黙して語らない騎士の口を動かすお仕事です7
一休みしてからまた馬に乗って、道を進む。
思うんだけど・・、道らしき道があれば、ない時もあるのに、よく迷わずに進むよね・・。キラさんは体にコンパスでも入ってるのかな・・・。
お昼頃になると、また町が見えてきた。
今日はここに泊まるのかな・・・?
キラさんを見上げると、
「ここへは昼食を取るだけだ。食べたら、もう一つ先の町へ行き、そこで休む」
「はい」
うーん・・、言わんとする事を理解して、すぐ答えるって事は意思疎通は出来ているのか・・・?そうこうして、前回のように門の所で挨拶をすると、中へ入れてもらう。町の様子は、前の町と似ていた。
「ここも、可愛い町ですね」
「・・・そうか」
「お花とか、植物とか飾ってあるのって、いいなって・・」
「花が好きなのか?」
「まぁ、花を見るのは好きです。育てるのは苦手で・・、だからああして飾ったり育てるのってすごいなって、思います」
「そうか」
家に飾ってある花を見ていると、キラさんが私の肩をトントンと叩く。
「・・?なんですか?」
キラさんを振り返ると、右側を指差すのでそちらを見ると、花屋だろうか二階建ての家全体に蔦が這っていて、店の前には色取りどりの花が飾られていた。
「うわぁ・・・か、可愛い・・!!!」
馬の歩く速度をゆっくり落として、店をじっくり見せてくれた。
その心遣いが嬉しかった。
「キラさん、ありがとうございます!可愛いお店でしたね!」
「・・・・そうか」
うん、無表情だけどだいぶわかってきた。
これは微笑んでいるとみた!私も笑っておいた。
そうして、また馬の看板があるお店の前に行き、馬を預けてからお昼を取る。またも大量の食事を平らげるキラさんのものすごい食いっぷりに恐れおののく。
トイレを済ませて、外へ出ると、キラさんが空を見ている。
「キラさん、どうしました?」
「・・雨が降りそうだ。すぐ行くぞ」
「は、はい?」
天気予報もできるの?すごいな。
キラさんのそばへ駆け寄ると、もう慣れてきた・・さっと持ち上げられて、馬に乗せられる。
「少し急ぐ」
「あ、はい」
町を出ると、結構加減して走ってた事を思い知った。
速い!速いとかの問題じゃないくらい速い!
景色を見る・・というより、落ちない方が優先課題になった。
多分・・夕方に着く予定だったであろう次の町へは3時頃に着いた。
宿屋へ入り、昨日と同じような作りの部屋へ入ると、サァ・・と、雨の降る音がした。
「キラさん!すごいですね!本当に雨が降ってきた!!」
窓の外で雨が降る様子を見て、キラさんに声をかけると、小さく笑ったのか・・口の端が動く。
「雨の匂いがした」
「雨の匂い・・」
思わず反芻しちゃったよ。
そんな匂いってするの?
「ナルは、それしか服を持っていない」
「あ、そういう?!なんだか忙しくしちゃって、すみません」
「楽しいから大丈夫だ」
「楽しいですか?」
「ああ」
楽しい・・って思っているのか?っていうくらい無表情だけど・・。
多分、この人嘘とかつかなさそうだし・・。
「どんな時、楽しいんですか?」
「ナルが、景色を見て感動してる所だな」
「そこなんですね・・。でも確かに道中の景色はどこも綺麗でしたね〜」
「俺にとってはいつも見ている景色だが、感動するんだな・・と」
「私は初めて見る景色ですしね〜」
「・・・・そうだな」
「なんかお世話になりっぱなしなんで、申し訳なかったんですけど、そう言ってもらえると、ちょっと気持ちが楽になります。あ、私も結構楽しいです!」
私がそういうと、初めてキラさんの表情筋が動いて、にっこり微笑んだ。
おお、笑った!キラさんが笑った!!




