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第一部 はじまりの時

きみをみつけるよ。

―あなたは誰?ずっと前から知ってるような

なんだか、つらい、この想いは。―

待っていて、必ず迎えに行くから。

―ああ、なんだか愛しい。涙が溢れる。―

もうすぐ迎えに行く。

―嬉しい。会いたい。あなたに。愛しい人。―



「主様~」

「おお、覚醒したか?」

「はい。ですが・・」

「ですが・・なんじゃ! ああ、もうよい!参る。」

スタスタと側仕えを置き去りに先を急ぐ主に、

なんとか追い付いた側仕えに向い

「子らは、アルとレイシャは?」

「向かっております。」


荘厳に輝く扉の前で、主は足を止め、息を吐いた。


バン


大きく扉を開け放ち足を踏み入れた主に

「貴方さま。大きな音をおたてに為らずとも、扉は開くものですよ。」とおっしゃったお方は主の妻。

透き通った髪、

整ったお顔の中で、光輝く黄金の瞳

艶やかでお美しいお姿には後光が射している。

「おお、我が最愛の妻よ。御子は覚醒したのか?」

満面の笑みで尋ねる主に

「はい、先程少し・・」不安そうに主の妻が答える。


主は御子の方に近付いた時

「父様~母様~。弟君が覚醒したと聞き、飛んで参りました。」と、主の二人の御子である

アルフォンソピア様とアモレイシア様が飛び込んできた。

「おお、速かったな。ワハハ。こっちに参れ。」

「はい。父様」

「母様、お疲れさまでございました。」


お三方が近付くそこには

輝く光の輪の中に眠る綺麗な、愛らしい赤子がいた。


「覚醒したのでは、なかったのか?」

「はい、一度、眼を御開きになられました。」

と側仕えが答えるが、主がそれを遮るように

「では、何故、閉じておるのじゃ!」

「パチッと、御目を開いた時、それはもう

可愛くて愛らしくて。ですが・・」

そう答える妻の両肩を掴み揺すりながら主は怒鳴る。

「光の輪が輝いているのじゃから、生きてはおる。

一旦、覚醒したものが何故再び眠るのじゃ!」

「恐れながら、主様。

御子様が眼を御開きになられた時、

命の器のパワーが、大き過ぎ沸き上がる勢いで、

それはもう、光の輪が壊れる勢いでございました。

御子様は、対応仕切れず、また御休みになられたのかと・・」側仕えはオドオド答えた。

「命の器のパワーが、光の輪を壊す勢いだと?

これはまた、物凄い子が誕生した。ワハハハハ。

で、他はどうじゃ?」

「はい、それが命の器のパワーが凄まじ過ぎて、視る間もなく、御目を閉じられましたので・・」

「そうかそうか。子らも参って家族が揃った今

御子を父の手で起こすとしようかの。ハハハ」


主は、光の輪に手を翳したが、御子は目を覚ます気配が無かった。が、光の輪の中で、

どこまでも濃い真赤な命の器から禍禍しい程の赤が溢れ出ている。

傍らの、叡智の器には、深青。煌めいている。


「ほう、これ程までの、命の器のパワーは、見たことが無いぞよ。末恐ろしいほどじゃのぉ!

そして、叡智も、アル程ではないが、見事じゃ!

で、心の器は・・」

「・・・」

「儂には・・・色が見えぬ。のじゃが・・」

「・・・」皆・・無言で誰もが言葉を発せなかった。


主が、ついに沈黙を破り呟く。

「器に、色は無いのだな。この子には・・

心が無い。・・のだな。愛・・が無いのだな。」

「・・・残念です。」

その場の誰もが暗く目を伏せた。

その場にいた、御子の兄、姉以外の誰もが

それがどういう意味を持つのか、解っていた。

解っているから、誰もが言葉を発する事が出来なかった。重苦しい静寂が流れ続ける部屋

側仕えの多くは緊張で立っていられない程の

張り詰めた空気。それに気付き主の妻が言った。

「皆、御苦労であった。暫し外で休むと良い。」

「はっ、失礼致します。」

側仕え達が退室すると、妻が主にすがり付いた。

「貴方さま。この御子は・・」

「・・・すまぬ。叡智神、ここへ。」

「はい、ここにおりまする。」

「そちの考え、聞かせてくれ。」

「御子は、凄まじい命の器のパワーをお持ちのお方。このお力は成長なされば、絶対神であらせられる

御父君をも上回るでしょう。が、御心の器が、空。

それは、愛は勿論、御優しい御心も、

他に対する感情も持ち合わせていないという事。

いずれかは、全てを壊す、破壊神となられる可能性がございます。そうなってしまえば、絶対神さまでも、もうお止め出来ますまい。」

「そうなる前にこの愛らしいこの子を無いものとせよ。と申すのか!」

「いえ、光の神。神が御自分の御子を殺す事は、

何があろうと、出来ませぬ。あってはならない。」

「では、どうしろと・・」

「・・・妻よ。そなたの想い儂も同じじゃ。

が、儂達は神なのじゃ。この全ての世界を統べておる。壊す事は出来ぬ。許せ。」深々と頭を垂れた。

絶対神は、叡智神を見た。

その姿は、この世の全てを統べる者に相応しい

威厳に満ち凛々しく雄々しく神々しく

その目はいつもの力強い意志が宿っていた。

しばし見つめ合う二対の神

「叡智」

「はい。絶対神さまのお考えのままに。」

「ああ。・・・しばし・・家族で・・。少し時間を

そこで、控えて・・待て」

「はい。仰せのままに」


絶対神はその場に腰を落とした。

「皆、ここへ。この子の側へ」

母は、御子を抱きその御前に。アルフォンソピアとアモレイシアも膝を付く。

「アル、レイシャ。お前達の弟だよ。手を握ってあげなさい。」

「はい。父様母様。可愛く愛しい弟君、

初めまして姉様ですよ」

「我が弟よ。そなたの兄じゃ、会いたかったぞ。」

アルフォンソピアとアモレイシアがそっと弟君の小さな手を握った。

光の神は御子を腕に抱き、絶対神は光の神ごと御子を片手で抱きしめた。

もう一方の手は無意識に御子の頭を撫でていた。

しばし、いやどれ程そうしていたのだろうか。

ついに父が絶対神が大きく息を吐いた。


(忘れるでないぞ、兄の手の温もり姉の手の優しさ

母の腕から父の手の平から伝わる愛の想いを)


アルフォンソピアとアモレイシアの涙が

握った弟君の小さな手に落ちた。

御子の胸に、振るえる手で抱きしめ続ける光の神の涙が落ち続ける。

絶対神は、思わず御子の小さな額に自分の額をくっ付け抱きしめた。その頬には涙が伝い御子の頬に落ちた。


(許せ。愛する我が子よ)


「封印す。」

絶対神が顔を上げ宣言された瞬間

光の輪が輝きを増し、一瞬目が絡む。

「父様母様~。弟君の心の器が虹色に輝いています」

アルフォンソピアが叫ぶ。


パン、ギシギシギシギシ、パッリ~ン

と光の輪にヒビが入り砕け散った。

御子が目を開いて、覗きこんだ父、母、兄、姉を見て

パッと笑顔になった。


「父様母様、見てくださいませ。弟君が私達を見て、こんな愛らしい顔で笑ってます。」アモレイシアが嬉しくて飛び上がらんとばかりに言う。

「ああ、そうだのう。・・・叡智どう言う事・・何が起こったのじゃ?」

「・・・恐らくは・・想像に過ぎませぬが・・

御家族の愛が器に流れ込み満たしたのでは。と思われます。が・・」

御子の心の器に輝いた虹色は、徐々に薄くなり消えていった。

「やはりですな。」

叡智神は呟き

「御子様の器は、空ではなくなりましたが、今だ色は無く透明です。この先、どのような色に変わられるか、いや、このままであるかも知れませぬが。

とにかく、如何様にも変わる可能性が有りまする。

邪に染まれば破壊神、邪神にお成りになりまするぞ」

「貴方さま。我が子です。信じましょう。この子の笑顔を、」

「・・・うぅ~。父としては、信じたい。が、絶対神としては、世を守らねばならん。邪神、ましてや破壊神など生んではならぬのじゃ」

「父様、私達に少しお時間をくださいませ。我ら兄姉に、しばし弟君をお預けくださいませ。感情を器に流してあげたいのです。そして、邪に染まることの無いよう我ら兄姉が、導いて参りますゆえ。どうか。」


絶対神、光の神、叡智神の三体神は、念話で思いを考えを確認しあった後、微笑んだ。


「任せる。宜しく頼む。」














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