黙して語らない騎士の兄弟。
キラさんに愛でられたその翌日。
嬉しそうな顔をするキラさんと一緒に出勤した。
・・・嬉しそうで何よりですよ、私はもう糖分過多で死にそうでした。
騎士団の玄関へ入ると、騎士さん達がキラさんを心配していたのか、姿を見るなり喜んでいた。うん、キラさん喜んでもらって良かったね。顔は無表情だけど、気持ち嬉しそうだ・・。
「キラさん、お昼一緒に食べましょうね」
「ああ」
「訓練場がいいですか?それとも執務室・・」
「訓練場」
・・・・はい、大変明快なお答えありがとうございます。
まぁ、その方がちゃんと時間通りに訓練が終わって、騎士さん達も助かるようだし、その方がいいだろう・・。少し離れ難そうなキラさんに手を振って、執務室へ急ぐ。
「おはようございまーす。おやすみ有難うございました〜」
執務室へ入った途端、団長さんの顔が真っ黒である。
真っ青通り越しちゃった・・・?
そばにいたライ君と、ラフさんを見ると、軽く手をあげてくれた。
「・・・団長さん、どうしたんですか?」
ラフさんがちょっとため息をつきながら、団長さんをちらっと見る。
「・・・王都から、魔術師がくることになった」
「へぇ・・、でも魔術師さんが来るって珍しいですね?」
騎士さん達がこちらに来ているのに、更に来るの?と、不思議に思っているとラフさんは少し気まずそうにする。
「・・・先代の魔術師が亡くなって、代替わりしたんだが・・シーヤでの様子も一度見てみたいと連絡がきて、断るにも断れなくてな・・」
「団長さん結婚式も近いのに、そりゃ気が重いですね」
そっか〜、ていうと・・また警備とか滞在場所を用意しないとだなぁ・・、フランさんと相談しないとな・・そんな事を思っていたが、ラフさんが私を見る。・・まだ何かあるの?
「・・・団長さん、もしかして本気でルーナさんに振られそうなんですか・・?」
「・・いや、それは大丈夫、さっき確認した」
「ラフさん、本当に優しいですよね・・」
そう、めっちゃメンチをぶつけまくった仲なんだが、その実優しい人なんだよね・・。リルケさんと幸せにな!
ラフさんは、ちょっと照れたのかひとつ咳払いする。
「・・・魔術師の名は、ルピス・ディートリア。王都一の魔術師だ・・」
「へぇ〜、ルピスさん!可愛い名前ですね」
ルピスさんかぁ〜、女性かな・・ん?ディートリア・・・???
私と同じ名字ですね?
んん・・・??
私はラフさんの顔を見る。
今日もキリッとした顔を、小さく頷いてみせた。
「もしかして・・・・、キラさんのご家族・・の方ですか?」
「ああ、唯一の兄弟、兄だ」
「兄!!!まさかのキラさん、兄弟がいたんだ・・、しかも弟?!あれ、でもニルギさんと親子・・あれ、あれ?!」
私はパニックである。
確かニルギさんがキラさんを拾って育てたって言ってたよね・・よね?!って事は、ほぼ絶縁状態だよね?なんで今、会いに来るんだろ・・?単純に仕事??
ラフさんは、ため息をつく。
「俺も、何度か会った事はあるが、冷静沈着で仕事を黙々とこなす男だ・・。家族という情があるのかは知らない・・。だから、単純に仕事として来るのかもしれないが・・、少し気がかりでな・・」
「な、なるほど・・」
という事は、キラさんの奥さんの私は、とりあえず様子見って事でいいのかな?団長さんをチラリと見ると、真っ黒な顔で小さく頷いた。顔色、大丈夫ですか???
団長さんもため息をついて、私を見る。
「ウルキラにどういった接触を図ってくるかわからないんで、こっちも困ってる。何かあった時は、ナルさんに全振りするのでよろしくね!!」
「すっごい投げてきましたね・・団長さん」
「だって怖い!!!本当に怖い!!ルピスさん、なんで来るの?!僕、もう結婚間近なのに、どうしてこう色々起きるの?!」
・・気持ちはわからないでもないが・・。
あとでルーナさんに励ましてやって・・って言っておこう。
「とりあえず、私はキラさんの平穏を守るために頑張ります!」
「キレないでね!!切実に!!」
「私、いつも穏やかじゃないですか?」
そういうと、団長さんと、ラフさんとライ君まで、首を横に一斉に振った。・・・なぜだ。




