黙して語らない騎士の口を動かすお仕事です6
宿屋の人から朝早い出発だったので、朝食を包んでもらった。
私のリュックがスカスカだったので、朝食を入れて、体の前にリュックを抱える。
お店の人にお礼を言って、外へ出るとキラさんが馬房から馬を連れてくる。
・・と、キラさんは、無言でささっと馬へ私を乗せる。
頼むー、事前の一言!!びっくりするから!!
ふと私の座っている所に昨日と違う感触がする。
ちらっとお尻の方を見ると、クッションが敷いてある!
キラさんは、またも無言で馬に乗り、私の後ろへ座る。
「あの・・キラさん、クッション・・ありがとうございます!」
「・・・まだ、長く乗るからな。今日は、休憩も入れる」
「あ、それは助かる・・。よろしくお願いします」
「・・・ああ」
そうして、また私のお腹の所を腕で押さえてくれた。
この腕のシートベルト・・マジで助かるけど、腕とか痛くならないのかな・・。
「腕・・痛くないですか?」
「柔ではない」
「まぁ、それは分かりますけど・・一日中って大変かなって」
「大丈夫だ、心配ない」
「・・はぁ」
堅い意志を感じる返答だったので、もう全てを委ねることにした。
そうして町から出ると、徐々にスピードを上げて、また林や森を駆けていく。
昨日よりも、少しスピードには慣れたので、体は辛いが景色を楽しむ。
流れていく木々は、地球の木々に似ている。
時々、鮮やかな緑や赤の色をした鳥が頭上を飛んで行き、わぁ・・と声が出てしまう。
右側に見える地平線から、ゆっくり太陽が上がってくると、平原いっぱいに太陽の光があたり、露が下りていたのか、芝がキラキラと光っている。
「・・・綺麗・・・」
私が住んでいた町では、絶対に見られない光景だ・・。
どこまでも広い平原を走っていると、本当に異世界へ来てしまったんだ・・と、実感してしまう。
「そろそろ休むか」
川沿いを少し速度を落として辺りを見ると、開けた場所があったので、そこで休む事になった。
「馬に水を飲ませてくる。そこで座って、休んでてくれ」
「あ、はい」
そう言って、ヒョイっと私の体を持ち上げて、地面におくと川縁へ行ってしまったので、私は周囲を見渡して、座りやすそうな石に腰掛ける。・・・お尻は、クッションのおかげでいくらか無事だった。
光を浴びて、川の水が流れる度にキラキラ光っている。
透明度が高いので魚らしきものが泳いでいるのを見つけ、思わず覗き込んでしまう。ちょっと指を水に入れてみると、冷たくて気持ちがいい。
風がそよいで、あまりの気持ち良さに目を瞑る。
「危ないぞ」
キラさんの声が聞こえて、目を開けると、私のお腹をひょいっと持ち上げ、そのまま座っていた場所へ置かれる。
「まだ眠いのか?」
「・・・・・いえ、流石に起きてます。風が気持ち良くて、目を瞑っただけです」
流石にそこまで寝ぼすけではないぞ?
そう思ってふくれた顔をしてみると、キラさんはフッと小さく笑った。
笑った・・?!!
「キラさん・・笑うんですね?」
「笑っていたか?」
「自覚ないんですか?」
「笑うのに自覚がいるのか?」
「ええ〜〜〜〜〜?!」
そうくる?!至極真面目に答えるキラさんに笑ってしまった。
キラさんは、無言でこっちをじっと見てるけど・・ごめん、つい・・。
「キラさん、実は面白いですね」
「そんな風に言うのは、ナルくらいだと思う」
「そうですかね?あ、朝食食べましょう。はい、これ・・」
「・・・・ああ」
リュックから、宿でもらって来た朝食を食べる。
分厚いハムとチーズが入ったサンドイッチが2つ入っていた。
美味しい・・美味しいけど、朝からパンチが効いてるぜ・・・。
なんとか1つ食べきった私は偉いと思う。もう1つはキラさんに渡したが、魔法のようにあっという間に食べてしまった。本当・・それどこに入るの???