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勇者と精霊獣

 ヒイロが福祉ギルドを立ち上げに奔走していた頃、勇者ロイもイバール国にいた。前回の魔王フルーレティとの戦いで、その配下の悪魔ですら一人で倒せずに、終わってしまったことが許せなかったのだ。


「僕は世界を救う勇者だ……本当なら誰よりも強く、みんな守らなくてはいけない存在なのに……。」


 実際、ロイは強い。SSランク冒険者に比べても、同等の実力を持っている。ただ、その中でヒイロとヴァンジャンスが別格だったのだ。そして、さらに他より力が劣ると感じているのは、勇者は魔法も使える万能型だが、エングより剣技で劣る、シルフやグランより魔法で劣る、エメルより多対一の戦闘で劣ると、全体的に能力が高いものの、秀でたものがなく、ロイ自身が劣っていると感じているのだ。


 そこでロイは、イバール国のドラゴン山脈に一人で来ていたのだった。以前会った竜王に前勇者のことを聞いて少しでも自身の能力を上げるためだ。ドラゴン山脈に入ると、すぐに一匹のレッドドラゴンがロイの前に降りてきた。


「何ようか?小僧」


「僕は勇者ロイと申します。以前、こちらの竜王様に聖剣をいただきました。今回は、その竜王様に相談があってきましたのです」


「勇者か……。いいだろう、竜王様は頂上にいらっしゃる」


「ありがとうございます」


 ロイが頂上に向かうと竜王が眠っていた。


「竜王様!勇者ロイです!」


「ん?あぁ、あの時勇者か。前回は世話になったな。何か わしにようか?」


「……はい!。以前会った時に、先代の勇者とお知り合いと聞きしました。僕は今……自分の力に納得がいかず……もし、よろしければ前の勇者のことを教えていただきたいのです!」


「……なるほどのう。だが、お主はじゅうぶん強いと思うぞ。それに勇者の固有スキルは成長の限界突破。焦らなくても、これからももっと強くなれる。」


「今なんです……魔王が……魔神が……世界の危機に、今、世界が恐怖に脅かされているのに……これからじゃ遅いんです!僕は勇者だ!……誰よりも強くみんなを守れる存在じゃないと勇者の意味がない!」


「ロイと言ったか……前の勇者も決して一人で魔王を倒した訳ではないのだぞ。他の仲間もおった。そして、魔神なんぞ、神の領域。本来なら人間、いや、どの生き物でさえ、太刀打ちできるものではない」


「しかし!それでも、みんなを……世界を守るために強くなりたいのです!」


「勇者という者は難儀じゃのう。前の勇者も似たような真っ直ぐなやつじゃった……」


「話してくださるのですか?」


「何が知りたい?」


「前の勇者が強くなった方法や何か特別な技がありませんでしたか?」


「うーん、方法はわからぬが……あやつから聞いたのは精霊武装と言う……光の精霊獣の力を借りて身体に纏うと言ってたか……。勇者と光属性は、相性がいい。まずは光属性の妖精や精霊獣を味方にすると良いぞ」


「ありがとうございます!……そうか、そうすれば今まで使えなかったあの技も使えるようになるはず!」


「光の精霊獣ならニイガル国の北に精霊の森におる。そこにいけば見つかるだろう。」


「ありがとうございます。すぐ向かいます。」


「期待しておる……だが、お前には仲間もいるはず、そこは忘れるな」


「はい……わかりました!」


 ロイは、イバール国からニイガル国に向かう途中、ヒイロの家によった。


「すいません、ヒイロさんいますか?」


「はーい!あ、ロイくん!久しぶりね。今、ヒイロを呼ぶから待ってて。ヒイロー!」


「あ、うーあ!」


 ホープはヒイロの周りを漂う光の妖精を目で追っていた。ロイは近づいてきたホープを抱っこし、話しかける。


「ん、どうしたのかな?僕の周りに虫さんでもいたかな?」


「おぉ久しぶりだなー。ちょうどロイに聞きたいことがあったんだ。ん?あぁ、ホープは、妖精が見えるんだ。ロイの周りにたくさん光の妖精がいるから気になるんだろう。」


「まさか!?こんな幼い子が見えるのですか?それも僕の周りに沢山いる?」


「ふふーん、まぁうちの子は超天才天使、超絶可愛すぎて妖精さえも見えてしまう!」


 ヒイロはいつになく鼻を高くする!ヒイロのそのような姿を初めて見たロイは少し引くも、ホープが妖精を見えることに驚いていた。


「え、あ、な、なるほど……。そういえばヒイロさんも妖精が見えるのですよね!」


「あぁ、見えるぞ!ロイは見えないのか?それだけ光の妖精に好かれているのに。」


「見えると思ったことがないので……。どうしたら見えるようになりますか?」


「うーん、俺の場合は体内の魔力を感じながらその状態で目に魔力を集中させて、周りの微妙な魔力の流れを感じたら見えた。あとは妖精に好かれる素質があるかないかじゃないか?」


「なるほど!ありがとうございます。実は、これからニイガル国に行って、精霊獣を探してくるのです。」


「なるほど!この前魔王の精霊獣と戦ったが妖精とは比べられないぐらい強力だったからな。味方にできれば心強いだろうな」


「やはりそうですか!そういえば、僕に聞きたいこととは?」


「……あぁ!ヴァンジャンスと言う、新しいSS冒険者のことだが、ロイは一緒に戦ったんだろ?どーだった?」


「はっきり言って強かったです。僕はヒイロさんと同等の強さを感じました。」


「そうか……何か話しをしたのか?」


「いや……かなり無口な方で、馴れ合いを拒む感じでしたので……戦闘も一人で行っていました。」


「なるほど、やっぱり直接会ってみない確かめられないか……。」


「確かめる?」


「いや、なんでもない。そうだ、強くなるためにニイガル国に行くなら、エングさんにも修行をつけてもらえばいい。剣技なら誰よりも強い。お前も良い修行になると思うぞ」


「そうですね!わかりました、ありがとうございます!」


「ここにきたついでだ、俺が転移魔法でニイガル国まで送ってやる!」


「ほんとですか?ありがとうございます!」


 こうしてロイはヒイロに送られてニイガル国に着いた。そして、首都サードのギルドマスターのライスに、精霊の森の場所を教えてもらい、精霊の森に向かった。


 精霊の森に着くと、まずはヒイロに教えてもらったやり方で妖精が見えるように訓練をしながら、精霊獣を求めて歩き出す。もとから光の妖精に愛されていたロイはそこまで時間がかからずに妖精の姿が見てるようになる。


「み、見えた!こんなに近くにいたなんて!」


 ロイは喜びながらもそのまま、森の奥に進んでいった。大小いくつかの精霊獣がおり、その中でも目を引いたのは綺麗な白い翼を持ったペガサスだった。ペガサスの周りには光の妖精が沢山飛んでいる。ロイがペガサスに近づくとペガサスは逃げることなく、顔を近づけてきた。ペガサスもロイを気に入ったのか、ポンと小さくなるとヒイロの肩に乗った。


「一緒に戦ってくれるか?」


 ペガサスはコクンと頷いた。ロイはそのまま、竜王が言っていた先代勇者のイメージをしながら精霊武装を試してみる。そうするとペガサスが素の大きさに戻ると一瞬光り輝き、そのまま白い闘気となり、ロイの身体を覆いかぶさるように包んだ所でペガサスはまた光ると元に戻ってしまった。


「さすがにいきなりは難しいか……。でもなんだろう、すごく力が溢れ出てくる。なんとしてもこの力をものにして、真の勇者になるんだ」


 ロイはそれから数週間、そこで寝泊まりをし、精霊武装の修行をする。精霊に愛されるロイは周りの精霊獣も優しく見守ってくれ、誰にも邪魔されることなく、ただひたすらに努力をする。


 それから数週間後、ロイは精霊武装を確実に自分のスキルとすることができた。その光り輝く白銀の鎧に背中の翼で羽ばたくイメージをすると、実際に翼が羽ばたき、空を飛び始めた。まるで生まれた時から空を飛んでいたかのように自由に飛び回っていた。


「後は自分の剣技を磨くだけだ。ありがとうペガサス。これからは一緒によろしく頼む。」


 ロイは新たな力、精霊武装を手に入れた。そしてさらにエングのところに行き、剣技の修行とともに精霊武装を行なうことで、短期間でさらに強くなっていったのだった。

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