間話 〜ヒイロの衝撃的な話し《ヒイロの魂の師匠》〜
これはヒイロ達5人が魔王城に侵入し、4階から魔王が待つ、最上階へと進む途中での、ヒイロから話しを聞いた残りの4人が衝撃を受けた時のことである。
◇◇◇◇◇
「ヒイロ……あなた本当にまた数段と強くなったように感じるわ……」
「……はい、えぇと……(天職保育士のおかげ……とも素直に言えないし……)そうだ!?実はこの前、僕に心の師匠……いや、魂の師匠が出来たんですよ!!きっとその師匠のおかげで僕は更に強くなれたんだと思います!!」
そのヒイロの師匠発言にそこにいた全員が驚く。
「えっ!?ひ、ヒイロさんが師匠じゃなくて、ヒイロさんの師匠ですか!?はっ!もしかしてヴァンジャンスさん!?だからあんなに急に親しく……」
「えっ!?ロイ……それは勘違いにも程がある。間違ってもアイツを師匠となんて絶対に呼ばない!!」
「ん?では、お主ほどの男が師と仰ぐ者はいったい、どこの誰なんだ……?」
「インマウンテン族のマッスルンさんです!!趣味は天職の《道化師》ですけど、本職は筋肉を鍛える……じゃなくてニイガル城を護る防衛隊長さんです!」
エングは、会ったことがあるのか、一人驚き方が違う反応をしていた。
「彼か……そうか……何故彼はそれほどに人を惹きつけるのだ……」
何故かすごくショックを受けているエングをロイが心配する。
「えっ、エングさんどうしたんですか?なんでそんなに衝撃をうけているんですか!?」
シルフも何か思い出したように呟く。
「インマウンテン族……確か、獣人種の大猩猩族の一つで、力は強いが心優しき種族だったような……森の奥に住む種族だから、数少ない、我らエルフ族とも交流がある種族の一つ。ヒイロに師匠と言うのは驚きだが、エングがそこまで衝撃を受ける理由がわからないな」
「……彼は私も良く知っている。とても素晴らしい人格者だとは私も思う。カリスマと言うのか……私の息子達も彼の大ファンなんだ。なんせ……私のことよりも数倍尊敬している……」
「えっ!?エングさんのお子さん達も師匠を尊敬しているのですね!流石です!!」
イスカリオテも普段はクールなキャラだが、エングやヒイロの様子を見て、気になり出している。
「エングさん、その……ヒイロさんが師匠と呼び、エングさんの息子さん達がエングさんよりも尊敬していると言うことは、それほど強い方なのですか?それもその方は、冒険者ではなく、国の守備兵……」
「確かに実力はあるとは思う。今すぐSランクになれるぐらいの実力があるという噂だからな。ただ本気を出した姿を誰も見たことがないらしく、その天職が何故か邪魔をするらしい。それに確か……戦闘スキル……そして魔力も一切ないらしい……」
エングの情報で、さらに目を輝かせるヒイロは魔物と戦いながらも、さらに一人呟くように尊敬の言葉を並べていく。
「てことは、あの美しい筋肉はやはりナチュラルマッスル……スキルによる身体強化や魔力による筋力増強などではない、ただただ純粋に鍛え上げられた天然筋肉……最高です師匠……。僕も師匠のように、恵まれた身体能力に頼らず、心の筋肉を鍛えていきます……」
ヒイロは戦いの最中でありながら、目をキラキラと輝かせ、遠くを見ながら、胸に拳を当てている。そして、エングは逆に何かを思い出したようにメンタルにかなりのダメージを受けていた。その様子に残りの3人は戸惑いながらも、最後の魔物を倒していく。
「エングさん、僕は同じ剣士としてエングさんを師匠として尊敬していますよ!!きっと息子さんも心の中では、その方よりもエングさんを一番尊敬しているはずですよ!」
ロイが必死にエングを励ましていき、シルフも同様にエングを励ますように無言でエングの肩を叩く。だが、少し空気を読めないイスカリオテはまだマッスルンのことを気にしていた。
「魔力や戦闘スキルがないのにその強さとは……ベースになっている身体能力がヒイロさん並みですね……戦闘スキルがないと言うことは武器もきっと鈍器のようなただ力に任せて殴るような物、もしくは素手……ある意味化け物ですね……」
「確かにインマウンテン族は、森の民とも言われるぐらい、温厚な性格で、森を傷付けるような魔法や武器も使わないわ。それに同じ種族の中でも私たちのように突出した存在だったら、それぐらいの能力があってもおかしくないかも」
「なるほど……僕もこの戦いが終わったら会ってみたいです!」
「そうだな!きっと師匠も今、俺たちと一緒にこの戦場のどこかで戦っているはずだ!!」
ヒイロの言葉通り、その頃、魔王城の外ではスタンピードとの戦闘がピークを迎えていた。エメルやヴァンジャンスが魔王配下と戦い、グランやアルト達がSSランクの魔物を含めた高ランクの魔物を中心に倒していく中、スタンピードの絶対的な数に押され始め、少しずつ冒険者達を突破しに街へ近づく魔物が現れてきたのだ。
最後の砦となったのは、ニイガル国首都サードの高い防壁の前で、ニイガル国騎士団の精鋭200名と、C、Dランク冒険者300名ほどだった。個々の強さよりも集団での戦闘で、スタンピードから溢れでた魔物達をどうにか討伐していた。
その中で一際目立つ存在が噂の男だった。その筋骨隆々の男と、その周りの似たような体型を男達が、その男マッスルンに向け、戦いながらも謎の声援を送っていた。
「ナイスバルク!!」
「ナイスカット!!」
「もう肩がメロン!!!」
「そこまで絞るには眠れぬ夜もあっただろー!!」
マッスルンもまた白い歯を輝かせながら、魔物を倒しながらも、仲間達のかけ後に合わせて、要所要所に様々な決めポーズを取っていく。そして、掛け声がかけられていくうち、さらに筋肉が盛り上がり、パワーやスピードなどの身体能力が上昇していく。
インマウンテン族のマッスルンは、エングが言っていた通り、剣術や格闘などの戦闘スキルはない。魔法も魔力が全くないため、身体強化すら使えない……だが、何故か、自身のモチベーションでいくらでも強くなることが出来る男だった。
「よーし、魔物が増えてきたな!!スキルを使うか!!スキル《筋肉ルーレット》発動!!」
マッスルンは自身の筋肉を操作して、左右の大胸筋を交互に揺らす。
「さぁ筋肉ルーレットが始まりました!魔物を倒すか……倒さないか……倒すか……倒さないか……どっちなんだい!?」
自分自身の口で効果音を鳴らしながら、高速で左右の大胸筋を交互に揺らし続ける。その間にも魔物達がマッスルンに向け、攻撃を仕掛けてくる。魔物の攻撃が当たる直前。筋肉ルーレットが止まり、答えが出される。
「倒すか……倒さないか……ピッピッピピッピ、ピー!こっちーー!たお……す!!ん~パワーーーーー!!」
マッスルンが大きな声で「パワーー」と叫ぶと、その凄まじい発声量が空気の大砲となって、マッスルンに攻撃を仕掛けようとしていた魔物達が全て吹き飛ばされ、倒される。周りにいた魔物を全て蹴散らしたマッスルンだったが、後方から凄まじい勢いで大きな魔物がマッスルンに向かってくる。
その魔物の姿を見た冒険者達が悲鳴のような叫び声をあげている。
「べ、べ、ベヒーモスだぁ!!!!!」
そこにいた中堅冒険者達が逃げようと必死に慌てる中、マッスルンが指を鳴らす。
「ミュージック……スタートォーーー!!」
先程、マッスルンに向け掛け声を放っていた男たちが、武器ではなくそれぞれ楽器を出し、演奏を始める。そして、その筋肉に合わせて、マッスルンがポーズをとりながら話し始める。
「みなさん、こんにちは。マッスルクッキングリサーチャーのマグママッスルンの時間です!今日は皆さんに美味しいマッスルステーキをご紹介したいと思います。まずは綺麗なお皿を用意してください。そして、ご自身が大好きな調味料をお好みで準備してください、最後に……」
仲間達の演奏が最高潮に達した時、ベヒーモスは既にマッスルンの目の前まで、大きな口を開けて突進して来ていた。
「そこらへんにいる美味しそうなお肉を調達し、お皿の上に……のせます!!」
「ヤーーーー」
マッスルンが話しながら、大きな牙を剥き出し目の前にきたベヒーモスのその牙を両手で掴み、「のせます!!」と言葉と一緒にどこからか準備した机とその上に置いた皿のうえに、「ヤー」の声と共にベヒーモスを地面へと叩きつける。顔面から地面に叩きつけられたベヒーモスは、首から上が地面にめりこみ、そのまま絶命する。
その圧倒的な強さに冒険者を含め、兵士達からも大歓声が上がり、さらに仲間達からの特殊な掛け声にポーズを決める筋骨隆々の男。その凄まじい筋肉と全ての人々を惹きつける笑顔と、心まで鍛え上げた完璧な人格。
そう、その男の名は……マッスルン。
森の民と慕われ、心優しき、インマウンテン族、いや世界最高の獣人。その鍛え上げられた筋肉と心だけで敵を倒す。最強がヒイロなら最高はこの男……
そう、その男の名は……マッスルン!!。
この戦い後、ニイガル国の兵士達だけでなく、世界中の冒険者、あらゆる種族からファンが溢れる人気者となる。そして、六大魔王と決着後、彼はヒイロ達に勝るとも劣らない英雄の一人となったのだった。




