黙して語らない騎士は奔走する。1
ライ君の仕事ぶりはとても素晴らしく、みんな舌を巻くほどであった・・・。
私・・必要なくない?ってくらい。
ラフさんでさえ驚いて・・
「学校の勉強と独学だけで、これだけ出来るとは・・王都のお城勤めに・・」
と言うくらいだから、それくらいすごいんだな。ちなみにそれを聞いた団長さんは、「それだけは・・!!!」と半泣きで訴えていた。すごい必死だ。
ライ君の弟も優秀だそうで、もう少し大きくなったらぜひ!と団長さんは強く勧誘してた。試用期間は短縮され、あっという間に正式に雇用される事になった。優秀が過ぎる。お兄さんのウルクさんにその話をしたら、
「そーなんすよ!下の弟達はマジスゲーんすよ!俺、そういうのは全然ダメだったんで、騎士で食ってこうと思ったんす」
お兄ちゃんも偉いね・・。
私は飴ちゃんをあげておいた。
キラさんが、こっちをじっと見ていたので、ついでに飴を渡しておいた・・。キラさんもいい子、いい子。
そんなわけで、働き手が一人増えただけで、ぐっと楽になり・・、私も仕事を就業時間内に終わらせる事が出来るようになった。キラさんを待たせる事もなくなって、少し安心した。
執務室で、キラさんも手伝ってくれるんだけど・・、団長さんをじっと見る目が怖かったんです・・。執務室一同としては・・。
詰所の階段を下りて訓練場まで歩いていく。
まだ練習が終わってないのか、中庭から声がする。
そっと覗いてみると、掛け声と共に、剣の練習をしていた。あれ〜・・、終わりの鐘鳴ったよね?
柵がある方まで歩いていくと、ようやく号令が掛かって解散をしていた。
今日は練習長めだったのかな。
騎士さん達は私を見ると、「ああ・・なるほど・・」「助かった・・」「ウルクの弟にもお礼しとこーぜ」と口々に言っていた。何か感謝する事が起こったらしい。
キラさんは、汗をタオルで拭きつつこちらへやって来る。
「ナル」
「へへ〜〜、今日は私のが仕事終わるの早かったですね!」
「ああ」
「片付けとか、手伝える事あリます?」
そう言うと、キラさんは手を繋ぐ。
お決まりの無言である。
「キラさん・・・?」
「一緒に訓練場の入り口まで」
「はいはい」
私のお仕事は、ひとまず手を繋ぐ事らしい。ヘラっと笑うと、キラさんは嬉しそうに笑う。早く仕事が終わるとキラさんの笑顔が増えて大変よろしい。
あとは団長さんの心の癒しだよな・・。
うーん・・どうしたもんかなぁと、悩んでいるとキラさんが不思議そうに私を見る。
「あ、ああ・・団長さんにルーナさんをどうくっ付けようかなって・・」
「手を繋ぐ」
「それはキラさんでは・・」
「そうか」
「キラさんなら私は嬉しいけど、ルーナさんは何が嬉しいかなって思って・・」
考え込んでいて、つい心の中で密かに思っていた事がぽろっと口から出たな・・と、ハタと気付き、そっとキラさんの顔を見ると、嬉しそうな水色の瞳と目が合う。
「嬉しい・・?」
「・・・・ええと、それはですね・・」
「俺も嬉しい」
「え、あ、はい・・」
「抱きしめてくれるのも、キスしてくれ・・」
「わ、わー!!!わーーー!!!!そう言うのは人がいる所では言いませんーーー!!!!!」
慌てて、私はキラさんの口を押さえて周囲を見る。
よかった・・誰もいない。
はぁ・・っと、息を吐くと、チュッと手の平にキスをされる。
「き、き、キラさん!!!!」
訓練場に私の叫びが聞こえたとかなんとか・・。
とりあえず、帰りの機嫌が大変良かったので良い事とする。
騎士団では、私だけでなくライ君も拝まれたり、お菓子をやたらと与えられる事が流行り、ライ君を大いに戸惑わせていた・・・。ごめんね・・・。でも、私もなんでそういう事するか分からないんだよね。
今度聞いてみようかなって、団長さんに言ったら、静かに首を横に振られた。・・・謎のままにしとくか。




