黙して語らない騎士は、工夫する。
夏休みだよ!黙してシリーズ、始めます。
キラさんが遠征へ行った。
大量の私の写真を持って行こうとするので、流石に恥ずかしいので量を調整しようと話したが、物凄く拒否された。わかっていたけど、キラさんは物凄く拒否した。
大事な事なんで2回言っておいた。
今回は一週間という期間・・。
まぁ、この間は3泊4日だったから・・、ちょっと伸びただけ・・とか思えば?そう思うけど、まぁ・・寂しいですよ。ええ。
今日は執務室で仕事を手伝っているのだが、団長さんは相変わらず暇か隙があればダラけている。魔法が使えれば、この姿を激写してキラさんにでも見せてやるのに・・。そうして怒られるといい・・と思うと、少し胸がすっとする。
・・・ニルギさんにでも頼もうかな・・。
ライ君は、大量の書類をサクサクと整理しつつ、
「そういえば、ウルキラさんが出かけたのは今日でしたっけ?」
「あ、そうなの・・、ライ君のお兄さんのウルクさんも一緒だっけ?」
「はい!とっても静かで最高です!!」
「・・・・そうかぁ・・・」
お兄さんのウルクさん、確かに騒がしそうだけど・・、昨日はお通夜かな?ってくらい表情死んでいて、静かだったけどな・・。家と職場だと違うのかな?
団長さんは、ライ君にどさっと大量の確認書類を渡され、青い顔をしながら私に話す。
「今回は、王都の騎士団の奴らも連れて行くから、ウルキラはキツイかもなぁ〜、帰って来たらナルさんフォローお願いね〜」
「それは本来、上司である団長さんの役目では?」
「僕がそんなんやったら、冷たい目で一瞥されるだけだって!」
「確かに」
「否定しないし!!」
団長さんが泣いたふりをするが、誰一人として構わない。
今は忙しいのだ。
「・・ちえー、冷たいんだからー」
「団長さん、ルーナさんとのデート、このままの進行状況では不可能になりますよ?今晩7時に会うんでしょう?」
「ライ君、なんで知ってるの!?」
団長さんが、すごい勢いで聞く。
「情報を集めるのも僕の仕事ですから」
「執務室のブレーンが優秀すぎる・・」
この二人のやり取りも、どんどん面白いことになってきてるな・・・と思いつつ、私はマイペースに仕事する。
そうか、団長さんはデートか。
いいなぁー、うちのキラさんは泊まりのお仕事だというのに。
今日のお茶菓子はとびっきり甘いお菓子にする事にした。くらえ、最近売れてるマシュマロチョコチップレーズン入りの激甘クッキー。
仕事を終えて、食堂で夕飯を食べてから帰る。
・・うん、一人ってこういう時楽だな・・なんて思いつつ。
一人で夕飯を食べる機会の方が圧倒的に少ないっていうの・・すごいよね・・。そんなことを思いつつ、家まで帰る。途中、私とキラさんのでっかい結婚記念で撮った写真が貼られている洋服屋さんを見る。
大変照れくさいんだけど、今は出かけているキラさんの大きな横顔をみると、ちょっとホッとするのと、寂しいのと・・。
早く帰ってこないかぁ〜なんて思いつつ、家へ帰る。
玄関に鍵とカバンを置くと、ふとメモが置いてあるのに気付く。
「・・メモ?」
開いてみると「花瓶」と書いてある。
花瓶の所へ行くと、ニルギさんに頂いたお祝いのお花がある。その下にもう一枚メモがあった。
開いてみると「小引き出し二段目」と書いてあるので、いつも使う小引き出しの二段目を開けると、キラさんにもらったお花のイヤリングの小箱が入っている・・。その横にもう一枚メモがある。
「冷蔵庫」・・。
何を入れたんだキラさん・・、そう思いつつ冷蔵庫の扉を開けると、この間美味しかったと話していたお菓子屋さんのチョコレートが入っている。
蓋を開けると、メモが入っていた。
『一日一つ。すぐ戻る』
「・・・・・キラさん・・・」
なんなんだ・・いつの間にそんな準備したんだ・・。ちょっと胸が痛いんですけど。早く会いたいんですけど!そう思っていると、箱の上蓋に紙が挟まっている。
手に取って見てみると、キラさん単体の写真だ!
欲しいって言ったのに・・・、なかなか撮ってくれなかったのに・・!!
ちょっと照れた顔をしているキラさん・・。
なんだか寂しくないように、こんな風に「そばにいる」とばかりに、思い出の品に誘導するように、工夫してくれたキラさんが嬉しくて、ニマニマと笑って写真を見てしまった。帰ってきたら・・、うん、フォローという名で甘えてみようかな・・そう思った夜だった。




