夢に向けて
ナガーサ国の首都タウンセンにあるダンジョン《タウンセル》に行ってから、はや1週間が経っていた。その1週間のあいだ、ヒイロとミーナは忙しくいつも以上に動き回っていた。理由は、アルト達が住んでいる《森の家》に続く、二つ目の孤児院《海の家》の設立に向けての準備だった。
これから世界中に孤児院を増やしていくためには、ヒイロ個人の収入では、必ず限界がくるため、国からの支援も必要になってくる。
その要請をするために、ヒイロは1代限りの名誉貴族と同格の権限を持つことが出来る、Sランク冒険者になったと言っても過言ではない。さらに今まで進展のなかったダンジョン《タウンセル》を一度に地下10階まで進んだと言う、実績も相まってナガーサ国からの支援を働きかけることが出来たのだ。
結果、今度の孤児院《海の家》は、国からの支援を受けながら設立運営するようになり、さらには地域の教会からも援助をしてもらえるようになった。そのため、オオタルの街の孤児院《森の家》に比べ、3歳~10歳と年齢が幼い子が多い《海の家》は、ヒイロやミーナだけでなく、教会の神父やシスター、お手伝いさんなどの大人達が生活や身の回りの援助をしてくれるようになる。
それでもヒイロは、いずれは《森の家》の子ども達。アルトやウルルのような自立ができるように、自分が前世の知識を元にして作ったマリアモンテ教育とシュタイ教育を、しっかりと幼い頃から取り組めるようにプログラムと環境の準備を入念に行った。《神の祝福》と言う、絶対のルールがある中で、子ども達自身が親も家もない孤児だったとしても、将来自分達がなりたい天職を見つけ、それに授かれるようなに支援を行い、しっかりと自立した生活が出来るようにしてあげたいと、ヒイロは心の底から願っていたのだ。
忙しさもひと段落したその日の午後は、時間が出来たため、ミーナと転移魔法でオオタルの街へと戻っていた。転移魔法を使えば、いつでも帰って来れたのだが、いつのまにか約3か月ぶりの帰郷となってしまっていたのだ。そのため最初に2人はお互いの実家に行き、両親に会ってから《森の家》に来ていたため、夕方になってしまっていた。だが、タイミングよく、ちょうどアルト達もギルドから帰ってきたようで、久しぶりの再会にみんなが驚き、喜んでいた。
「ヒイロ兄、ミーナ姉も元気だったか?」
「元気だったわ。みんなは?」
「もっちろん、この通り元気だよ!子ども達もみんな変わりないし!」
「今のところ、冒険者としても無理なくクエスト達成出来て、安定した生活が出来てるから平気だよ!」
「良かった。あ、あとアルト……オレの両親に、少しだが施設の運営費としてお金を渡してきたから、いつでも無理せず頼るんだぞ。」
「ありがとう。やっぱりまだまだヒイロ兄のようにうまく稼げないから、金銭面は少し心配だったんだ。」
「でも、ミーナ姉の両親もヒイロ兄の両親も毎週のように来てくれてるから、幼い子ども達もすっかり懐いて大喜びだよ。」
「そっか、お母さん達、よく来てくれてたんだ……良かったわ。あ、そうだ!はーい、それではみんなにたくさんのお菓子のお土産だよー!」
子ども達はミーナの周りに集まってくる。
「わーい!!ミーナ姉ありがとうー!」
幼い子ども達をミーナに任せ、ヒイロはアルト達と話しを続ける。
「そういえばヒイロ兄、今はどのへんに住んでるんだ?」
「今、ナガーサ国の首都タウンセンにいる。実はそっちでも《森の家》に似たような施設を作ったんだ!」
「へぁ~そうなんだ!そっちも孤児院てやつ?」
「あぁ、でもまだ子ども達もお前達に比べたら全体的に年齢も幼いから、近くの教会から大人の人手を支援してもらってる。」
「そっか、私達は大丈夫だから!そっちの子ども達を助けてあげて。まだ住み始めたばかりだと不安ばっかりで寂しい思いもしてるだろうからさ。」
お菓子を子ども達に配ったミーナが戻ってくる。
「ありがとう、ウルル。そうよね、あなた達が一番子ども達の気持ちがわかるものね。そう言えば、なんと!この3ヶ月間で、ヒイロの冒険者ランクがまさかのSランクになりましたー!」
「はや!?だって、ここ出る時まだDランクだったよね!?ん~もう少ししたら追いつけると思っていたけど、あっという間に最高ランクのSランクかぁ……さすがヒイロ兄!!」
「すごいだろ~アルト!まっ、たまたま運良く偶然が重なっただけだよ」
「そっかぁ!んじゃさ、ある程度新しい生活にも落ち着いてきたんでしょ?そんなら、2人とも自分達の子どもは?出来たのか?」
エイスがいつも通り爆弾を落とす。
「ブッ!?このおバカ!今は、新しい孤児院で忙しいって話をしてたところでしょー!」
顔を真っ赤にして怒るミーナに対し、イルミが茶化す。
「うふふ、ミーナ姉の顔、真っ赤!かーわいー!」
久しぶりの再会に、夕食を《森の家》で、子ども達と一緒に食べてからヒイロ達はタウンセンの街に帰った。
「みんな元気そうで良かったな。やっぱりあいつらには、面倒をかけてるからなぁ。」
「そうね。でも、あの子達ならきっと大丈夫。いつか、こっちにいる子ども達とも会わせたいわね。」
「そうだな。明日はそろそろ、久しぶりにまた資金稼ぎにダンジョンに行ってくるよ。」
「わかったわ、気をつけて。ヒイロの夢のためにはお金も大切だけど、無理だけはしないでね」
「わかってるよ、おやすみミーナ」
「おやすみ、ヒイロ」
2人は、久しぶりに手を繋ぎ、ゆっくりと一緒に眠った。




