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自分が本当にすべきことはなにか

 次の休みの日、今度は森の家の長男である、アルトを連れて魔物の森に来ていた。


 アルトは、出会った頃から、他の子にはない優れた集中力があり、また森の家の長男として過ごしてきたこの3年間で培った忍耐力と視野の広さから、ヒイロに天職《狩人》を勧められ、狩人を目指すようになっていたのだった。


 お調子者で常に楽観的なアルトでもあったが、根は真面目で努力家であるため、ヒイロから特訓やアドバイスを受けるだけでなく、常に自ら自己鍛錬を行っている。


 今回アルトは弓の他に、ナイフも近接予備として準備していた。それはヒイロのアドバイスでもあり、ゴブリンの耳のように証明部位を剥ぎ取る時や、トドメを刺す時など何かと、あると便利なのだ。そしてまたヒイロも、アルトに合わせて自作の弓とナイフを準備していた。


 ヒイロやアルトが持つ、いわゆる普通の弓矢では、ゴブリンを倒すのには、かなりの技術がいる。魔物は通常の獣などと違い生命力が強く、特に弓矢でゴブリンに、一撃で致命傷を与えるには、脳天に直撃させないと確実ではないからだ。それに当たり前のことだが、自分に向かってくる相手や動きまわる相手は難しい。


 そのため、熟練者でもそうなのだが、基本弓矢で魔物と戦う場合、弓の射程ギリギリの距離から狙う、先手必勝の不意打ちが良しとされる。


 ゴブリンもそうだが、同じFランクのホーンラビットもまた、同様に難しい。身体に当てればある程度致命傷にはなるのだが、的になる身体が小さく、敏感で常に動いているためだ。


 本来、まだ見習いにもなっていないアルトが魔物相手に狩りをするには早すぎるのだが、今回はどうしてもアルトがついてきたいと言うため、クエスト達成の効率は考えずに、アルトの野外訓練と考えて、ヒイロは渋々連れてきていた。



 アルト自身も、普段は一人でも鳥や鹿などに対して狩りを行っていたため、自信があったようなのだ。まずはヒイロが弓で見本を見せる。


 ちょうど良い距離にいて、まだこちらに気づいていない単体のゴブリンを探して、ヒイロが弓矢を放つ。ヒイロの身体能力からすれば、あまり使い慣れない弓であっても、脳天への直撃が難しい距離ではなかったが、あえてゴブリンに致命傷を与えることの出来ない肩に矢を当てる。


「グギァーッガァ……グァギャ……ガゥ」


 肩に傷を負ったゴブリンは、奇声を上げながら周囲を見渡しヒイロ達に気付くと、持っていた木の棒を大きく振りかざしながら襲ってくる。アルトはその迫力に蹴落とされ、かなり同様していたが、ヒイロは冷静に次の矢を放ち、ゴブリンの脳天に直撃させる。


「どうだったアルト?普段、矢を外しても逃げてしまうだけの鳥や鹿とは比べものにならないくらい、魔物は違うだろ」


「うん……1度目の矢で、あれだけの傷を負ったのに、殺気なのかかなりの迫力で、迷わずこっちに向かってきた時は……正直、焦った」


「そうだな。魔物相手だとそういうことは良くある。弓の場合も距離が離れてるからと言って油断せず、常に冷静で、いつでも次の矢を放てるように準備をしておけよ」


 急に緊張感が増してきたアルトに対し、ヒイロは笑いながら自分がいるから大丈夫と安心させつつ、次の標的を探していく。


 魔物の森の入り口付近を、獲物を探しながらゆっくりと進んでいく。ヒイロはスキル《探索》を使い、単独でいる獲物を探す。するとちょうど良い獲物を見つけた。木の下で眠っているホーンラビットである。アルトに手のジェスチャーで静かに伝え、2人は正面に回り込む。


 次はアルトに狙わせていく。ホーンラビットは眠っているため、動きは止まっていた。アルトは一度深く息をすると、一気に集中力を高め、狙いを定めていく。


 だが、アルトが弓を引く瞬間、後方から急に動物の鳴き声が響き、咄嗟に弓を引いていた手を離してしまった。矢は少し狙いがずれ、ホーンラビットの背中をかすった。その直後ホーンラビットは飛び起きると、アルトを見つけ、怒りに身を任せて角を突き出し突進して来た。


 アルトは一瞬でパニックになり、後退りをしてしまった。隣にいたヒイロが、すかさず、弓を引き、仕留める。それからも同じように繰り返し、アルトが仕留めきれなかった獲物をヒイロがトドメをさす形で、順調に狩っていくことが出来た。


 前回の休みと同じく3時間行い、結果はゴブリン2匹とホーンラビット5匹のまずまずの収入になった。それよりも1人でも動物を仕留められるようになり、それなりに自信を持っていたアルトが、今回のことで過信を改め、魔物の怖さと実力不足を経験出来た方がかなりの収入だった。


 冒険者ギルドで換金した後、森の家にお土産を買って行くため、2人は街の露店通りを歩いていく。買い物をしている途中、アルトは昔の自分達と同じような子どもを偶然見つけた。8歳前後だろうか、その子どもは、路地裏で痩せ細り気力なく横たわっていた。アルトはすぐに駆け寄る。ヒイロも続き、空腹や栄養失調にはあまり効果が期待できないが、回復魔法を施し、アルトとともに森の家に連れ帰った。


 森の家で数時間看病をしてると、その子の意識が戻り、話しをすることが出来た。名前はオリーと言い、年齢は9歳だった。読み書きが出来て、賢いオリーは行商人の子どもだったらしい。


 両親はこのオオタルの街に商売をするために、ヒイロ達が昼間、狩りをしていた魔物の森の近くの公道を進んで来たらしい。ただ不運なことに、魔物の森の中でもあまり見ることのない、10数匹のゴブリンの大きな群れに襲われたのだ。護衛の冒険者も雇っていたが、オオタルの街という比較的安全な街のため、そこまで高ランクのほを雇っていなかったちめ、数の多さに太刀打ち出来ず、殺されてしまったそうだ。オリーの家族も出来るだけ逃げたのだが、オリーだけでもと、自分達を犠牲にして逃がしてくれたため、ゴブリンからはなんとか逃げられ、街の中まで来たのだが、住む家もない子ども一人では孤児にしかなれなかったという。

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