黙して語らない騎士は出張です。3
翌日は、雨だった・・。
なんという私の気分を下げてくれる天気であろう・・。
こういう時こそ、私の気分を上げてくれてもいいんじゃないか??そう、思いつつ・・、赤い金魚に餌を上げた。パクパクと口を開けて食べている姿が、なんか・・可愛い。
ものすごい可愛い・・じゃなくて、じわじわくる可愛さだ。
「金魚ちゃん可愛い〜・・癒される・・」
ジィッと見ていると、食べ終えたのか、ふわふわとまた泳ぎだした。可愛い。
朝ご飯を私も食べたら、出勤だ。
団長さんに、たまには癒しをあげよう・・そう思って、美味しいチーズを包んで籠バックに入れた。
階段を下りて、傘をさす。
シトシト降っている雨の中を歩くと、ちょっと一人で外国に住んでいる気分になる。いや、異世界だけど。あと結婚してるけど。
「明日は晴れるといいな・・」
ボソッと呟く。
もう少しでキラさんが帰ってくる。
雨の中を馬で戻ってくるのは、きっと大変だろうし・・・、晴れるといいなぁ。そういえば、キラさんといる時は、大抵晴れてるな・・。外でお弁当を食べる時に雨に振られた事、あんまりなかったかも・・。
そんなことを考えつつ、騎士団の執務室へと階段を登っていく。
あー・・、掃除係だったのに、最近は書類整理ばっかりだ・・。掃除をして綺麗な部屋を見たい。あの充足感、なかなかいいんだよね・・。
「ナルさ〜〜〜ん」
めっちゃのんびりした声が聞こえる。
振り返ったら、フランさんだった。やっぱり。
「これ、キラさんからお手紙です」
「え?!お手紙???一昨日行って、明日か明後日には帰ってくるんじゃ・・」
「それでも、何か書きたかったんじゃないですか?」
「なるほど・・・?」
ニコニコと優しい笑みで、白い封筒を渡してくれたフランさん・・・。よかった・・渡してくれたのフランさんで。これが団長さんだったら、大変面倒臭い事になっていたな。
とはいえ、やっぱりお手紙をもらうなんて初めてなんで、とても嬉しい・・。どうしよう、今読んじゃおうかな?あとのお楽しみにしておこうかな・・。
「ナルさーーん!!!書類の再提出来たあぁああ」
階段の上から顔を出した団長さんの声で、マッハで手紙を籠バッグに突っ込んだ。・・うん、後で読もう。
私は、はいはい・・と、階段を登ると、返事は一回!って団長さんに言われたので、三回言っておいた。
今日はなかなかに書類の量が多くて、お昼に終わりそうにない。
私は、食堂から宅配を頼んだ。
もちろん、ルーナさんにだ。
執務室にルーナさんがお弁当を届けてくれて、団長さんはそれまでだらけてたのに、急に水を与えられた野菜のように生き返った。やはりラブは必要なようだ・・。
ルーナさんにお礼を言って、次回も頼んでおいた。団長さん聞いた〜?そんな訳で仕事してよ〜?と、いう目で見つめると、そっと書類で顔を隠した。面白い。
午後になっても、雨はシトシト降っていて、思わずため息が出そうになる。はぁー・・・。あ、ため息出ちゃった・・。
「お茶淹れてきますね」
「ありがと〜・・・ナルさん、僕、お酒も欲しい」
「ラフさん、後で来ますよ?」
「・・・・・クッキー用意して差し上げて」
団長さんに、先にチーズを小皿にのせてデスクに置くと、「ナルさん、まじ女神」と、騎士さん達みたいに拝まれた。なんかやたらとされるけど、騎士団で流行ってるのか?
お茶を淹れに行くついでに手紙をポケットに入れて、給湯室で封筒を開く。メールとかDMしか届かない世代としては、ちょっと嬉しいお手紙にワクワクして、2つ折り畳まれた手紙を開く。
『 早く会いたい。 キラ 』
いや・・・・・、手紙まで言葉ぁあああああ!!!!
どんだけシンプル!!?キングオブシンプル!!??
もっと・・こう、色々寡黙だけど、手紙では饒舌・・とかいう展開でも良かったのに!!
なんかもう一周回って、面白い・・・。
クスクスと笑って、手紙の文字を見る。綺麗な文字だ。キラさんみたいだな。
たった四日なのに、私も会いたいです。
窓の外は雨だったけど、気分はちょっと晴れやかだった。




