トキオ文明国での戦い2
イスカリオテは魔王配下のバティムと激しい高速戦闘を繰り広げていた。バティムの攻撃は骸骨騎馬による高起動から放たれる青い炎と騎乗からの剣であり、魔法メインのイスカリオテにとっては、牽制で動きを止めてくれる仲間もいない為、相性の悪い相手だった。
「どうした魔法使い!先ほどからお前の魔法は届いていないぞ!」
「このままではまずいですね……こんな所でやられるワケには……考えろ……」
イスカリオテは攻撃魔法を当てることが出来ず、防御魔法による防戦一方となっていた。ダメージは、そこまで受けていないものの、このままでは魔力切れになり、倒されるのも時間の問題だった。
一方、ロイとエリゴムは、聖剣と魔槍とで、ほとんどその場を移動しない状況での激しい近接戦闘を繰り広げていた。
「《ホーリークロス》!」
「《ダークスピアー》!」
光属性と闇属性では、お互いに弱点であり反発し合う。序盤は互角の戦いを繰り広げていたものの、倍の体格差があり、近接特化でもあるエリゴムが少しずつロイを押していく。
その状況をイスカリオテは、防御を固めながら確かめていく。そして、ある考えを思いつき、行動に移そうと、ロイに声が届くまでの距離へと近づく。
「ロイさん!」
「イスカリオテくん!?どうしたんですか?、」
ロイは牽制をしつつ、イスカリオテの方に向かい、イスカリオテもまたロイへの防御魔法を展開し、2人の距離を詰めていく。この展開は、相手にとっては良い的になる2人のはずが、悪魔同士が何か言い合っている。
「よし、エリゴム!あの2匹はオレがまとめていただく!お前は休んでいろ!!」
「バカかお前は!アレは俺の獲物だ!お前から先に殺されたいのか!?」
ロイもその様子を見て、イスカリオテの考えを理解する。
「1対1ではかなり難しいですが、2対2なら!!」
「流石ですね、いきましょう!イスカリオテくん!」
「まずはロイさんの相手から!」
ロイが前衛、イスカリオテが後衛となり、エリゴムへと向かう。それを見たバティムは、舌打ちをし、エリゴムはニヤける。悪魔族は基本的に上下の関係は強いものの、単独行動を好む。もし、六大魔王が力を合わせ、同時に一箇所に現れていたら、世界はすぐに支配されていただろう。
「ちっ」
「ほらな!1匹じゃ俺に勝てないと理解したのだろう。バティム、お前は休んでいろ!」
「勝手にしろ!」
「六大魔王が一柱、魔王フルーレティ様の配下、魔槍のエリゴム。貴様ら如きでやられる雑魚ではないわ!」
「よし!予想通り相手は一人ずつだ!共闘される前に一気に行きますよ《エアロカノン》《フレイムカノン》」
イスカリオテの2つの上級魔法がエリゴムを襲う。そしてそれに合わせてロイが攻撃を仕掛ける。
「わかりました!くらえ《ホーリークロス》!」
「よしよし、楽しめそうになってきたな!くらえ《ダークスラッシュ》」
エリゴムはイスカリオテの上級魔法をあっさりと避けると、ロイの剣技もそのまま魔槍で相殺する。
「伝説の勇者と賢者の力はこんなものなのか?」
「まだまだぁー!《ブレイブソード》」
「混合魔法 《ライトニングウォーター》」
ロイがエリゴムと剣を交え、動きが止まった時にすかさずイスカリオテが魔法を放つ。だがエリゴムは、ロイを力ずくで押し返すと目の前に来た魔法を魔槍を回転させ防ぐ。
「なめるなー!《ダークスピアー》」
エリゴムの槍が黒い霧を纏う。
「イスカリオテくん、気をつけて!あの黒い槍から出る霧は状態異常の類いだ!」
「そのようですね!混合魔法 《エアロピリュヒケーション》」
イスカリオテは上級風魔法に上級の浄化魔法を合わせていく。
「なるほど!さすがイスカリオテくん!なら、ぼくは《セイントアロー》」
ロイもまた、自身が持つ光属性の遠距離スキルで、イスカリオテに合わせていく。
ロイとイスカリオテはエリゴムに近づかないように遠距離から光属性中心に攻撃をしていく。
「逃げてばかりで、ちまちまと……そんな攻撃では俺を倒せんぞ!」
闇属性の魔王、悪魔にとって光属性は弱点であり、聖剣を持つ勇者は更に特効であるため、エリゴムに対し決定打にはならないものの、それなりのダメージを与え続けていた。頭に血が登ったエリゴムは自身のダメージを無視し、ロイに突進していく。
「混合魔法 《ホーリーフレイム》」
「まずは1匹ー!!《ダークラッシュ》」
「くっ……耐えろデュランダル!《ホーリーシールド》」
ロイは避けることも出来たが、自身が耐えることでイスカリオテの魔法がエリゴムに直撃させようと、聖剣を盾代わりにし、更に防御魔法を展開する。狙い通りエリゴムは背中にイスカリオテの魔法が直撃しながらもロイの防御魔法を砕き、後方に弾き飛ばす。
「ロイさん!大丈夫ですか!?」
「だ、大丈夫です!イスカリオテさん、相手も弱ったいます……トドメを!」
ロイの言葉通り、諸刃の突撃となったエリゴムは、かなりのダメージのためか、動きが鈍くなっていた。
「……!?わかりました!三属性複合魔法 《デルタディザスター》」
光、炎、雷の三属性が合わさった神級魔法がエリゴムに直撃する。エリゴムは悲鳴を上げることもなく笑いながら跡形もなく消え去った。
「ふぅ……ロイさん、大丈夫ですか?」
「……さすがです。最後の魔法はヒイロさんに匹敵する威力でしたよ。」
「奥の手ですよ。まだ成功率が低い一か八かの魔法です。今、回復しますね。《パーフェクトヒール》」
「そう易々と回復させるかよ!!」
今まで後方で、戦いを渋々と見ていたバティムが、エリゴムが消えた直後に参戦し、ロイとイスカリオテを回復させる前に分断する。
「……イスカリオテくん……ぼくは大丈夫です。これだけのダメージを受けていれば、新しいスキルが使えます……一気に決めましょう。」
「……ロイさん!?」
「……勇者スキル《ブレイブモード》」
うずくまるロイの身体から少しずつ目に見える程の白眼の闘気が溢れ出てくる。そして、ロイは聖剣を立ててなんとか立ち上がろうとする。
「……イスカリオテくん……なんでもいい……相手の気を引く牽制を!一撃で決めます!」
「……わかりました、合図するまで僕の後ろでそのまま目をつぶっていてください。……多重展開魔法 《フレイムボール》」
「今さら初級魔法など……死にかけの仲間にヤケクソにでも……!?」
次の瞬間バティムは驚き、すぐに戦闘態勢にとる。何故ならイスカリオテの頭上を数多の《フレイムボール》で埋め尽くされていくからだ。焦るバティムは、魔法を放たれる前にイスカリオテに攻撃を仕掛ける。
「ひっかかりましたね……これはたいして魔力を込めていない見せかけの魔法……だけど!!」
バティムがイスカリオテの目の前まで突撃してきた瞬間、頭上にあった《フレイムボール》が凄まじい閃光を放ち、バティムと骸骨騎馬はその凄まじい閃光に目を絡ませ、一瞬動きを止める。
「今です!」
イスカリオテはロイに合図をすると同時に横に飛んで避ける。ロイは目を開けた瞬間、溜めていた力を解放するように闘気を全開にし、奥義を放つ。
「奥義 《シャイニングストライク》」
一筋の光り輝く閃光がバティムと骸骨騎馬を一瞬で貫く。ロイの一撃により、バティムは骸骨騎馬ごと大きな風穴を胸に開けられ、断末魔と共に消滅したのだった。
「やりましたねロイさん!!」
「いや、やっぱりイスカリオテくんのおかげだよ……ヴァンジャンスさんの方は……」
「そういえば、戦闘の音が少し前から消えたような……!?」
ロイ達の戦いが決着する少し前にさかのぼる。
「な、なんだ貴様の強さは!?その神如き力は.…。私は六大魔王の一人なんだぞ!!」
魔王フルーレティーは既に瀕死の状態になっており、ボロボロになっている。
「……魔王?だからどうした?ただ単に貴様が弱いだけだろう……マテリアライズマジック《ウェッポンズ・タンク》」
ヴァンジャンスの前に、この世界では無いはずの大型戦車が次々と出現する。
「オートギア・ウェッポンズタンク……スタンバイ……オールファイア」
ヴァンジャンスの掛け声に数十台の戦車がランダムに急発進し、一斉に魔王フルーレティに向け、あらゆる方向から強力な魔力を帯びた大砲を何発も乱射する。フルーレティーも数台は撃破するものの、数の暴力に負け、瞬く間に砲弾の雨が降り注ぐ。
「ドゴゴゴゴォオ」
凄まじい爆発音が何度も鳴り響き、周囲に爆炎と煙が燃え広がり、辺り一帯の視界が黒い煙で覆われてしまう。そして、ようやく煙が消える頃には魔王フルーレティは跡形も無くなっていた。
「弱いな……魔王とはこんなものか……」
ヴァンジャンスは、魔法を解除し戦車を全て消すと、することもなくなり、近くの岩に腰を降ろし、ロイ達の戦闘をゆっくりと見ていた。
「あれが賢者と勇者の力か……」
ロイ達の戦闘を見て、2体の悪魔のうち、一体の悪魔を倒したところで、見飽きたのかそのまま岩にもたれかかり、腕を組みながら目をつぶる。
「ヴァンジャンスさーん、大丈夫ですか!?魔王はどこに!?」
ロイの声にヴァンジャンスは目を開け、周囲を確認してからロイに答える。
「……魔王なら倒した。」
「ま、まさか一人で!?」
「思っていたほど強くはなかった。」
「すごい……本当にヒイロさん並の強さだ。」
「ロイさん、ヴァンジャンスさんも、とりあえず軍隊と合流しましょう」
「あ、はい、そうですね」
「了解した。」
こうしてトキオ文明国で復活した魔王フルーレティとその配下達は、ロイとイスカリオテ、ヴァンジャンスの活躍により、倒された。ヴァンジャンスはロイ達も一緒に戻りながら呟く。
「……俺と同等の力を待つ男……まさかな……」
「……え?なんか言いました?」
「気にするな……独り言だ」




