黙して語らない騎士・・。3
「キラさん、あの、ここ・・道端でして・・」
人!人の目が気になるんですよ!!!
私は顔が赤くなる。往来の前でイチャイチャは、その、無理なんですけどー!!!!
「心配した・・」
「う・・、それについては大変申し訳なく思ってます」
「次は、すぐ俺を呼べ」
キラさんが、じっと私を見る。絶対ダメ!という強い思いが溢れてますね。
「はい、以後気をつけます・・、気をつけますから・・・あの、腕をですね」
ちょっと道ゆく人に見られて、私の心臓は大変、塩梅が悪いんですよ・・。
息も絶え絶えに訴えると、キラさんはそっと体を離してくれた。が、今度は手を繋いで黙々と歩き出す。あ、あれ・・?
無言のキラさんに、思わずドキドキする・・。急にリルケさんを助けようと思って、後先考えず飛び出してしまったからまだ怒ってるのかな?とか・・。うん、それが原因かも・・と、思いつつ、感情が見えないキラさんに不安になる。
どこへ行くんだろう?と思っていると、お菓子屋さんのすぐ裏手にある二階建ての階段を登っていく。
と、リルケさんから貰った袋から鍵を出す。
「あれ・・?鍵??」
「ああ」
そういって、扉を開けるとガランとした広い部屋に入った。
白い壁に、木枠の窓がいくつかあって、右側の大きな出窓を見ると、海が見える!
「わ・・、海が見える!」
思わず駆け寄って、窓から海を見ると、キラさんが出窓に腰掛けて、窓を少し開けてくれた。
「・・・綺麗だな」
「はい!・・でも、ここ、どこですか?」
「借りた」
・・・うん?借りた??私は、キラさんを不思議そうに見た。
「・・ナルと住みたいと思って・・」
キラさんは、ちょっと目を伏せて私に言う。え?いつの間に??
っていうか、私は何も言った覚えが・・。あ、いや、言った・・・。言いましたね。あれ、でもそれにしたって、早くない?
「・・・えっと・・?」
「・・大分前から、少し考えていた」
ああ、それなら納得できる・・ような?
「あ、そうなんですね・・。なんか家探しとかすぐできるイメージじゃなかったんで、早いよね?って、ちょっと混乱してました・・。って、大分前って・・いつ頃ですか?」
「遠征に行く前」
「いや、結構前ですね?!」
そういえば、遠征前だったな・・リルケさんに会ったの・・。あれじゃあ、賃貸業とかしてるのか・・・?今度会ったら、リルケさんに聞いてみよう。そう思って黙り込んでいると、キラさんがじっとこちらを見ているのに気付く。
「・・・・嫌、だったろうか・・」
キラさんの水色の瞳が、不安そうにゆらゆらと揺れている。
あ、キラさんでもそんな風に思うんだ・・って、思ったら、キラさんの握りしめている手にそっと触れる。
「・・そりゃビックリしましたけど・・。嫌ではないです」
うう、顔がじわじわ赤くなっていくのがわかる。目が合わせられない。無理です。
「約束・・しましたし?」
ああー!!恥ずかしい!!!手汗やばいよ・・。キラさんがいつの間にか開いた手で私の手を繋ぐけど・・若干しっとりしてる。あ、キラさんも、しっとりしてる?緊張してる??
「ナル」
静かに呼ばれて、恥ずかしさで一杯なんだけど、ゆっくりキラさんを見ると、あ、表情筋めっちゃ動いてる。綺麗な顔がすごく嬉しそうにこっちを見ている。
そう思ったら、この不器用な人、私・・すごく好きだな・・、一緒にずっといられたらいいな・・と思った。
「キラさん、好き」
思わず口から気持ちが溢れてしまって、そう告げると、嬉しそうな顔から、ものすごく甘い顔になって、空いていた手で私の頬を優しく撫でる。あ、胸が痛い・・。
優しさに切なくなるって、あるんだな・・
目を瞑ると、キラさんが約束のようにキスをする。
「ナル」
名前を呼ばれて、目をそっと開けると頬に、瞼に、また唇にキスする。大好きだって、言葉にする代わりに伝えてくるから、ぎゅうぎゅうと胸は痛くなるし、恥ずかしさがまたやってきて、キラさんの胸に顔を埋めると、静かに抱きしめてくれた。
・・・今は、二人きりだしいいか、と思って、私はキラさんの背中に腕を回した。




