子ども達の成長
魔王ネビロスとの死闘から約3ヶ月が経っていた。その間、魔王やその配下の動きはなく、少しの間、世界は平和に保たれていた。
ヒイロの息子、ホープも生後6ヶ月になりヒイロの英才教育により、幼い頃のヒイロ同様、かなりの早いペースで成長していた。前世の記憶もない息子が自分と同様のペースで成長していること自体、驚くべきごとだったが、それ以上にホープは、すでに無自覚ながらも魔力を感じているようで、妖精の姿でさえも見えてるようだった。
「あ、うーばぁー」
(あ~あぁいうの懐かしいなぁ。よく赤ちゃんクラスにヘルプに行った時、あぁいう姿を見て、天使が見えてるんだね~とか、よくみんなで話してたな)
何もない空間に向かって笑いかけたり、追いかけるホープを見て、前世での記憶を思い出すヒイロ。ただ今は、妖精が見えるヒイロにとって、ホープが普通の人には見えない妖精を追いかけたり、目で追っていることがよく分かる。
「ホープ、妖精さんが見えているのかな?」
「うーあ、きゃはは」
ヒイロが妖精を手の平に招き、ホープに見せてあげると、声をあげて喜んでいた。そしてホープも同じように両手でお皿を作ると、妖精達は喜んでホープの両手に移動する。
「ミーナ……ホープは魔法の才能ならオレよりも上かも知れない……」
「ヒイロよりも?すごいねー、ホープ!」
「マ、マー」
「よしよしホープは、甘えん坊ですね。こっちにおいで……きゃー」
ミーナは床の段差につまづき、転びかけたその時、ホープが両手を前に出すとミーナは、床にぶつかる寸前で止まり、そのまま元に戻った。
「す、すごい!ホープお前がやったのか?」
「マ、マー」
「すごい……ホープ!ありがとう!!」
「今のはどの属性魔法とは違う、妖精が力を貸す様子もなかった……この念力のような力……無属性魔法かもしくはユニークスキル……」
「あう?」
「はぁ、自分の子どもながら末恐ろしい……。」
その後もホープは家の中で時々宙に浮いたり、物を自在ひ動かして遊ぶ姿が見られるようになっていった。
ヒイロが指先の微細運動や全身を使った粗大運動をホープにさせようとすると、指先ではなく、その念力のような力で細かい作業をしようとしたりするので、成長の発達がうまく出来ないと、心配もしていた。
だが、結局その分、魔力操作や魔力自体が強くなるだろうと思い、そのまま様子を見ながら続けていった。そしていつのまにか、その無属性の魔法の他にも、常に妖精の力を借りた属性魔法を使うようになっていた。それも妖精の方から危険がないように魔力調整をしてくれるほどだった。
その後も平和な世界が進み、ヒイロもホープの英才教育に力を入れつつ、国からの発注クエストやギルドから直接頼まれたクエストなど行う日常を送っていた。
ホープもそのまま、すくすくと成長していき1歳になる頃には、言葉もある程度理解し、無属性魔法の威力も格段に上がっていた。それは、同時期の頃のヒイロと比べ、身体能力全体には劣るものの、ホープは魔力が飛び抜けていた。
また知力も前世の記憶がない分、ヒイロよりは知力は劣るものの、魔法を使うイメージや制御をするために飛躍的に伸びていたのだ。
「魔法については5、6歳になったら教えようと思ったが、すでに賢いし、魔法もすでにある程度制御して使えてるから、もう少ししたら、少しずつ教えていくかな。」
それから少し時が経って、落ち着いていた魔王達が姿を現しはじめ、各国で動きが活発になり、少しずつ被害が出てくるようになっていた。ヒイロもすぐにミトのギルド本部に招集され、魔王討伐に向かう事となった。
復活したのは六大魔王のうちの2柱、ニイガル国とトキオ文明国に同時に出現したのだ。そしてその他にも魔王の配下と思われる悪魔2体がイバール国の隣国で、小国のトチギル国のフクール国の2国にも現れたとのことだった。
ニイガル国には魔王とその配下の悪魔も2体おり《天下無双 エング》と《ゴーレムマスター エメル》 《雷帝グラン》 《天空の魔女シルフ》のヒイロ以外の4人のSSランク冒険者が行くことになっていた。
また同じくトキオ文明国にも魔王とその配下2名が現れており、《勇者ロイ》と《賢者イスカリオテ》、そして彗星の如く現れ、新しくトキオ文明国で、ヒイロよりも最速でSSランクの冒険者になったユニーク天職 《機械技師》のヴァンジャンスと言う男だった。歳は25歳らしいが、ヒイロが気になったのは天職だった。明らかにこの世界の天職じゃなかった。
(機械技師……マシンエンジニア……?そして一気にSSランクになれる力。オレと同じ……か、いきなり現れたのなら転生じゃなくて、前世と同じ状態で飛ばされる……確か、異世界転移者とか言う……)
そして、ヒイロだけが単独でニイガル国とトキオ文明国以外の2つの小国を、転移魔法の機動力を活かしての担当となった。
(……まぁそのうち会えばわかるか。それに……場合によっては2つの国を無事に解決出来たら、最悪どちらかに支援に行く必要があるかもしれない。とりあえず、急いで行くしかないか)
こうして、ヒイロは小さな疑問を残しつつも急いで隣国のフクール国の方から魔王配下の討伐へと向かった。フクール国はイバール国に比べて、人口も少なくかなりの小国だったため、転移魔法で行ったことがなかった。逆にトチギル国の方には、同じく小国であったが、クエストで一度だけ、行ったことがあったからだ。
2国とも普段は高ランクの魔物はほとんど存在せず、とても平和な国であり、自国で管理する冒険者ギルドもかなり小さかった。そのためフクール国は隣国で友好国であるイバール国の冒険者ギルドの支部となり、トチギル国の冒険者ギルドもナガーサ国の冒険者ギルドの支部として、援助を受けていた。
今回も魔王配下という国家レベルの問題であるため、フクール国には、イバール国のギルドマスター ナットが魔王配下の討伐責任者として、先に向かっていたのだった。
ヒイロはかなりの高速移動で急ぎ、なんとか作戦本部であるギルドのテントを見つけ、ナットのところへと合流する。そこにはナットの要請で同行している何組かの冒険者パーティーが集まっていた。
「ふぅ……やっと着いた。久しぶりに長い距離を移動したな。そのうち行った場所じゃなくても、すぐに向かえる便利な魔法考えとくかな……」
「ヒイロ兄!」
複数の冒険者パーティーをかき分け、アルトとエイスがヒイロの元へと走ってきた。
「……アルト!エイス!お前達も来ていたのか?」
その後ろの方には、ウルルとイルミの姿も見える。
「ふぅ……Aランク以上ですぐに向かえたのが、たまたまオレ達だけだったんだよ……」
エイスがそう答えると、ヒイロの姿を見つけ、同じく話に近づいてきたナットが怒る。
「こら、たまたまじゃない!貴様らはもうSランク冒険者だ!もっとシャキッとしろ!」
エイスがナットに頭を叩かれている。それをいつものように無視をし、イルミとウルルがヒイロに抱きつく。
「久しぶりー!今回はヒイロ兄の後方支援だよー!」
「ほんとヒイロ兄の支援だから、すごく安心する!」
ナットが他の冒険者も集め、話を始める。美少女2人に抱きつかれているためか、何故かヒイロの方に殺気のような視線も感じる。
「ヒイロ、着いて早々すまないが、話しを始めるぞ。今回はSSランク冒険者のヒイロに魔王配下を単独で任せる。そして、Sランクパーティーの《森の家》を中心に我々イバール国の冒険者と、すでに現地で魔物達の足止めをしているフクール国冒険者との合同で、その援護と周り魔物の討伐を行う。」
「わかりました……アルト……お前らも油断するなよ。」
「わかってるって!」
アルトが親指を立て、リーダーのとしての覚悟を決めた顔をしており、その頼もしくなったアルトの顔を見て、初めて会った時の頃を思い出し、子ども達の嬉しく思うヒイロだった。




