黙して語らない騎士の花嫁になりました。
ウルキラ・ディートリアこと、キラさんのお嫁さんになりました。
黙して語らず、無表情な騎士さん。
綺麗なサラサラの銀髪に水色の瞳、鍛え抜かれた体。
格好いい、大変、格好いいけど、言葉が圧倒的に足りない。あと、外堀の埋め方がえぐい。逃げ場がない。
告白されて、プロポーズされて、住む場所を決められていて・・・
そうして、今、スヤスヤと気持ち良さそうに寝ているキラさんの腕の中にいるんだが・・、流れ・・早くない?いいのか、この流れにのっちゃって・・私はいささか不安になる。
昨日は引っ越してきて、掃除を終えたら、そのままベッドに連れて行かれ・・ええ、甘かった。本当に甘かった・・・。あんなに優しく触れてくるものだから、どうすればいいのか・・と、そわそわと恥ずかしさとで一杯だった。キラさんは、なんならずーっと甘い顔でこちらを見つめていた。
この人に溶かされるんじゃないかと、本気で思った・・。
・・え、これに慣れる日が来るの?
無理じゃない・・???
そっとキラさんの寝顔を見る。
うん、綺麗な顔だなぁ・・。
私、この人のお嫁さんなの?夢オチって言われても納得するけど。
ギュッとキラさんが私を抱きしめてくる。寝ていても夢オチは許さんとばかりだな・・なんて思ってしまう。
小さく笑ってしまう。
言葉が少ないけど、私を気遣ってくれる・・不器用な優しさを持つキラさん。
優しい水色の瞳はいつも「大好き」だと伝えてくるので、そわそわしっぱなしになるけど。見つめ返すと、嬉しそうに笑う顔が好きだ。
ああ、私も大概この人に参ってると思う。
すごく好きだって思ってる。
言葉は全然足りないのに、溢れる気持ちは人一倍あるこの人に・・。
なんだか悔しくて、ちょっと綺麗に整った鼻を指でつまんでみた。
えい、くらえ!
ちょっと目をギュッと瞑ってから、キラさんがゆっくり目を開けると、ふわっと嬉しそうに笑う。
あーーーー、可愛いーーー!!!くそ!!私が反撃食らってる。
わかってますよ?顔が赤いんでしょ?
すっごく優しい手つきで頬を撫でないで下さい。心臓に悪いんで。
「・・・おはようございます。そろそろ出勤ですよ?」
「休む」
「多分無理だと思いますけど」
「ナルといたい」
「・・・この会話、前にもしましたね・・」
私が悪者に取っ捕まって、助けられて、ぶっ倒れた翌日・・、あ、そのまた翌日か。私は小さく笑いながら思い出す。
キラさんは、自分に意識を向けて欲しいとばかりに、キスしてくる。み、見る!見るから!!!
「団長さんに時間を融通してもらったんだし、仕事行きましょう?」
「・・・・・・」
顔をつついてみる。おお、フニフニだ。
「一緒に通勤も、ちょっと楽しみだったんですけど」
「・・・・・・・・・・・起きる」
・・・なるほど、こう持っていくといいのか・・と、一つ学んだ。
私は体を起こして、伸びをする。
窓の外を見ると、今日もいい天気だ。カーテンの隙間から、海がキラキラ光っているのが見える。
渋々体を起こした、上半身裸のキラさんを見ると、一気に真っ赤になって、勢いよく私は洗面所へ逃げる。あかん心臓に悪すぎて、無理だ。
顔を洗って、朝食の支度をしようと思っていたら、洗面所の入り口兼出口で、キラさんがじっとこちらを見て立っている。
「キラさん?どうかしました?」
と、すっと両手を広げる。
・・言葉が足りない。本当に足りない。
「えーと、ハグ的な?」
そう聞くと、静かにうなずく。言おうか・・その一言。
まぁいっか・・、そう思ってキラさんにハグする。あったかーい。筋肉って温かいんだな・・。
顔をすり寄せて、キラさんが嬉しそうに笑う。
「ナル」
「はい」
「好きだ」
はい、よく出来ました。
私は、褒めて育てる主義なので、ご褒美にキスを贈った。
満面の笑みが、水色の瞳が、私を見つめる。
きっと、今日も明日も。
約束、守って頂きましょ!




