黙して語らない騎士は、再会する。
キラさんが帰ってきた!!
玄関の扉を開けて騎士団の人達をみる。大分お疲れだったのか、皆へたり込んでいる・・お疲れ様です。王都の騎士団の人達は真っ白な灰になっていた・・。うん、初のキラさんとの遠征はみんなこうなるね・・。
騎士団の人達は私を見るなり、慌てて・・
「ウルキラ副団長は医務室です!」
「え!怪我したんですか??」
「いえ、ウルクが最後に怪我しちまって・・、出血が酷いんで急いでウルキラ副団長が担いで行ったんです」
担ぐ・・・、
ウルクさん、結構な巨体だよね・・。
「分かりました!ありがとうございます!!」
そういって、私は医務室へ急ぐ。
ウルクさんの様子も気になるし・・
食堂の横にある医務室へ駆け込むと、医務室にはおじさんのお医者さんとウルクさんのみ。
「あ、ナルさんお疲れ様っす!すみません!ウルキラ副団長にご迷惑かけちまって!」
と、笑顔でにこやかに言ってるけど、足から結構な出血ーーーー!!!!
びっくりして、足を見てしまった・・。
「あ、あ、足は大丈夫なんですか?!」
「ちょっと深く切っただけなんで、大丈夫っす!」
「大丈夫なわけねぇだろ!!このドアホ!!今すぐ縫うぞ!」
お医者さんが、怪我人を拳骨で殴っている・・。そしてウルクさん「えー」とか言ってるけど、そんな感じでいいのか??
「あ、ウルキラ副団長でしたら、馬の脚が調子悪いって、馬房に行ったっす〜」
「あ、ありがとう!お大事にしてね!!」
「あーい!」
気の抜けた返事だが、とりあえず大丈夫そうでホッとした・・。あとでライ君に教えてあげよう。鼻で笑いそうだけど。
馬房の方へ行くと・・、すでにキラさんの姿はなく・・・。
馬の様子を見ていた騎士さんが、
「ウルキラ副団長でしたら、訓練場に使っていた道具を置きに行きました!」
「あ、ありがとう〜!!」
急いで、訓練場へ向かう。
キラさん足早くない?!そういえば、コンパスめちゃくちゃ広くて最初、一緒に歩いたら進むの早くて追いつけなかったっけ・・と思い出した。
訓練場へ着くと・・・
誰もいない・・。
キラさん動きが早いよーー!!!
片付けに来た騎士さんが私に気が付いて、
「ウルキラ副団長でしたら、詰所の方へ向かって行きましたよ」
「ええ!!!それはまずい!!」
団長さんに会う前にキラさんに会わないと・・団長さんの命が危ない!!
急いで詰所まで走って行くと、詰所前で騎士さん達が慌てている。
「どうしたの?!何かあった?」
「ナルさん!!!やべーっす!!ウルキラ副団長が鬼神のごとき形相で、執務室へ向かいました!!」
「えええ!!!一番恐れていた事が!!」
騎士さんが大急ぎで扉を開け、私は執務室へ駆け込み、二階へ急ぐ。
遠征帰りに死人を出すわけには行かない!!
思いっきり二階に向けて、
「キラさーーーーん!!!!」
と、叫ぶ。
まだ殺してはならぬ!!
そんな勢いで階段を駆け上がると、執務室の扉の前にキラさんが立っていた。
身体中、血がついてるけど・・・
血・・・
「血ーーーーーーーーーーー!!!!???」
青ざめて、キラさんのそばへ駆け寄る。
「キラさん、怪我したの?!大丈夫なの?!!一緒に医務室行こう!!!」
キラさんの体を見るが、キラさんは無言だ。
こ、言葉!!!何か言って?
キラさんは手袋を外して、私の頭を撫でる。
「・・・ウルクと、魔物の返り血だ」
「よ、良かった・・」
いや、せめて血は落として欲しいが・・。
キラさんを見上げると、水色の瞳がキラキラしてこちらを嬉しそうに見ている。思わず正直すぎる瞳に笑ってしまった・・。
「キラさん、お帰りなさい」
「・・・ただいま」
「とりあえず、ちょうどお昼ですし・・綺麗にしたらお昼・・食べます?あ、報告とか片付けがあるから難しいかな?」
そう言うと、そっと執務室の扉が開き、団長さんがちょっとだけ青ざめた顔を出して、
「・・・オ昼終ワッテカラデ、イイヨ・・」
と、言ってくれたのでありがたくそうする事にした。
良かったね・・、あと少しで剣の錆になる所でしたよ!
キラさんは、綺麗な方の手を私に差し出すので、私はちょっと照れくさいがその手を握って下りて行く。キラさんは、それはそれは嬉しそうに微笑むので、2日間のお休みは甘やかしてあげよう・・と思ったのだった。
ちなみに騎士さん達は、「あわや大惨事」「団長の首の皮は残り3ミリ」説が飛び交ったとか、そうでないとか・・。




