、ここにはいないよ。
やらなければならない事が沢山あるからね。
気が付かなかったのかい?」と仰って
デュシ様を見てクスリと笑われた。
なぜか、デュシ様は俯き気味で姉様の名前が出た時、パッとデュシ様の心の器が明るく光輝いた。
「デュシ様、なぜか、今、輝いたように見えました。なぜ・・」
僕の言葉を遮るように兄様が
「虹輝にも、そのうちわかるよ。大人になれば」
と意味深な言い方をして、デュシ様を見てクスリと笑った。
それから、僕は忘れないように
また、僕のドラコンを数体造ってみた。
僕の小ドラコン軍団は10体になった。
小ドラゴン軍団はよく動く。じっとしていない。
そして、穏やかさからは、かけ離れ喧嘩ばかりしている。仲がいいのは、眠る時だけ。
眠る時はなぜか、10体がくっついて、穏やかな顔で眠っている。
僕は喧嘩ばかりの小ドラゴン軍団を、見てるのが楽しくて、眠っている時は撫でてあげたくなり
一体一体頭から体まで撫でてしまうのだった。
デュシ様は、10体が完成するまでは、ずっと居てくれたのだけど、
もう大丈夫みたいだね。と仰り
デュシ様もお忙しいらしく、
デュシ様の世界に戻っていかれた。
寂しさはあるけれど
ちょくちょく顔を見には来てくださるし、
入れ違いのように姉様が戻って来てくださったので、僕はまた、姉様に甘えながら
小ドラゴン軍団を見て
時には追い掛け一緒に遊んだりした。
姉様は、たまにデュシ様の創ったドラゴンオブジェを優しい笑顔で見つめている。
僕がそんな姉様を見てるのに気が付くと
「綺麗なオブジェね。」と微笑まれるのだった。
僕が姉様に甘えて寝ていたら兄様の声がした。
「虹輝。起きろ。お客さまだぞ~」
慌てて起きるとデュシ様がいた。
「デュシ様」と飛びついた僕の頭を
ガシガシ撫でたデュシ様だけど、
僕以外にも、飛び付いたものがいた。
僕のドラコン軍団だ。
僕らの大歓迎が終わって僕を降ろしたデュシ様に
「いらっしゃいデュシ。」
と頰をほんのり赤く染めた姉様が近付いて来た
「こんにちはレイシャ。」
と、デュシ様も頬を染めて微笑まれた
???
(兄様、ねぇなんで、姉様とデュシ様
二人とも頬っぺ紅いの、
二人とも、心の器すごく綺麗な透明な赤になってるよ。なんで?ねぇ兄様)
(虹輝、うるさいよ(笑)
レイシャはデュシ様が好きなの。
デュシ様もレイシャが好きなの。
だから、頬っぺたも心の器も綺麗な透明な赤になったんだよ。)
(へぇー、好きだと、赤くなるんだ。でも、
姉様も兄様も僕を見ても赤くならない。
僕の事、好きじゃないの?)
(バカ虹輝。
我等は家族、兄弟姉弟。
好きでも赤くはならないんだよ。)
(ああやって赤くなるのは、
家族ではない大人同士が
お互いを好きな時なんだよ。)
(よくわからないけど。なんだか、暖かい気持ちになるね)僕は自然に微笑んでいた。
姉様は、僕達の暮らす天界に花畑を創った
森も創った。
姉様の創る花畑は、様々な色の花が咲き、
散ってはまた違う花が咲いた。
森には、小動物が作られ住むようになった。
僕のドラコン軍団が、いつも日課のように
その小動物を追い掛け回したり、
花畑を荒らしたりしていた。
僕は僕のドラコン軍団がかわいいけれど、
追い掛け回され必死に逃げて怯える小動物を見ると、悲しくなった。
僕のかわいい軍団が意地悪に思えた。
イヤに思った。やめてと思った。
ある時、小動物を追い掛けるだけでなく、
皆で追い詰め押さえつけた。
小動物は、怯え逃げようとするが、
軍団は逃がさないどころか、傷つけ始めた。
小動物は、悲しげな怯えきった鳴き声をあげ
なんとか逃げようとするが、どんどん弱って動けなくなっていった。鳴き声も弱々しくなり
プツン
何かがキレた。
気が付くと
僕はぐったりとした小動物を腕に抱いていた。
僕の軍団は、遠くで僕を見て震えていた。
僕は軍団に来いと呼んだが、軍団は固まって動かない。
不機嫌に近付いて行くと、
軍団皆が傷ついている。
手を伸ばそうとするとガタガタ震え出した。
「虹輝、待ちなさい。」姉様の声がした。
頭の中にビジョンが見える。
傷付いた小動物に群がる軍団。
軍団をつかんで叩きつけるように放り投げる手。
(誰が僕の軍団を)
怒りに満ちたオーラの主、それは僕だった。
僕が、いつ・・
軍団の傷は僕がつけた?
「虹輝、あなたは、なぜ、したのですか?」
「・・わかりません。
本当に僕が、僕の軍団に
あんな事を・・」
「虹輝は、あのこ達をとても可愛がってて
大好きですよね。
でも、あの子達の酷くなっていく行動に
腹も立てていましたね。
今回、それの限度が超えた。
あのままでは、あの小動物は、
軍団の遊びの中で殺されてしまった事でしょう。
それで、虹輝は自分の軍団を止めた。
方法は他にも有ったかもしれませんが、
命を救う為にした決断です。よくやりました。
虹輝、よくやりました。偉かったですよ」
それを聞いて、僕は少し誇らしく思った。
軍団の僕を見る目が痛かった。
僕は手を伸ばした。
「おいで。もう怒ってないから」
軍団は、恐る恐る近付いて来た。
「痛かったか?ゴメンな。恐かったか?ゴメンな。でも、お前達は、あの小動物に同じ事、したんだ。
殺してしまうところだったんだ。
もうするな。今度は許さないからな。」
僕はしばらく、胸が苦しかった。
自分で意識せず、してしまった事。
僕は、自分がわからない。それが怖い。
(虹輝、怖がる事はない。意識せずの行動は、不安になるだろう。
だが力の弱いものを守ったんだ。
その為に傷つけた事はよくない。
だか、傷つけずに全て守れる訳ではない。
決断だ。
何がしてはならない事なのか。
が、決断には大事な事なんだよ。
自分を怖がらなくてもいい。
お前の正義が間違った時、わからない時、
正しく決断出来るよう
助け、おまえの心を救う為に、家族はあるんだ。
頼れ我らを)
兄様、兄様ありがとう
(虹輝、楽しく過ごしておるか?)
(父様。ぼくは毎日楽しいです。僕は
僕だけのドラコン軍団作れたんですよ)
(そうじゃったのぉ。アルやレイシャからのビジョンで、見ておるぞ。軍団の悪さの程もな。
だが
可愛がるだけではダメな事も解ったであろう。
弱者を守る事はとても大事な事だ。
教わらずとも、それに気付いた虹輝は、偉いぞ)
(父様、軍団が、悪い事をしたのは僕が悪いんです。僕は可愛がるだけで、
遊びだからと、放っておいた。
軍団は他のものを傷つける事を
悪い事と思ってなくて、
悪い事の意味も理解出来てなくて
そうしたのは、僕なんだ。
軍団は僕が感情がまだ、よくわからなくて
性格を作れないまま創ってしまって、
それを補うために
僕は教えていかなければならなかったのに。
僕はしなかった。
軍団のドラゴン逹は僕なんかが
創造主だから、悪い子達になっちゃったんだ。です。)
(アハハ、虹輝、なっちゃったんだ。です。
とか、妙な言い回しだな。
無理せずとも、家族だ。
話しやすい言葉で良いのだぞ。(笑)
虹輝のドラゴン逹は、
虹輝が想像主で良かったじゃないか。
想像主と共に成長出来るのだからなハハハ)
(父様・・なんだか、少し心が軽くなりました。
父様ありがとうございます)
(ところで、虹輝。
お前も幼から少年になって、
少しずつ、いろんな感情がわかってきている様だな。
すぐに青年大人となるであろう。
そうすれば、もっと深い感情、複雑な感情が芽生えてくるだろう。
今のお前に丁度善い。
この下界、始まったばかりのフロレンティアをお前に与える)
ビジョンで見えるのは暗い地に
神々しい光が差し込み
一面が花畑に変わっていく所だった。
(ここフロレンティアを
これからおまえが統べるが良い。
虹輝は、これより天空界に降りフロレンティアで
弱いもの、力のないものを助け守るのじゃ。
だが、
下界には、不干渉じゃ。見守るのだ。
虹のパワーで干渉すれば、
全てが壊れる事をいつも頭においておくのだ。
判ったな)
(はい。父様)
僕は兄様の世界を離れ
フロレンティアの天空界に降りる事になったのだが・・
僕は考えた。
不干渉で、どのように、助け守るのかと。
何も出来ずに見守るしかない僕は
どうやって与えられた地を守れるのかと。