SSランク冒険者《雷帝グラン》
ダンジョンに侵入したヒイロは、同じくSSランク冒険者の《雷帝グラン》とともに、順調にダンジョンの奥へと進んでいた。
ほとんどの魔物が、ダンジョンの出口に向かって進んでくるため、次々に新しい魔物と遭遇してしまうが、先を急ぐ戦いでもあるため、2人は出来るだけ魔物を選別しながら進んでいく。そのためAランク以下の魔物は直接襲ってこない限りは無視して進み、出口で待っているはずのエメル達に対応を任せることで、すでに地下8階まできていた。ここまで来ると、ほとんどSランクの魔物しかいないため、出口の方向に進もうとする魔物だけを優先に倒していく。
ただ、その数も一定以上増えてから出口へと進むのか、徐々に少なくなってきていた。
「今、たぶん8階まで進んで来たと思いますが、このダンジョンの深さは一体どれくらいまであるんでしょうね?」
「そうじゃな……。ここのダンジョンが今まで見つかってなかったことを考えてみると、出来立ての新しいダンジョンのはずじゃが。ダンジョンはそれぞれ大きくなるペースは極端に異なるから一概には言えんのう。まぁ、どんなに早いペースで拡張しても、せいぜい地下20階まであればいいところじゃろうと思うが。」
「やはりそれぐらいですよね。今のところSランクの魔物までしか出てきていないけど、その魔王配下のグラシャラボラスは、きっとこの前のデーモンキングを超えるSSSランク以上になるはずだからさらにランクが上の魔物も増えてくるはずです……。」
「まぁ魔王の配下となれば当然じゃな。」
「あとは、10階のエリアボスと11階以降の魔物ですね。9階に行ったら1度休憩して対策を練りましょう。」
「良かろう。……とりあえずあそこの魔物は、わしがやろう。極雷魔法 《球雷》」
人の頭ぐらいの大きさの球体の形をした雷が、対象の魔物にまっすぐ直撃したかと思うと、凄まじい雷鳴とともに、Sランクのキマイラに激しい雷撃が爆発したかのように弾ける。本来、キマイラは雷のブレスも使うため、雷に対してそれなりの耐性があるはずだったが、グランの極雷魔法は、耐性など関係なかったかのように、一撃でキマイラは黒焦げにし、絶命させていた。
そしてヒイロもまた、今のところ《神獣召喚》や《神獣合体》を使うこともなく、相性のいい属性を使い分けることで、《妖精魔法》のみで魔物を順調に倒すことが出来ていた。2人の疲労もそこまで無かったが、ダンジョンも9階を攻略したところで、念の為2人は休憩をとっていた。
「外のエメルさん達は大丈夫でしょうか?」
「大丈夫だろう。エメルのゴーレム魔法は、強力じゃ。能力上も少数よりも対多数に向いておる。それに、ギルドマスターのウォリーも引退はしたが、あぁ見えて元Sランク冒険者じゃから、これぐらいの魔物なら大したことはなかろう。」
「そうですか。しかし、グランさんの極雷魔法も本当にすごいですね。上級魔法をかるく超えて、超級以上の威力がありますよ。」
「まぁな、わしのは特別じゃな。ユニークスキルというやつじゃ。それにお主の魔法も同じぐらい超級並みの威力が、あるではないか。わしは雷魔法のみだが、お主は属性も色々使えるようだしのう!」
「妖精魔法と言って、同じユニークスキルみたいなものです。幼い頃から妖精が見えていたので、直接妖精に頼んで、通常の上級魔法よりもより多くの力を貸してもらえるようにしたんです。それに属性も、物心ついた時には7属性全て使えてました。」
「さすがじゃのう……それに《神降ろし》と言われるからにはそれだけじゃないのじゃろう?」
「そうですね。きっとそのグラシャラボラスという悪魔の時にはお見せ出来ますよ。それでは、そろそろ行きますか。10階のエリアボスはどんな魔物でしょうね。」
「まぁそればかりは出たとこ勝負じゃが、見たところ魔獣系統が妥当などころじゃな!」
ヒイロとグランは10階のボス部屋まで向かう。広いボス部屋の中にいたのは、グランの予想通り、魔獣系統の中でも最強クラスを誇る、SSランク最強と呼ばれる巨大なベヒーモスだった。そして、そのベヒーモスはヒイロ達を見つけるなり、大きな爪を前面に出し、いきなり突進してきたのだった。
「なんじゃベヒーモスか、めんどくさい相手じゃのう。魔法は効かんでもないが、体力と力が桁違いに多いからのう。とりあえず攻撃を避けながら地道に削っていくしかないぞ。極雷魔法《万雷》」
「わかりました!こちらからも行きます!妖精魔法 《フェアリーブレイズ》」
ベヒーモスの突進を左右それぞれに避けた2人は、そのまま左右から雷と炎の魔法を直撃させる。だが、左右から挟み撃ちを受けたはずのベヒーモスは、ものともせずそのまま、左側に避けたヒイロに向けて急激に方向転換をし、その大きな巨体で飛びかかる突っ込んできた。魔法を直撃をさせたことで少し油断してしまったヒイロは、回避行動を取れず、とっさに風の上級魔法 《エアロバリア》で身を守るが、そのバリアごとベヒーモスの巨体に吹き飛ばされ、ダンジョンの壁に激突した。さらにベヒーモスの勢いは止まらず、そのまま壁にめり込む形となっているヒイロに向けて突進してくる。
「っつう。なんて馬鹿力だ。横がダメなら今度は真正面から思い切りやってやる! お返しだ!妖精魔法 《フェアリーストーン》!」
「ベヒーモスよ……いいのかのう、わしにその大きな尻を向けて……こっちも痛いぞ。極雷魔法《熱界雷》」
前後からの強力な魔法にさすがのベヒーモスもダメージが重なり、動きが鈍くなる。その様子を見た2人はさらに続け様に強力な魔法を放っていく。
「妖精魔法 《フェアリーウインド》」
「妖精魔法 《フェアリーブレイズ》」
「極雷魔法 《万雷》《迅雷》」
激烈な魔法の連続にベヒーモスも、なすすべもなく瀕死の状態になり、グランがトドメの一撃を放っていく。
「神雷魔法 《黒雷霆》!!」
巨大な黒い雷の球体が現れ凄まじい雷が渦のようにうねりながら、ベヒーモスを飲み込むように直撃する。そのベヒーモスの大きな身体全体が黒い雷の渦に飲み込まれたかと思う、その黒い雷の球体の中で、激しい雷鳴が爆音を立てる。その威力は、今までのグランの極雷魔法やヒイロの妖精魔法をも超える規模の魔法であり、さすがのベヒーモスもその黒い雷が消える頃には、大きな巨体がズタズタに切り裂かれ、絶命していた。
「す、すごい。まさに《雷帝》……。」
「少しやり過ぎたかの。まぁいい、ほら次の階に急ぐぞい。」




