開戦、ジョーバン街道!
一方その頃ジョーバン街道でも、戦闘が開始されようとしていた。トキオ文明国を迎え討つイバール国軍は、ゴーレム マスターのエメルとギルドマスターのナットがリーダーとなった、Sランク冒険者8名、Aランク30人、Bランク50人の100人にも満たない数である。
人数は欲しいものの、人同士での争いを好まない者や、元来国境にこだわらない者が多い冒険者のため、これでも人が集まった方だった。
その現実を目の当たりにしながらエメルとナット、そしてSランクパーティー2組の8人で作戦会議を開いていた。すでに敵の姿は、長く黒い横線のようにうっすらと見えてきている。
「こうやってみると戦力の差が歴然だな」
「そうね、個々の力ではこっちが上かもしれないけど……10倍、いや20倍以上の数の差があると、考えるだけでつらいわね」
そこへ、偵察が終わったヒイロが戻ってくる。
「お待たせしました。やはり敵の数に変更はありません。多分すでに戦闘が行われているナタリ渓谷と約同数の兵隊が2000、人形ゴーレムが250、戦車200、戦闘機100、あと今横になって運ばれていますが、超大型のゴーレムが3です。ナットさん、どう展開します?俺も一日目はこっちの戦力として考えてくれていいです」
「そうか、助かる。とりあえず、エメルは戦車って言う兵器を中心に攻めと守りの両方を頼む。ヒイロは超大型のゴーレムと、あと戦闘機を方を頼む。後はある程度連携が取れる距離に広がって迎え討つ……か?」
「ナットさん、相手の魔道銃という兵器は、殺傷能力が高いですが、魔法とは違い、直線的な攻撃しか出来ないと思います。それなら広がったり、一箇所に固まったりせず、パーティーごとの小グループに分かれて敵にぶつかり、乱戦に持っていったほうが相手も狙いにくく嫌がると思います。」
「なるほど……でもそれでは、突破されてしまう箇所もでてくるんじゃないか?」
「じゃぁ私がゴーレム をフルに展開して、最終防衛ラインを保つわ!それに戦車というやつならSランク冒険者のみんなに任せても大丈夫でしょ、ヒイロ?」
「……そうですね。多分、上級魔法なら2、3回直撃させれば。多分、戦車の方は、ある程度距離を保ってくるので、逆にゴーレムだと、接近戦に持ち込むのは難しいかもしれませんね」
「わかった……そうしよう。Sランクパーティーの《シルバーウインド》と《ブルーファイア》は戦車を中心に頼む。」
「りょーかい!」
「ナタリ渓谷と違い、左右を森で囲まれているものの、この広い街道では、どこからもでも攻めて来られる。だからあえて、守るのではなく、攻めに転じてある程度敵の動きを封じましょう。そしてなるべく一日目で出来るだけ相手の戦力を叩ければ!」
「わかった!よぉし、作戦開始だ!」
エメル達、ジョーバン街道防衛軍はそれぞれパーティーごとに陣取り、戦闘開始の時を待っていた。
そしてトキオ文明国のジョーバン街道攻略軍では、同じく武装兵2000。オートマシン250。戦車200、戦闘機100、ビッグオートマシン3が、乱れることなく進軍していた。大将はトキオ文明国軍総司令のシキ。38歳の天職《剣士》を極めた副司令ヤナカより、少し年上の42歳で天職も《聖騎士》とかなり珍しい天職を持つ、トキオ文明国軍きっての切れ者でもあった。そしてシキは、イバール国防衛軍の配置の様子を見て、すぐに作戦変更を考える。
「ほぉ、相手は魔道銃の特徴を捉えているのか、乱戦に持ち込んでくるようだな。だが、数では見るからにこちらが圧倒的に有利。まずはそれを最大限に活かす。各自
、戦車2輌にオートマシン2~3体、武装兵20の小隊に編成。小隊ごとに攻めろ!乱戦では戦闘機の活躍は難しい、ビッグオートマシンとともに様子を見て、私が指示をだす!戦闘開始だ、全軍進軍せよ!」
切れ者シキの号令のもと、トキオ文明国軍が侵攻を始める。
ヒイロ達にとって、まさかの全軍進軍である。ナタリ渓谷のヤナカ同様、並の大将なら、戦力差を見て、最初は少数を出して様子を見ながら攻めるだろうと思っていた。だが、シキはそんな油断もなく、戦力差の優位性を最大限発揮する、いきなりの全軍進軍で攻めてきたのだ。
「まずいな、相手の指揮官、かなりの切れ者だ。変に策を練らずに油断せず、一番確実で手っ取り早い方法を選択してきたな。多分、こっちの乱戦への誘導も見破られたんだと思います。」
「ヒイロ、どうする?」
「仕方ないです。相手のやり方に対し、こちら側の策は変えようがない。作戦は変わらず、個々の実力を発揮して、戦力差をカバーするしかない。Sランクパーティーも含め、パーティーごとに敵小隊にあたり、潰していきましょう」
「えぇい、仕方ない!お前ら気合いいれろよー!」
相手はおよそ100もの小隊で攻め込んで来ているのに対し、こっちは4~5人の冒険者パーティーが20組前後。それも相手の1小隊はBランクパーティーとほぼ同等の戦力があると思われる。
「エメルさん!戦闘機がまだ来ないようだから俺が最終ラインに入ります!エメルさんはゴーレム をフルに使ってBランクパーティー達のサポートに入ってください!」
「わかったわ」
ヒイロの判断に合わせてナットも指示を出す。
「《シルバーウィンド》《ブルーファイア》も、Aランクのサポートに入れ!敵を倒すことも大事だが、誰も人同士での争いで死ぬことは許さん!」
「はい!」
ヒイロは戦況を確認しながら、最終ラインを見守りつつ、短距離転移魔法で戦場を駆け回り、エメルのゴーレム が届かない、追い込まれてるパーティーを補佐していく。だが、どうしても100の敵小隊に対し、20前後の冒険者パーティーでは抑えきれず、すぐにいくつかの小隊が防衛網を突破し、最終ラインに攻め込んで来ていた。
「やっぱり数で一気に押されるとどうにも出来ないな。仕方ない……始めから魔力を消費したくなかったけど、そうも言ってられないな。神獣召喚!いでよ! 《神獣シヴァ》《神獣ラムウ》」
(お、これはまた面白くなってきてるのぅヒイロ!)
(シヴァさん、ラムウさん。俺に力を貸してくれ!敵はあの機械が混じっている小隊、この最後の防衛線を突破されたらまずい、威力を控えめにして、突破してきた小隊がいたら、魔力を温存させつつ排除してくれ。出来れば人は殺したくない……)
「……なるほどのう。だが、ちと我らとて全力で一掃するならまだしも、威力を絞るとなると手加減が難しいのう。時間はかかるが……まぁどうにかしよう。シヴァよ、間違っても味方のほうを倒すなよ!」
「おうよ!……って、ラムウのじいさん、方向逆だよ!そっちは誰もいないだろうが!!全く、ボケて本当に仲間を攻撃すんなよな!大丈夫じゃヒイロ!すべてこのスーパープリチーシヴァ様にまかせておけーぃ!」
神獣合体ではなく、神獣召喚を出し続けることは、ヒイロにとってかなりの魔力消費となるが、相手の戦力が何倍以上もあることを考えると、出し惜しみなどは出来なかったのだ。それだけ開始直後からヒイロは追い込まれていた。
だが、それはトキオ文明国の総司令シキも同様だった。これだけの戦力差があって、どの小隊も防衛線を突破できていないのだ。そして、そのシキの中での計算を狂わせたのは、やはりSSランク冒険者の2人だった。
まず《ゴーレム マスターのエメル》が出したゴーレム達は、最も小さい量産型と思われるゴーレム でさえ、戦車に匹敵する戦闘力をもち、他の特殊なゴーレムは、一体で小隊を圧倒する戦力を誇っていたのだ。
また、もう一人の《神降ろしのヒイロ》と呼ばれる方はもっと恐ろしかった。その行動範囲の広さで、この広い戦場を一人でカバーし、尚且つ、そのヒイロが出したと思われる2体の魔物のようなものが、防衛線を突破しかけた小隊を一撃で潰すのだ。
「まずいぞ、これでは防衛戦を突破するどころか、下手したら全滅だ……。仕方ない、戦闘機発進準備、戦闘機は全て、SSランク冒険者の《ゴーレム マスターのエメル》《神降ろしのヒイロ》のみに集中して攻撃を仕掛けろ!」
ビックオートマシンを出すか迷ったが、それこそ奥の手のビックオートマシンが簡単に倒されたら、こっちの士気が折れてしまう。とりあえず戦闘機でSSランク冒険者の動きを止めるしか方法はなかった。
それまで、互角の戦況を保ち、善戦していたイバール国防衛軍も、敵の戦闘機投入により、エメルとヒイロの動きが制限されてしまった事で、徐々に劣勢になってきていた。
とくにエメルは対空への攻撃能力がほとんどないため、戦闘機に対しては防御しか出来ず、一番大型の《ソリッドルーク》での牽制しか出来なかった。そのため、戦闘機の攻撃を意識することで、ゴーレムへの指示もまとも出すことが出来ず、ゴーレム達の動きも半減されてしまった。
「くっ、まずいな。仕方ない、Bランク冒険者は2組で1個小隊にあたれ!Sランクパーティーはパーティーを解散し、それぞれ一人ずつAランクパーティーの援助にまわれ!」
ナットの指示は、戦況を一時的に不利にさせるも、仕方がなかった。そうしないと次々とパーティーが潰されてしまうからだ。だが、全体の補助に回っていたヒイロの負担がかなり減ることとなる。
ヒイロはかなり魔力を消費していた神獣召喚を一旦解除し、最終防衛ラインへと再び戻る。そこで少し休憩と魔力回復薬を飲み、ナットと指示をサポートするため、戦闘機の撃墜に力を入れた。
「出来るだけ撃墜しなければ……神獣召喚 《神獣カーバンクル》力を貸してくれ!《神獣合体》」
緑の《エレメンタルアーマー》を装着し、ヒイロは神具 《ガンディーヴァの弓》を構えて、出来るだけ、魔力を込め、一撃必殺で戦闘機を撃墜していく。
この一連の変化で、また戦況は一進一退の膠着状態に入っていくのだった。正午過ぎから始まった一日目の戦闘は夕方に差し掛かる頃、トキオ文明国の兵器の燃料切れもあり、一時撤退で終了した。表面的にはイバール国が、跳ね返した形になったが、現実的にはどうにか命拾いをしたのだった。
お互い消耗の激しい初戦だったが、ヒイロが参加した分イバール国の方が戦果は大きかった。ヒイロは元から作戦上、遊撃として存在していたため、どちら側にも戦力として計算をしていなかった。そのため、ヒイロがいないナタリ渓谷の方にはかなり負担が大きかったこととなる。
「ナットさん、エメルさん、相手の戦力は初戦でかなり叩けたと思う。かなり難しい状況だけど、明日はナタリ渓谷の方へサポートに行きます。」
「……そうよね。勝ちを想定して配置したこっちでさえ、これだものね。あっちは地形が有利としても、かなり苦しかったはずだわ」
「あぁ、今さっき、通信魔道具での定期連絡を確認したが、地形のおかげでこっちのように、相手が全軍で進軍して来なかったようだが、かなり消耗が激しかったようだ」
「わかりました。明日は、無理せずこっちも守り主体で守りきってください。エメルさんも無理せずに」
「大丈夫よ。それに無理しなきゃあなたがいなくなった分の穴埋めにはならないしね。」
「すいません、よろしくお願いします」
「あぁまかせろ」
一方その頃ジョーバン街道でも、戦闘が開始されようとしていた。トキオ文明国を迎え討つイバール国軍は、ゴーレム マスターのエメルとギルドマスターのナットがリーダーとなった、Sランク冒険者8名、Aランク30人、Bランク50人の100人にも満たない数である。
人数は欲しいものの、人同士での争いを好まない者や、元来国境にこだわらない者が多い冒険者のため、これでも人が集まった方だった。
その現実を目の当たりにしながらエメルとナット、そしてSランクパーティー2組の8人で作戦会議を開いていた。すでに敵の姿は、長く黒い横線のようにうっすらと見えてきている。
「こうやってみると戦力の差が歴然だな」
「そうね、個々の力ではこっちが上かもしれないけど……10倍、いや20倍以上の数の差があると、考えるだけでつらいわね」
そこへ、偵察が終わったヒイロが戻ってくる。
「お待たせしました。やはり敵の数に変更はありません。多分すでに戦闘が行われているナタリ渓谷と約同数の兵隊が2000、人形ゴーレムが250、戦車200、戦闘機100、あと今横になって運ばれていますが、超大型のゴーレムが3です。ナットさん、どう展開します?俺も一日目はこっちの戦力として考えてくれていいです」
「そうか、助かる。とりあえず、エメルは戦車って言う兵器を中心に攻めと守りの両方を頼む。ヒイロは超大型のゴーレムと、あと戦闘機を方を頼む。後はある程度連携が取れる距離に広がって迎え討つ……か?」
「ナットさん、相手の魔道銃という兵器は、殺傷能力が高いですが、魔法とは違い、直線的な攻撃しか出来ないと思います。それなら広がったり、一箇所に固まったりせず、パーティーごとの小グループに分かれて敵にぶつかり、乱戦に持っていったほうが相手も狙いにくく嫌がると思います。」
「なるほど……でもそれでは、突破されてしまう箇所もでてくるんじゃないか?」
「じゃぁ私がゴーレム をフルに展開して、最終防衛ラインを保つわ!それに戦車というやつならSランク冒険者のみんなに任せても大丈夫でしょ、ヒイロ?」
「……そうですね。多分、上級魔法なら2、3回直撃させれば。多分、戦車の方は、ある程度距離を保ってくるので、逆にゴーレムだと、接近戦に持ち込むのは難しいかもしれませんね」
「わかった……そうしよう。Sランクパーティーの《シルバーウインド》と《ブルーファイア》は戦車を中心に頼む。」
「りょーかい!」
「ナタリ渓谷と違い、左右を森で囲まれているものの、この広い街道では、どこからもでも攻めて来られる。だからあえて、守るのではなく、攻めに転じてある程度敵の動きを封じましょう。そしてなるべく一日目で出来るだけ相手の戦力を叩ければ!」
「わかった!よぉし、作戦開始だ!」
エメル達、ジョーバン街道防衛軍はそれぞれパーティーごとに陣取り、戦闘開始の時を待っていた。
そしてトキオ文明国のジョーバン街道攻略軍では、同じく武装兵2000。オートマシン250。戦車200、戦闘機100、ビッグオートマシン3が、乱れることなく進軍していた。大将はトキオ文明国軍総司令のシキ。38歳の天職《剣士》を極めた副司令ヤナカより、少し年上の42歳で天職も《聖騎士》とかなり珍しい天職を持つ、トキオ文明国軍きっての切れ者でもあった。そしてシキは、イバール国防衛軍の配置の様子を見て、すぐに作戦変更を考える。
「ほぉ、相手は魔道銃の特徴を捉えているのか、乱戦に持ち込んでくるようだな。だが、数では見るからにこちらが圧倒的に有利。まずはそれを最大限に活かす。各自
、戦車2輌にオートマシン2~3体、武装兵20の小隊に編成。小隊ごとに攻めろ!乱戦では戦闘機の活躍は難しい、ビッグオートマシンとともに様子を見て、私が指示をだす!戦闘開始だ、全軍進軍せよ!」
切れ者シキの号令のもと、トキオ文明国軍が侵攻を始める。
ヒイロ達にとって、まさかの全軍進軍である。ナタリ渓谷のヤナカ同様、並の大将なら、戦力差を見て、最初は少数を出して様子を見ながら攻めるだろうと思っていた。だが、シキはそんな油断もなく、戦力差の優位性を最大限発揮する、いきなりの全軍進軍で攻めてきたのだ。
「まずいな、相手の指揮官、かなりの切れ者だ。変に策を練らずに油断せず、一番確実で手っ取り早い方法を選択してきたな。多分、こっちの乱戦への誘導も見破られたんだと思います。」
「ヒイロ、どうする?」
「仕方ないです。相手のやり方に対し、こちら側の策は変えようがない。作戦は変わらず、個々の実力を発揮して、戦力差をカバーするしかない。Sランクパーティーも含め、パーティーごとに敵小隊にあたり、潰していきましょう」
「えぇい、仕方ない!お前ら気合いいれろよー!」
相手はおよそ100もの小隊で攻め込んで来ているのに対し、こっちは4~5人の冒険者パーティーが20組前後。それも相手の1小隊はBランクパーティーとほぼ同等の戦力があると思われる。
「エメルさん!戦闘機がまだ来ないようだから俺が最終ラインに入ります!エメルさんはゴーレム をフルに使ってBランクパーティー達のサポートに入ってください!」
「わかったわ」
ヒイロの判断に合わせてナットも指示を出す。
「《シルバーウィンド》《ブルーファイア》も、Aランクのサポートに入れ!敵を倒すことも大事だが、誰も人同士での争いで死ぬことは許さん!」
「はい!」
ヒイロは戦況を確認しながら、最終ラインを見守りつつ、短距離転移魔法で戦場を駆け回り、エメルのゴーレム が届かない、追い込まれてるパーティーを補佐していく。だが、どうしても100の敵小隊に対し、20前後の冒険者パーティーでは抑えきれず、すぐにいくつかの小隊が防衛網を突破し、最終ラインに攻め込んで来ていた。
「やっぱり数で一気に押されるとどうにも出来ないな。仕方ない……始めから魔力を消費したくなかったけど、そうも言ってられないな。神獣召喚!いでよ! 《神獣シヴァ》《神獣ラムウ》」
(お、これはまた面白くなってきてるのぅヒイロ!)
(シヴァさん、ラムウさん。俺に力を貸してくれ!敵はあの機械が混じっている小隊、この最後の防衛線を突破されたらまずい、威力を控えめにして、突破してきた小隊がいたら、魔力を温存させつつ排除してくれ。出来れば人は殺したくない……)
「……なるほどのう。だが、ちと我らとて全力で一掃するならまだしも、威力を絞るとなると手加減が難しいのう。時間はかかるが……まぁどうにかしよう。シヴァよ、間違っても味方のほうを倒すなよ!」
「おうよ!……って、ラムウのじいさん、方向逆だよ!そっちは誰もいないだろうが!!全く、ボケて本当に仲間を攻撃すんなよな!大丈夫じゃヒイロ!すべてこのスーパープリチーシヴァ様にまかせておけーぃ!」
神獣合体ではなく、神獣召喚を出し続けることは、ヒイロにとってかなりの魔力消費となるが、相手の戦力が何倍以上もあることを考えると、出し惜しみなどは出来なかったのだ。それだけ開始直後からヒイロは追い込まれていた。
だが、それはトキオ文明国の総司令シキも同様だった。これだけの戦力差があって、どの小隊も防衛線を突破できていないのだ。そして、そのシキの中での計算を狂わせたのは、やはりSSランク冒険者の2人だった。
まず《ゴーレム マスターのエメル》が出したゴーレム達は、最も小さい量産型と思われるゴーレム でさえ、戦車に匹敵する戦闘力をもち、他の特殊なゴーレムは、一体で小隊を圧倒する戦力を誇っていたのだ。
また、もう一人の《神降ろしのヒイロ》と呼ばれる方はもっと恐ろしかった。その行動範囲の広さで、この広い戦場を一人でカバーし、尚且つ、そのヒイロが出したと思われる2体の魔物のようなものが、防衛線を突破しかけた小隊を一撃で潰すのだ。
「まずいぞ、これでは防衛戦を突破するどころか、下手したら全滅だ……。仕方ない、戦闘機発進準備、戦闘機は全て、SSランク冒険者の《ゴーレム マスターのエメル》《神降ろしのヒイロ》のみに集中して攻撃を仕掛けろ!」
ビックオートマシンを出すか迷ったが、それこそ奥の手のビックオートマシンが簡単に倒されたら、こっちの士気が折れてしまう。とりあえず戦闘機でSSランク冒険者の動きを止めるしか方法はなかった。
それまで、互角の戦況を保ち、善戦していたイバール国防衛軍も、敵の戦闘機投入により、エメルとヒイロの動きが制限されてしまった事で、徐々に劣勢になってきていた。
とくにエメルは対空への攻撃能力がほとんどないため、戦闘機に対しては防御しか出来ず、一番大型の《ソリッドルーク》での牽制しか出来なかった。そのため、戦闘機の攻撃を意識することで、ゴーレムへの指示もまとも出すことが出来ず、ゴーレム達の動きも半減されてしまった。
「くっ、まずいな。仕方ない、Bランク冒険者は2組で1個小隊にあたれ!Sランクパーティーはパーティーを解散し、それぞれ一人ずつAランクパーティーの援助にまわれ!」
ナットの指示は、戦況を一時的に不利にさせるも、仕方がなかった。そうしないと次々とパーティーが潰されてしまうからだ。だが、全体の補助に回っていたヒイロの負担がかなり減ることとなる。
ヒイロはかなり魔力を消費していた神獣召喚を一旦解除し、最終防衛ラインへと再び戻る。そこで少し休憩と魔力回復薬を飲み、ナットと指示をサポートするため、戦闘機の撃墜に力を入れた。
「出来るだけ撃墜しなければ……神獣召喚 《神獣カーバンクル》力を貸してくれ!《神獣合体》」
緑の《エレメンタルアーマー》を装着し、ヒイロは神具 《ガンディーヴァの弓》を構えて、出来るだけ、魔力を込め、一撃必殺で戦闘機を撃墜していく。
この一連の変化で、また戦況は一進一退の膠着状態に入っていくのだった。正午過ぎから始まった一日目の戦闘は夕方に差し掛かる頃、トキオ文明国の兵器の燃料切れもあり、一時撤退で終了した。表面的にはイバール国が、跳ね返した形になったが、現実的にはどうにか命拾いをしたのだった。
お互い消耗の激しい初戦だったが、ヒイロが参加した分イバール国の方が戦果は大きかった。ヒイロは元から作戦上、遊撃として存在していたため、どちら側にも戦力として計算をしていなかった。そのため、ヒイロがいないナタリ渓谷の方にはかなり負担が大きかったこととなる。
「ナットさん、エメルさん、相手の戦力は初戦でかなり叩けたと思う。かなり難しい状況だけど、明日はナタリ渓谷の方へサポートに行きます。」
「……そうよね。勝ちを想定して配置したこっちでさえ、これだものね。あっちは地形が有利としても、かなり苦しかったはずだわ」
「あぁ、今さっき、通信魔道具での定期連絡を確認したが、地形のおかげでこっちのように、相手が全軍で進軍して来なかったようだが、かなり消耗が激しかったようだ」
「わかりました。明日は、無理せずこっちも守り主体で守りきってください。エメルさんも無理せずに」
「大丈夫よ。それに無理しなきゃあなたがいなくなった分の穴埋めにはならないしね。」
「すいません、よろしくお願いします」
「あぁまかせろ」




