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激突!!グラシャラボラス!

 難なく地下10階層のフロアボス・ベヒーモスを倒したヒイロとグランは、そのまま地下11階以降に進んでいた。すでにAランク以下の魔物は出てこず、かわりにS~SSランクの魔物がそのほとんどを占めていた。


 それも今までの魔物と違い、出口の方向に向かうのではなく、ヒイロ達の攻略を阻むように襲ってきていた。こうなると流石に進むことだけに専念出来ず、極力戦わないように進むには限界があった。


 そのため、ヒイロも出来るだけ早く進めるように《神獣アスラ》を召喚して《神獣合体》をしていた。《神獣・人神アスラ》の能力は、圧倒的な身体能力の向上であり、神具と呼ばれるその武器は、《神具・ダグザの棍棒》という棒で、その硬度はもちろん、伸縮自在であり打撃特化の武器だった。


 急にいつもの何の効果もない普段着のヒイロから、白い羽衣に金の帯びを巻いた神々しい姿に変わり、さらにその実力も格段に強くなったヒイロを見て、グランが腰を抜かしそうになるくらい驚いていたが、今更隠すこともないため、急かすようにそのまま奥へと進んだ。


 初めて人神アスラの能力を使った時は、その圧倒的な身体能力向上により、身体への反動が強烈で、使用後は身動きが取れないほど全身が筋肉痛になっていた。ただ今のヒイロはその時よりも身体能力があがり、さらに神獣合体の効果により、身体への負担は衣になってくれている人神アスラが、かなりの負担を軽減してくれている。

 

 もちろん神獣召喚により直接能力を使用した時に比べると、その身体能力向上の上昇率は、数段は下がってしまうが、それでも神獣合体をしたヒイロの力はSランク、SSランクの魔物に対し、ほぼ一撃の打撃のみで倒す程の能力だった。もちろん攻略スピードは格段にあがり、後半はほぼヒイロのみで攻略する勢いだった。


「まさに《神降ろし》じゃな……。それよりヒイロよ、お主も気付いておるか?」


「はい、この階だけ雰囲気がまるで違いますね。」


「たぶんこの階じゃろうな、そのグラシャラボラスとかいう魔王の配下がおる場所は……」


 それは地下18階ほどにまで攻略した時だった。その階層に入った瞬間、最初にヒイロがこのダンジョンに入り感じた禍々しさが、より一層濃くなったのだ。そしてとうとう2人は、フロアボスの部屋と同じような入り口の扉を見つける。


「ここ……ですね。グランさん大丈夫ですか?」


「平気じゃ、さっき魔力回復薬などは飲んだばかりだからのう」


「わかりました。僕のこの能力も、時間の制限があるので、出来ればこのまま入りたいです。」


「わかった。それじゃあ覚悟を決めるんじゃぞ」


 ヒイロとグランはその扉を開け、中へと入る。部屋に入った瞬間、殺気とも取れる強烈なプレッシャーに、それを放っている魔物こそが、魔王配下のグラシャラボラスだと、2人の直感する。その異様な姿の悪魔は、大きな鳥の翼が生えた巨大な狼のような顔と体をしており、その狼にも似た顔の額には大きな角が2本生えていた。


「ようこそ、我がダンジョンへ。確か名前はヒイロと言ったか?我が思っていたよりも早く会うことが出来たな」


「そうだな。まぁ魔王復活と聞けば誰だって急ぐさ。……一つ確認だが、ここであんたを倒しても、その魔王とやらは関係なく復活するのか?」


「ハッハッハ、当然だ。我はただ主人の復活を待っているにすぎぬ。そして、我が魔王の配下の悪魔は我を含め、3柱おる。それぞれ、主人である魔王ネビロス様の復活を待っている。貴様らは我にとって、その間のただの暇つぶしだ。」


「そうか。じゃあ、あんたはこれからその暇つぶしとやらに倒されるんだな。」


「そうじゃのう。あんまりおしゃべりなもので驚いたが、時間は過ぎる一方でな、そろそろ始めようかのう。」


「……良かろう。せいぜい我を楽しませてみよ。」


 グランは、距離を取るように後方に下がりながら魔法を展開する。そしてヒイロは、逆に《神具・ダグザの棍棒》を構えたまま、グラシャラボラスに接近戦を挑んでいく。対してグラシャラボラスは、その大きな翼で魔力の帯びた突風を放ち、グランの魔法を簡単に跳ね返し、ヒイロの棍棒による強力な打撃もその前足の爪で簡単に弾き返す。


「なっ……まさかこんな事でわしの魔法を……やはり簡単には行きそうにないのう。」


「グランさん、奴の爪はかなり危険です。たぶん、一度でもまともにあたると致命傷になりかねません。俺が前衛で奴の攻撃を防ぎますので、後方から魔法で支援をお願いします。」


「……そうじゃな。すまんがその方が良いかもしれん。」

 

 グランは自身の極雷魔法では、ダメージを当てる事が難しいと悟り、牽制をするように威力よりも手数を増やしていく。グラシャラボラスは、その牽制を翼で跳ね返すか、避けるかしながら、ヒイロの棍棒も前足の爪や尻尾で難なく対応する。


 グラシャラボラスが始めから本気を出してヒイロ達を倒しに来ていたなら、まず足の遅いグランから倒しに来ていただろう。だが、あえてそれをせず、2人の攻撃を受けながら真正面からヒイロとの戦いを楽しんでいる。


 人神アスラとの神獣合体により、今のヒイロの棍棒は、SSランクの魔物でさえも、本気で振れば一撃で吹きとばすことが出来る。だが、グラシャラボラスは、その一撃も受け止めるだけでなく押し返してくる。そして超級を超える威力を持つグランの極雷魔法でさえも、やはりグラシャラボラスの翼で吹き飛ばされ、ダメージを与えることが出来ていない。


 ヒイロは、どうにかグラシャラボラスにダメージを与えようと、一旦距離をとり、グランの魔法を牽制にして、全力のスピードで死角に入り、グラシャラボラスの急所と思われる腹部や喉を狙うが、そこには強度の高い風の防御魔法が施されており、渾身の一撃もダメージには繋がらなかった。


 ただ流石にグラシャラボラスも、ヒイロの棍棒を強度の高い爪や尻尾以外の身体では受けようとはしなかった。そして、グラシャラボラスが、風の魔法攻撃や爪、尻尾での攻撃をヒイロに対して行うが、反射速度も大幅に向上しているヒイロは、グランのサポートもあって何とか防いでおり、膠着状態が続く。


「どうした、そんなものか?自信が合った割には、まったく我にダメージを与えておらんぞ。」


「それはお互いさまだろう……」


(でも、このままでは時間制限のある不利だ……仕方ない、結構賭けになるけど、奥義で一気にかたをつけるしかない)


(神獣アスラよ、奥義の名前を教えてくれ)


(私の奥義の名は《神の息吹》。魔力を消費している間、身体能力がさらに激増する。ただ、以前も経験したと思うが、その反動は強く、負担も大きいから連続では使えないぞ)


(なるほど……今の俺の魔力ならどれぐらい持つ?)


(そうだな……もって半刻が限度だろう)


「……そうか。グランさん、少しでいいんだ、奴の隙を作ってくれるか?その瞬間に一気に叩く。」


「……了解じゃ、任せておけ。こうなったらわしの全魔力を持ってらとびきりの魔法をくれてやるわ。準備はいつでも良いぞ」


 グランは、牽制の魔法をやめ、一旦距離を置いて魔力を限界まで練っていく。


 グラシャラボラスは、その様子に気付いていたが、邪魔するような野暮な真似はせず、目の前のヒイロに集中する。

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