短期決戦!
ヒイロ達は、そのまま合同で魔王配下が確認されたフクール国の森に向かっていた。現地に着くとすでに足止めをしている、フクール国の冒険者グループが複数おり、その代表らしき冒険者とナットがすぐに打ち合わせをして、ナットが代わりに指揮を取っていく。そしてアルト達がその中心となり、冒険者達を引っ張っていくこととなった。
アルト達は20歳前後と他のパーティーよりも断トツで若いものの、これまでの勇者ロイとの共闘やSランクに見合う実力をきちんと持っていたため、荒い冒険者達の中でも、一目を置かれているようになっていた。そしてヒイロもその話し合いに参加する。
「ナットさん、オレは魔王配下を倒したらそのままトチギル国に転移するようになるけど、残りは任せて大丈夫か?」
「あぁそのつもりでいてくれ。トチギル国の方には、一番距離の近い、ナガーサ国の冒険者達とギルドマスターのウォリーが応援に向かってくれているから、そこに合流してくれ!トチギル国のギルド本部に行けばいい」
「わかりました。じゃあこのまま先行して、先に突っ込みます。周りの魔物は無視して進むので、援護頼みます!」
「おぉ、まかせろ!」
ヒイロ達が向かったフクール国ハワイアの森には、ランクは低いものの、およそ100匹前後の魔物とその後方に魔王配下らしき悪魔がいた。そして先程、ナットとからの話しでは、このハワイアの森はフクール国の歴史的に大切な森らしく、神獣召喚のような大規模魔法は使えないため、単体で倒していくほかなかった。
ヒイロは神獣召喚せずに目の前の邪魔な魔物だけを倒しつつ進んで行く。そして、その後ろからアルト達が続き、ヒイロを援助し、道を開く。ヒイロが魔物達の集団を突っ切ると、魔王配下らしき悪魔を確認する。
「我が名はバルバトス。ほう……一人で来たのか?自ら魔王サタナキア様にささげる供物になりたいのか?」
「供物になるつもりはないが」
「そうか残念だ……だが貴様にその気がなくとも、このバルバトスが、嫌でも供物にしてやろう。」
バルバトスは、猟銃のような魔銃を持ち、人族の狩人のような姿をした悪魔だった。ヒイロはハワイアの森を意識し、魔法ではなく近接戦闘に切り替え、《神獣アスラ》と神獣合体を行なっていく。
「悪いが時間がない。速攻で終わらせてもらう。」
「ほぉ、すごい自信だな。だが、そうなるのは貴様の方だぞ《黒魔弾》」
バルバトスは、言い終わると同時に魔銃を撃つ。ふいをついてヒイロの脳天を狙ったものだったが、神獣アスラによる超速反応と上昇した身体能力によって、ヒイロは簡単に避けて見せた。
「なっ!?……確かにただの雑魚ではないようだな。なら、これは避け切れるかな《黒魔連弾》!」
バルバトスが無数の黒弾を連続で撃っていく。ヒイロはその黒弾を神具 《ダグザの棍棒》で弾きながら、最短距離でバルバトスとの距離を縮めていく。
「まだまだぁ《黒魔乱弾》」
今度は無差別の方向に撃ったバルバトスの無数の弾がそのまま様々な方向に乱反射したかと思うとあらゆる角度から黒弾がヒイロに襲ってきた。だが、それでもヒイロは冷静に黒弾を避けたり弾いたりしながら、さらにスピードを上げる。そのヒイロを追うようにして黒弾もまた折り返し後方から迫る。
そして、ヒイロはバルバトスの目の前に来て、両手で思い切りバチンと一度手拍子をする。いきなり目の前で大きな衝撃を受けたバルバトスは、一瞬怯む。その直後、黒弾が後方からヒイロにぶつかる寸前で、ヒイロが上へと超高速で避けると行き場を失った黒弾はそのままバルバトスに次々と直撃する。
「奥義《神の息吹》!そして、伸びろ 《ダグザの棍棒》よ!」
ヒイロは空中でそのままダグザの棍棒を伸ばし、奥義で身体能力が激増した状態で、思い切り全力でバルバトスに叩きつける。叩きつけられた棍棒は、そのままバルバトスごと地面をえぐり、大きな爆発音と共にバルバトスは絶命し、消えていった。ヒイロは、そのまま神獣合体を解くとナットに合流し、トチギル国に転移する。
「アルト、エイス、イルミ、ウルル!後は任せたぞ!」
「はぁ相変わらず早いねー!あいよ、任された!エイス、ウルル、イルミ、後は雑魚だけだ一気に潰すぞ!」
「りょーかい!」
「一気って言われても超級魔法使っちゃダメだから、めんどくさーい!」
「イルミは文句言わないの。ヒイロ兄、気をつけてね!」
「ありがとうウルル、行ってくる。」
ヒイロはそのままトチギル国へと転移魔法で急ぐ。そして、トチギル国のギルド支部を経由して、ナガーサ国のギルドマスター、ウォリーのところへと合流する。そして、すでにウォリーと冒険者達がトチギル国の王都に迫ったスタンピードの魔物と戦闘に入っていた。
「ウォリーさん、こっちの戦況はどうです!」
「ヒイロか!?今のところ魔物の侵攻は食い止められているが、小物が多いものの、数が500はいる。このままじゃ物量で押し切られる。」
「わかった、それから魔王配下は後方にいるんですね?」
「あぁ、かなり大きい魔物と厄介そうな紫色の鳥が無数に飛んでいる。ただ……現状、俺たちの力じゃそこまで突破口を開くのは難しい」
「わかりました、大丈夫です!オレが自分で道を開けてそのまま配下のところまで行きます。」
「助かる!」
「神獣召喚 《神獣タイタン》《神獣シヴァ》突破口を開いてくれ!」
「まかせろぉ!地底の奥底まで落ちるがいい!奥義 《メガクエイク》」
「最近活躍しっぱなしのシヴァ様の登場じゃ!全ての凍てつくせ!奥義 《極界零度》」
魔物のスタンピードの中心に大きな地割れが起こり、魔物達が次々と落ちていく。また空に飛んでいた魔物も一瞬で凍り、地割れの中へと落下していく。地割れが元に戻る頃には魔物の半数以上は消え、ヒイロの正面はすっかりガラ空きとなり、ヒイロはそのまま直進して進んで行く。
「よぉし、野郎どもヒイロの後に続け!」
呆気にとられていた冒険者達もウォリーの声に目を覚まし、勢い付いていく。
「うぉおー!」
「後は任せました!先へ行きます!」
「あぁよろしく頼む!」
ヒイロがスタンピードの中心を越え、後方に行くと一際大きなワニに乗った魔王の配下らしき悪魔が見えた。
「魔王配下の悪魔か?」
「そうとも、六大魔王筆頭ルキフゲロフォカレ様が配下、アガレスでございます。」
「そうか、あんたに一つ聞きたいことがある。あんたは魔神復活の条件を知っているのか?」
「知ってるも何も、私が考えることではございません。全ては我が主人の魔王様がお考えになること。私はただ、魔王様のために人類をより多く葬るのみ。」
「そういうものなのか。それじゃあ仕方ない。遠慮なくあんたを倒させてもらう。」
ヒイロは《神獣ハーデス》を召喚し、神獣合体を行なっていく。
「行きなさい、我がグランキングリザード!」
ヒイロが超巨大ワニの噛みつきを避けると、ワニの勢いは止まらず、そのまま周りにいた魔物を踏み潰す。そして今度はワニの尻尾がヒイロに襲いかかる。ヒイロがその尻尾も避けると正面から紫色の鷹のような鳥が襲ってきた。ヒイロは鳥の爪をギリギリで掠りながら避けると、ヒイロの後ろにいたワイバーンに鳥の爪が刺さる。その瞬間、ワイバーンが石となり落下していった。
「危なかった……ハーデスの状態異常無効がなかったらオレも石になっていたかもしれない。」
「極魔鳥コカトリスの石化が通じない!?石化に対する高耐性でもあるのですか……まぁいいグランキングリザードに食いちぎられてしまいなさい。」
巨大なワニと紫の鳥が次々に攻撃を仕掛けてくる。
「避けてばっかりじゃ時間がかかるな。同時に仕留めてやるか。」
紫の鳥が向かってきた瞬間、ヒイロは避けるのではなく、神具 《アダマスの鎌》の石突部分で思い切り、巨大なワニの方にへと弾き飛ばす。そして、ワニと鳥が重なった瞬間にヒイロが一気に仕留めにいく。
「全てを飲み込め!奥義 《ブラックホール》」
ブラックホールが周辺の魔物もろともワニと鳥も飲み込んでいく。
「ば、バカな……こんな簡単にグランキングリザードとコカトリスを倒すなんて……。」
「それだけじゃない。これからお前も倒されるんだよ。」
ヒイロはそのまま呆然としているアガレスの後ろに移動し、神具 《アダマスの鎌》で袈裟斬りに切り裂く。
「わ、私は偉大なるルキフゲロフォカレ様の忠実な配下……こんな簡単に倒されてたまるものか!貴様も道連れだ。苦しんで死ぬがいい……ぐふっ、少しでも触ったら終わりだ……《呪怨魂》」
ヒイロに呪いの塊のようなどす黒い球が飛んでくる。だが、ヒイロは《アダマスの鎌》で難なく呪いごと切り捨てる。
「悪いな……呪いも効かないんだ。」
アガレス「く、くそー!!!」
アガレスはそのまま叫びながら消え去っていった。




