黙して語らない騎士の過去。
翌日、ニルギさんは騎士団に来てくれた。
「おはようございます!お茶飲みますか?」
「ありがとう、頂くよ」
ニコニコ笑うちょっと猫っぽいニルギさんは、今日も笑顔だ。
・・・横の団長さんは、まだ顔色悪いけど。
お茶を渡すとお礼を言って、一口飲む。
「・・・で、ルピス殿が来るって?先日、父君が亡くなったばかりだろ?随分急だな」
「え、そうなんですか?!」
キラさん、そんなこと一言も・・って、そうでした。
親はニルギさんだけでしたね。
ニルギさんを見ると、少し眉を下げて笑っていた。
「・・ウルキラにも一応、耳に入れておこうと思って話はしたが・・、もう顔を20年近く見ていないし、関わりもない・・。あいつにとっては、大した事じゃない」
「・・なんというか、ちょっと複雑ですね」
「まぁ・・、そうだな」
ニルギさんにとっても複雑な問題らしい。
カップをソーサーに置いて、お菓子に手を伸ばす。
「ラトル、ウルキラには言ったのか?」
「・・・今日、言うつもりだ」
「・・まぁ、兄は大丈夫だと思うが、ウルキラがどう思うか・・だな」
アイシングクッキーを、モグモグと食べてちょっと宙を見る。
「ルピスさんは、大丈夫って・・何でわかるんですか?」
私がニルギさんを見つめる。ニルギさんは、最後の一口を食べた。
「・・・王都にいる間、ウルキラの親父さんは、全く会うつもりがなかったが、兄のルピス殿は時々様子を見に来てた。まぁ、バレると怒られるから、こちらも気付かないふりをしていたが・・、こっちへ越してからは会ってないから確証はないが、悪い感情は持っていないと思う」
「・・・そんな事が・・・」
キラさんは自分の過去の話をしないから・・。
辛かった事とか話して欲しいけど、こういうのって、やたらと聞き出すのもなんか嫌だしな・・。
ニルギさんは私を見て、ふわりと笑う。
「ナルに会って、随分ウルキラは明るくなった。ありがとうな」
「いえいえ、私もキラさんのおかげで、ここでの生活にすぐ馴染めましたから・・。本当はもうちょっとお返ししたいくらいなんですけど・・」
そう、結局いつもキラさんが色々してくれて、私ばかりが喜んでいる気がする・・。何か・・何かお返ししたいんだけどなぁ。ニルギさんは、ニマニマ笑って私を見る。な、何ですか・・・
「どうせ、ナルがいればいいって言われてるだろ?」
「に、ニルギさん!!」
真っ赤になって、思わず団長さんを見た。・・・・ほら、めっちゃ楽しそうな顔になってますよ・・。じろっと睨んでおいた。もうちょっと顔色悪い方がいいんですけど。
「ルピス殿が来る時は、俺も来るよ。それでいいだろ?」
「ニルギ〜〜〜!!!」
団長さんが、笑顔でニルギさんを見る。
「新作のお菓子の詰め合わせな」
「はいはい・・わかりました」
ニルギさんの速攻で対価を要求するテクニック・・学んでおきたい。横で見ていたライ君がメモしてた。君は有能だから大丈夫だと思う・・。最近、本当にそう思う。
ちなみに緊張に包まれた団長さんがキラさんにルピスさんが来る事を伝えたら、「そうか」で終わったらしい。
・・大変キラさんらしい。
王都の騎士さん達と相談して、滞在場所を用意したり、団長さんとラフさんとは、こっちへ来たらどういった様子を見せるかを話し・・、その準備をしたり、片付けしたり、書類整理したり・・と慌ただしく用意する日々を過ごし、あっという間に当日になった。
物々しい黒塗りの馬車が、騎士団の詰所前に止まる。
ゴクリと唾を飲み込むシーヤ騎士団、一同・・。
扉が開いて、緊張が走ったが・・、団長さんの横に立っているキラさんは、いつも通り無表情であった・・・。
ちなみに団長さんは緊張と疲労で顔が土気色だった。哀れ。




