黙して語らない騎士は出張です。4
昨日までずっと降っていたとは思えない晴天!
すごいな〜〜、キラさん・・帰ってくる時、晴れるとか・・。
雨から濡れないように、めっちゃ馬を走らせてくれたなぁ・・そういや・・。あれ、怖かった・・。あとお尻が本当に大変な事になったなぁ・・。
カーテンを開けて、明るい日差しに大変気分が良い!
「金魚ちゃん、おはよ〜」
餌をあげつつ、声が嬉しそうだな・・私。
わかってる・・、わかってるとも・・。ちょっと嬉しいんだよ。
ささっと朝ご飯を食べ、掃除を軽くしてから仕事の準備をする。傘を用意しないって、楽だな〜・・。
家を出ると、町を歩く人達も心なしか嬉しそうだ。
ここの所、ずっと雨だったもんね。
騎士団に着いて、食堂にお昼の宅配をルーナさんにあらかじめ頼んでおいた。後ろで食堂のお姉さんが、ニッコニコしてた。心配してんのよ〜!団長さんも!!だ、そうな。皆、優しいな。
執務室へ行くと、すでに団長さんが仕事してる。
「え!!珍しい〜〜〜!!!」
思わず言っちゃったよ・・。だって、なかなかやらないのに・・。
団長さん、ルーナさんからお昼届けてもらったの、そんなに嬉しかったのかな?・・・が、顔色の悪い団長さん・・ゆっくり顔をあげて、ポツリと呟く。
「ウルキラが予定通り帰って来ます」
「あ、そうなんですね!」
「魔物の討伐も、大成功です」
「わぁ〜〜良かった!」
「けが人も出ませんでした」
「万々歳じゃないですか?」
「・・・・王都の騎士団から、いちゃもんが来ました」
「え、ええ〜〜〜〜〜?」
ちゃんと仕事してるのに、何でそう文句をつけてくるの?そんなに何が気に入らないんだろ・・。
「一筆書いて、黙らせましょうか?」
私が紙の束を掴むと、団長さんが慌てて立ち上がる。
「やめてーー!!!開戦の狼煙を上げないでぇええええ!!!!」
「あっちがその気なら、こっちだって黙っちゃいません!!団長さんの幸せのために、騎士団一丸となって戦います!」
「いやぁああ、リアル内戦になるぅううう!!!!」
ワーワーと騒いでるのを、部屋へ入って来たニルギさんが生温かく私達を見ながらソファーに座って、お菓子を食べ始めた。大人の余裕・・・・???
「・・・ミラファ殿に言っておけばいいのでは?」
手紙を書こうとしている私と、阻止しようとする団長さんの動きが止まる。
「ラフさん、どこですか?」
「詰所の前で、フランと何か話してたぞ」
「行ってきます!!」
私は詰所の玄関まで走って行く。後ろで「穏便でお願いーーー!」という団長さんの声が聞こえたけど、聞いてやらん。
階段は、あと3段くらいだ。よっ!と掛け声でパッと下り立つ。
「ナル、危ない」
ん?
いつもの声に、顔をあげると銀の甲冑を着て、青いマントをつけたキラさんが立っていた。
「キラさん!!!」
私は、キラさんの方へ駆け寄る・・よりも早く、キラさんに抱きしめられた。
う・・、甲冑が痛い・・。
「キラさん、ごめん・・甲冑痛い・・」
「・・・そうか」
「返事してるけど、腕が全く緩んでない」
「・・・そうか」
「あ、手紙・・嬉しかったです」
そういうと、やっと腕の力が緩む。た、助かった・・。
水色の瞳が、キラキラして私を見つめている。
「おかえりなさい」
「・・・ただいま」
キラさんが、嬉しそうに笑う。無表情だけど。
「あ、そういえば・・帰り早かったですね?さっき団長さんに帰ってくるって聞いたばかりなのに・・」
「急いで帰ってきた」
うん、その一言で・・新人の騎士さん達の表情が目に見えるようだった・・。今度、何か差し入れを持っていってあげよう・・。
「あ、そうだ入り口でラフさん見かけませんでした?」
「いや、俺たちだけだが」
あ、ニルギさん・・・。
そっと教えてくれたのかな・・。あとでお菓子持って行こう。
キラさんは周囲を、キョロキョロ見回して、一人うなずく。
「キラさん?」
何をしてるんだろう?と、思ったら、水色の瞳が目をキラキラさせて、雨のようなキスをしてきた。
こういう雨なら・・、確かにいいかも。
ちょっと思いながら、そっと受け取った。




